長し夜に、ひらく窓<天神一の日常推理 呪われた女>

作者 ユト

97

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Good!

あっさりと「普通」と書いてしまいましたが、この言葉一つをとっても慎重に扱われております。

そして、その慎重さは登場人物の背景それぞれにも。
どこにもモブがいない、少しの仕草にも人間味が溢れており、まだ学生ということで、どうしようもく溢れてくる未熟さもまた愛すべきもの。

大学生活への憧れも。大学生活への懐旧も。
両方、満たしてくれるリアルがここにあります。

★★★ Excellent!!!

風変わりな探偵役天神と平凡な早川、二人の大学生コンビが活躍する、ミステリ作品。
といってもそこにあるのは殺人事件ではなくて、日常の謎。
少しオカルティックな色を含むそれらの謎を、二人が解き明かしていきます。

際立つのはその丁寧さ、丹念さ。
読み始めると作り込まれた物語のなかに、すっかり惹き込まれてしまいます。

探偵の例に漏れず変わり者の天神と、平凡の象徴のような早川のやりとりも楽しく、気づけばページをめくる手がとまらなくなっているような。
おすすめの作品です。

★★★ Excellent!!!

本作における最大の魅力は、なんといっても探偵役である天神くんの存在感です。長身かつ精悍な男子大学生でありながら、きっちりとしたスリーピースに、白レースの日傘を優雅に使いこなす天神くん。そんな彼の告解室(レトロな喫茶店の一角)に、今日も迷える仔羊がたどりつくところから物語は始まります。

天神くんのもとに集まる様々な依頼に対し、彼が求める報酬もまた、様々です。そして依頼人たちは皆ちょっとだけ救われ、幸せになって帰っていくのです。

美しくもすっと読める文体で綴られるミステリーパートは、日常の謎ながら、しっかりとした知識と調査に裏付けられた本格的なもの。隙間時間にも手に取りやすい連作短編の形をとりつつ、やがて一人の女性にかけられた呪いの正体へと、全てがひとつに収束していきます。

結末まで読み終えた頃には、なんだか自分もちょっぴり前向きになれるような――そんな穏やかな、かつ爽やかな読後感を、貴方も味わってみませんか?

★★★ Excellent!!!

喫茶店レトロ・アヴェの神とも称される学生探偵天神一が平凡理系学生早川翔太と一緒に、学生ならではの才覚を生かし、舞い込んでくる日常の謎を解き明かしていく日常ミステリーの意欲作。知的好奇心をそそられる学生らしい推理展開が魅力的で奥深い情緒が伝わる作品です。

★★★ Excellent!!!

日常ミステリー。一話ごとに大きな起伏があるわけではないが、確実に「何か」が動いている。
そして読んでいて純粋に「面白い」と思える。情緒溢れる筆致に、緩やかな流れ、ハードボイルド小説のような雰囲気といったものが心地よく感じられ、ずっと読んでいたい気持ちにさせられます。
台詞回しもごく自然で、こうした物語を作る観点を持ちたいものだと思えました。

★★★ Excellent!!!

推理小説。ミステリー小説。
バディもの。
日常系ミステリー。
人が死なないミステリー。
はたまたライトミステリー。
この辺りがお好きな方に、この作品をお勧めします。

全編を通して、物語の紡ぎ方がとても完成度が高い作品でした!
オカルティックな分野を取り扱いながらも『意味不明で不可解な異次元のナニカ』に説明を放り投げることは一切なく。
レトロ・アヴェの神こと天神探偵は丁寧に、着実に人のこころを紐解いていきます。
各章で一見関係のなさそうな雰囲気で散りばめられた各要素がパズルが如くに組み上がっていく様は、読んでいて実に爽快なものでした。

オカルティック、ミステリー、言うと少し重いのかしら?
──と、そんな不安はご無用です。
重すぎず、軽すぎず、心地の良い読み心地でした。
リズム感のある軽快な会話、濃ゆい主人公たちに負けぬ濃ゆい性格の各章のゲストキャラクターたち、彩度鮮明に描写される日常の風景が瞼の裏に浮かび、彼らと共に『呪い』の正体を追う日々は、とても楽しかったです。

『呪い』を扱いながらも、人を、心を、突き放すことはなく、どこかあたたかい読後感のある作品でした。
素敵な作品をありがとうございました!
また彼らに会う日を楽しみにしております🦑

★★★ Excellent!!!

変わり者の大学生と平凡な大学生コンビが日常に潜む謎を解いていくミステリー。章ごとに違ったテーマを解き明かしつつ、物語全体でひとつの大きな謎に迫っていくという構成が面白いです。

特筆すべきはやはり探偵である天神のキャラクターでしょう。独特の喋り方、服装に小物、食の好みから立ち居振る舞いと、細部に至るまで強い個性を放っています。が、その個性が表面的なものにとどまるのではなく、読み進めるうちに人間味のあるキャラクターへと深みを増してくるのが魅力的。
天神の相棒で語り手でもある早川はごく普通の感覚を持った大学生。その等身大の一人称によって、読者も同じ目線で謎を追っていくことができるので、迷子になることなく一緒に推理しているような気分になります。

彼らに依頼されたミステリーの裏に潜んでいる科学や伝承。そしてどの謎にも共通するのは、一筋縄ではいかない人間の深層心理。
テンポよく進む謎解きとウィットに富んだ会話の先に、あたたかな余韻を残す作品です。

★★★ Excellent!!!

探偵といえば、変人が多いものです。そしてそれに助手が振り回されるのも常のこと。
この作品の天神君と早川君もその例に漏れず、変わり者の大学生と平凡な大学生なのである。
そして、ミステリーとは必ずしも死体があって、それを解決するとは限らない。日常の中に潜んだ謎を解き明かすのも、またミステリーなのだ。
どこかオカルトめいた事件を、変わり者はどう謎解くのか?
ぜひともじっくり読んで、謎を考えて欲しい作品です。あなたはこの謎が解き明かせるでしょうか。
ぜひご一読ください。

★★★ Excellent!!!

日常ミステリーが好きな方、男子大学生のバディものが好きな方にもおすすめできる連作短編です。

毎週金曜日の午後二時、喫茶店「レトロ・アヴェ」にて神の告解室が開かれる。
その噂の「神」天神一と、彼の相棒になってしまった早川翔太。
彼らの元に、一人の女子大生が現れた。「探偵」である天神一に彼女はこう依頼する。
「私に掛けられた呪いを教えてください」と。

こちらは連作短編であり、章ごとに異なる事件を扱っています。
そのどれもが奇妙で、まるで霊的な何かが原因のように思える現象ばかり。
それを豊富な知識や観察力と洞察力、推理で紐解いてみせる探偵、天神一の活躍は爽快です!
それぞれ全く関係がないお話に思えますが、次第に初めの依頼に繋がっていく。連作短編の醍醐味が味わえるのも、魅力の一つです。

また、天神一と早川翔太、この二人のキャラクターと関係性もとても魅力的!
「風変わり」と称される天神一は眉目秀麗な美丈夫ですが、行動や言動は大胆で浮世離れしており、まるで舞台俳優のようにも思えます。
まさに「風変わり」なのですが、不思議と人を惹きつける魅力的な人物です。
(○○が苦手、と言う可愛らしい面もあります)
そんな彼が愛するのは「普通」。
何故普通を愛するのか。本作では彼が「普通」を愛する理由も垣間見ることができます。

対して、相棒の早川翔太は至って「平凡」そして「普通」。
そんな彼が天神の奇怪な行動に振り回されつつも、それを受け入れている。
二人の「相棒」関係がとっても素敵なのです!
日常の謎と共に、彼らの関係性にも注目してみてください。

上質なミステリーと魅力的なキャラクターの掛け合いが楽しめる良作です。
本編完結済です。是非ご一読ください!

★★★ Excellent!!!

 レビューなんて! 
 こんなもんでいいんだよ!

 TwitterのTLに何より哀しい文章が流れてきたので、死体蹴りしに来ました!

 するとなんだねこの作品は!
 シンプルに面白いじゃないか!

 初っ端からテンポの良い会話!
 しっかり特徴のあるキャラクター!

 プロローグまで読んだ時点でこのレビューを書いているので、まだ本格的な推理パートには突入していませんが、なるほどキャラの立ち位置はなんとなく掴めたよ!

 さてこれから、どのようなミステリが待っているのか?

 この作品の行く末に、溢れんばかりの呪いと祝福とコッペパンを。

★★★ Excellent!!!

古今東西、探偵モノの探偵は変人と相場が決まっています。多分。
天才性ゆえに一般人からは思考が理解できず突飛に見える行動を取っていたり、あるいは普段冴えない雰囲気を出しているけれど事件を解決するときだけ真価を発揮したり。
そういう変人っぷりの中に、凡人は天才性を見出すのかもしれません。

さてこの作品の探偵役である天神一という男、この人物もまたクセの強い人物です。
地の文に偉丈夫と称されるようながっしり体格に、スリーピースや七三分けといったかっちりとした格好。
しかもナイスミドルとかじゃなくて大学生ときました。
快活明朗で声のよく通る人物ながら、途中説明をすっ飛ばしたりして一般人にはなかなか会話に苦労する。
うーん、好きです。いいキャラしてます。

その天神一が挑む謎は、なかばオカルトじみた内容。
発生する怪奇現象の謎を探り、解答を導いていく。
このレビューを書いている時点で三つ目の謎に挑むところですが、その中で縦軸の謎はまだ残っており、どんな物語となっていくのかまだまだ目が離せません。
この先も期待しています。

★★★ Excellent!!!

普通な主人公と一風変わった探偵が事件を解決していく物語。
どう見てもオカルトな雰囲気の本作ですが、意外にも、と言っては失礼ですがしっかりとミステリーしています。
読み進めていくごとに、怪しい世界に迷い込んでは現実世界のミステリーに帰ってくるような不思議な感覚を味わいました。

ミステリーものが好きな方はもちろん、オカルトっぽい雰囲気が好きな方も楽しめるのではないでしょうか。

是非ご一読ください。