第23話

「はぁ…はぁ…」


 バタッ!


 舞佳はその場に倒れ込んだ。




 ハッとして目が覚めた。

 舞佳はベッドに仰向けに寝ていた。しっかりと布団も掛けられていた。

「ゆ、夢…?」

 バクバクとしている心臓に手を当てる。

 その時に、手のひらに触れたのは…

 あのペンダントだった。

 心臓がドクンッと大きく脈を打った…。


「舞佳!」

 叫ぶような声が耳に飛び込んできた。

 顔を向けようとした瞬間…

 誰かにギュッと抱きしめられていた。


「ま、まりかさん…?」

「ううっ…ごめんなさい。舞佳を守りきれなくて、怖い思いをさせて…」

 まりかは謝っていた。

「そんなことはありません。まりかさんは私を守って、危険な目に合わせたのは私です」

「まりかさんが、生きていてくれて、本当に本当に良かった…」

 舞佳もまりかも泣きながら、お互いを必死に抱きしめていた。


 タンタンタン…!


 足音が一斉にこちらへ向かってくる。

「舞佳!」

「舞佳さん!」

「まいかおねえちゃん!」

 舞佳を呼ぶ声が次々と重なり、次にベッドの周りを皆が囲んでいく。

「よ、良かった…良かったよ」

 舞佳の手を握りしめたのは、楚世歌だった。


 ベッドに突っ伏した楚世歌は、ひたすら「良かったよ…」と呟いていた。

 その次に、顔を覆って号泣してしまったのは…和花だ。

 舞佳は、周りを囲むみんなを何度も見渡した。

「皆さん…」

 舞佳の口から声がこぼれた。

 その後、自分の手のひらを見る。

「あの時、カッターを持っていなかったら危なかった…」

 その時、後ろから顔を覗かせたのは真可だった。

「投げたの、私です。怪我とか…していませんか?」

「カッターを投げてくれたのは真可さんだったんですね…本当にありがとうございました…私は大丈夫です」

 泣きそうな声が真可を包んだ。

「良かったです…皆さんが、無事で…」

 その言葉を合図に、真可が声を張り上げて泣き出してしまった。

 つられるように、みんなも涙をこぼし始める。

「ぐすっ…」

「こ、こ、こわかったよぉーーー」

「はぁっ…はぁっ…」

「ううっ…」

「私たち…生きているんだね」

「…生きられたんだ」

「怖かった…」

 舞佳はみんなの背中を擦って回った。

 中には、横になっている人もいた。

 泣きつかれて寝てしまった子も…。

「辛かったですね…」

 舞佳の涙が、偶然にもペンダントの宝石に落ちた。


 ピキッ…


 …小さな音がした。

 舞佳すらも気づかないくらい、とても小さな音が。


 …宝石には、一筋の細いひびが入っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る