第83話 宮廷魔導師カノープス・メトリア・5

そんな会話が3人で交わされている間に辺境伯がサロンに戻って来た。どうやら王宮からからカノープスさん宛に連絡が入ったそうだ。


「花を受け取ったら至急王宮に戻り薬を作成して欲しいそうだ。どうやら今朝から王女の体調が良くないらしい」


それは大変。


「....この病は死に至る病じゃないから急がせる意味はないって言ったんだがな」


カノープスさんが盛大に溜め息をつきながら肩を竦める。


「死なないと理解していても自分の子供が病で苦しんでいるのを見て何とかしてやりたいと思うのが親心だからな。そう言ってやるなカノープス」

「はいはい。じゃあ俺は王宮へ戻るが....リン」

「はい!」


唐突に名前を呼ばれて慌ててカノープスに顔を向けると、彼はニヤリと笑って私を見る。


「俺は基本的には王宮に居る。魔法の勉強がしたくなったら俺の所に来たら良い....お前なら俺の弟子にするのも悪くない」

「はぁ?」

「ちょっ、おい待て!カノープス!!」

「じゃあな」


カノープスさんは言いたい事だけ言って再び転移で王宮へと戻って行った。


え?弟子??いや、宮廷魔導師様の弟子になんてなるつもり全くないからね!??


「.....はぁ~ったく、彼奴は相変わらず自己都合で勝手な主張ばかりしてくるなぁ.....リン、彼奴の言うことは気にしなくても良いぞ。宮廷魔導師なんかの弟子になったら王宮から出られなくなるからな」

「え、それは絶対嫌です!ならないです!!」


間に合ってます!!


「だが彼奴があんな事を言い出すなんて余程君を気に入ったんだな。彼奴は宮廷魔導師の肩書きを名乗ってるが、あれでも我が国唯一の賢者なんだよ」


はい!賢者!!キマシタネ!

ファンタジーには王道!


そうか、カノープスさんが賢者なのか....どんだけ凄いんだろうあの人....。


「我が国で宮廷魔導師を名乗っているのは現在6名でその下に宮廷魔導士達がいるんだが、カノープスはその宮廷魔導師のトップに立ち"賢者"を名乗る事を許されている唯一の魔導師なんだ。故に彼の弟子になりたがる者は多いんだが彼奴は弟子は取らないと明言していたんだよ」


辺境伯がカノープスさんの宮廷での立ち位置を説明してくれるが、これ普通の10歳の子に話す内容じゃないよね?気がついてるのかなぁ?


「宮廷魔導士は基本的に自分達を指揮する立場にある宮廷魔導師に弟子入りし、次代の宮廷魔導師の後継に選ばれるように研磨を積むんだ」

「じゃあカノープスさんの弟子になれれば賢者を目指す事も可能になるかも知れないって事ですか?」

「そう思う魔導士もいると言う話だよ」


いや.....弟子になったからって簡単に賢者になれるものじゃないでしょうに.....浅はかと言うか何と言うか.....


「カノープスに選ばれた時点で才能があると認められたようなものだからね」

「まぁそんな考えをしてるからカノープスに見向きもして貰えないんだけどな?」


辺境伯もギルドマスターも中々に口が悪い。まぁ取り敢えず私自身、弟子になる気なんてこれっぽっちもないし、宮廷魔導師も魔導士も全く興味がないからどうでも良いかな?


面倒事に巻き込まれないようにだけはしないとだけど。


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