第80話 宮廷魔導師カノープス・メトリア・2

辺境伯に促され素直にソファへと座ったカノープスの前にお茶が出され1口飲むと漸く落ち着いたのか謝罪を一言口にした。


「....すまない」

「いや。落ち着いてくれて良かったよ」


辺境伯もギルドマスターもこんなカノープスの態度に慣れているのだろう。苦笑は浮かべるが怒るような態度は一切見られなかった。


.....魔導師ってラノベやアニメで変な人のイメージがあるけど多分例に漏れずこの人もそんなタイプの人なんだろうなぁ.....


「本題に移るがこれが "ドラゴンの涙花 " だ。間違いはないと思うが確認してくれるか?私には鑑定のスキルはないんだ」


辺境伯が涙花を1本手渡すとカノープスはそれを受け取りじっと花を見つめた。


「....うん、間違いなくこれは"ドラゴンの涙花"だ。これでようやく王女の薬が作れる」


少しだけホッとした表情を見せるカノープスに、頑張って採取してきて良かったと思う。


「その花を採取して来たのがそこの冒険者の少女のリンだ」

「.....そうか、君が....だからか」


最後のは他の人に聞こえるか聞こえないかぐらいの小声だったので辺境伯には聞こえてなかったようだ。.....勿論私には聞こえてたけどね!あとギルドマスターにも聞こえてたっぽいなぁ....何だかギルドマスターが私を見る目が怖い。


仕方ない.....後でギルドマスターには話しておこう。何か問題が起きた時に協力してくれるかも知れないしね!!巻き込んでやる!


「これは全て貰って構わないのか?」

「勿論だ。この薬が必要なのは王女だけではないだろう?それでも全ての病人に行き渡るようには造れないだろうが....」

「....そう言って貰うと助かる」


これは後でギルドマスターから教えて貰った事だが、ドラゴンの涙花が咲いている場所が解ってるのに何故薬を普段から造らないのかと言うと、この病は所謂不治の病に分類されているが何故なら病を治す薬を造る事がまず難しいらしく、ドラゴンの涙花以外にも稀少な薬草を数種類必要な上にそもそもとしてその薬を調合出来る人が殆ど居ないのだとか。今回は病人が王女様だと言う事と、カノープスさんが調合出来る事、薬に必要な稀少な薬草が全て揃った事、全てが上手く重なりあったからこその幸運なのだとか。もしひとつでも欠けていたら王女様は助からなかっただろうと。


そして王女様が病に掛かったからこそ、残った薬で助かる同じ病の人達もいる事。彼らにとっては運が良かったと言えるだろう。ただ薬の量は限られるので与えられる人をどう選ぶかは国王次第だろうが。出来れば貴族平民関係なく与えて欲しいとは思うが.....。


『お前がこのタイミングでこの世界に来たのも何か意味があったのではないか?』

「そうかな?.....でも私の行動が少しでも役に立ったんなら良かったよ」


コソッと黎明レイメイと囁き合った。


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