第壱幕 大悪魔、降誕す-下-
◇未明/場所不明/阿ノ玖多羅皆無単騎少佐
夢を見た。冷たく鋭い剣に心臓を貫かれ、死ぬ夢を。
「うわぁぁあああ!?」皆無は飛び起きようとして、「――わぷっ!?」
何やらただならぬ柔らかさを持った物体に鼻先をぶつけ、仰向けに戻った。後頭部にも柔らかな感触。周囲は暗く、青々とした草木の臭いと、虫の声で満ちている。そして、
「あはァッ!
(膝枕されとるッ!?)つまり自分が頭突きしたのは、少女の豊満な――「うわわっ」
皆無は転がるように起き上がり、
「【
「主人に銃を向けるなど、イケナイ使い魔じゃのぅ」少女が――両腕を持たない
少女の背丈は皆無よりも一回り大きい。一五五サンチほどだろうか。
「それより、よいのか幼子よ?」その少女がずんずんと近づいてきて、皆無の目の前に立つ。震える皆無が構える南部式が――その銃口が乳房に触れるが、恐れる様子など露ほども見せない。少女はいたぶるような笑みを浮かべ、「そなた今、素っ裸じゃぞ?」
「えッ!?」自身を見下ろし、ようやく気付いた。身に着けていたはずの軍衣が、ボロ雑巾のようになっている。特に
「あはァッ、何とも
「う、
「声も、少女のようじゃな。時に『ウルサイ』とは何じゃ?」大慌ての皆無が服を着込むその隣では、それまで
(地脈から知識を吸った!? な、なんて
「蠅といえば、
(眷属?)眷属。使い魔。失った心臓。目の前にいる、現実離れした美貌を持つ少女からの、口付け。自身が
「あ、あぁ……」
思い出した。
人は悪魔に魂を売り渡すことで、超常の力を得ることができるという。まさに――つい先ほど、己があの鳥頭の
皆無は頭を抱える。(僕はコイツに魂を売り渡してしもぅたんか!? 僕がいつ同意した!?)
「ちゃんと合意の上じゃぞ?」こちらの思考を読んだかのような間の良さで、少女の
「お、鬼ぃッ! 悪魔ぁッ!
「あはァッ!」少女が楽しそうに嗤った。「予がメフィストなら、そなたはファウストじゃな。幼き博士よ、そなたは命と引き換えに何を望む?」
「ぼ、僕の命を返せ!」
「それはできぬ相談じゃァ。そなたの命はもう、予が喰らい尽くしてしもぅた」
「く、喰らったって――…どういう意味や!?」
「ふむ。やって見せた方が早いか。幼子よ――ここへ」
少女が命じた。途端、皆無は少女の前にひざまずき、首を垂れる。
「――――ッ!?」あまりの恐怖に、皆無は息もできない。体が、勝手に、動いたのだ!
「そなたの」両腕のない
何てことだ、何てことだ! まさか
「ぼ、僕はダンテやない!」
「アリギヱーリの『神曲』か。良かったのぅ、そなたのベアトリーチェが
――美女。確かに、まごうことなき絶世の美少女であった。
すらりと通った鼻筋、
状況を見るに、どうやら少女は追われているらしい。さらに少女には、両腕がない。そんな状況をして、この少女の目は、瞳は、絶望に染まるでもなく笑っているのである。己の意志力の弱さを自覚する皆無は、月光の下で輝くその瞳に吸い込まれそうになる。
(――アカン!)皆無は慌てて頭を振る。(コイツは、
『悪魔』というと、先ほどの鳥頭や、魔女の
「自己紹介と
「――えッ!?」皆無も慌てて空を見た。と同時、
「ギャギャギャギャギャッ!」翼を持った石像の異形が降ってきた。
(
手元に村田銃がないのが
「【
「あぁ、あの長銃かァ」また、皆無の思考を読んだかのような間の良さで、少女が言った。「【
果たして虚空から愛銃――試製
光とともに村田銃から放たれた弾丸――
(構わへん!)大きく
更に、六度の射撃。放たれた光の弾丸は、驚嘆すべき射撃精度で以て敵頭部の同じ場所を狙撃せしめ、
「あはァッ! 人の子らの武力も
当然である。仏蘭西に学び日本で完成した神術と技術の結晶、
(――って、アレ? コイツ今、
「同族ではないぞ」またしても、皆無の思考を読んだかのような、少女の声。皆無がぎょっとすると、少女が
「んなッ!?」これでも最年少少佐として、三
「クックックッ、年ごろじゃのぅ」少女が
「えっ!?」脳内高速詠唱の索敵術式【
腰の
【
(ど、どうすれば――)悩む間にも、南方から敵の反応がぐんぐんと近づいてくる。
「簡単なことじゃァ」腕なし
「はぁッ!!」皆無はのん気な様子の
無論、皆無とてそのやり方は知っている。が、下級の弾丸にヱーテルを込めたくらいで、その威力はたかが知れている。
「よいからやってみよ」
「糞ッ――」皆無は脳内高速詠唱で虚空から
果たして弾丸は、直視できないほどの光を帯びている。先ほど、少女真里亜に憑りついた
「ヱーテル不足で
(
言われてようやく皆無は、自身が十三年間付き合ってきた見慣れた体に戻っていることに思い至る。軍衣が
「ギャギャギャギャギャッ!!」
「くっ――」半信半疑ながらも、皆無は村田銃へ弾倉を
先頭の一体目掛けて撃った。真っ白な輝きを帯びた弾丸が
(なんて威力!? まるで
――が、頭部を
「糞っ――やっぱり駄目やんか! この悪魔!」少女に抗議しながらも、残りの弾丸で敵集団の胴を正確に狙撃する。だが、「これじゃ時間稼ぎにもならん!」
「込め方がなっておらんのじゃ」ふわりと甘い香りがしたかと思うと、腕なし少女が皆無のすぐ隣に立っていた。「ほれ、手本を見せてやる。弾を貸して
「はぁ!? 何を言って――」
「また、命じられたいのか?」
「分かったから!」
皆無が
「ぅわっちち!?」
熱を感じた。弾倉に込められた、空気を震わせるほどの桁違いのヱーテルが、皆無の
「な、何やこれ!?」
――次の瞬間、真夜中の山中に、昼が訪れた。
太陽かと見まごうばかりの弾丸が、狙った
「あ、あはは――すっっっげぇ!!」皆無は我知らず、年相応の子供のように笑う。が、自身が
「さて、予はこのまま腕探しに行きたいのじゃが……この騒ぎを収めるのが先か」
「騒ぎ?」知ろう、と思ったときにはすでに、無詠唱の【
――西洋妖魔による、百鬼夜行。
【
「ちょうど、
(
「じゃから同族ではない。そなたらも人の子ら同士で散々に殺し合っておるではないか」
それは、そうである。日本が眠れる
「ほれ、ちょうど近場に石ころどもの集団がおる」少女が赤い瞳を輝かせながら、空を見上げている。索敵魔術か、
「あれを狩れ」
「狩るって、どうやって!?」
言葉は、続かなかった。美しき
「ぷはぁッ、やめろや!」
「これこれ、抵抗するでない。翼があればあの程度の距離、ひとっ飛びじゃというのに」
「だ、誰が
「ふぅむ……強要して
やってみよ、と言われて皆無は困る。己が使える移動系の術式といえば、
(【
「待て待て、
皆無の体が独りでに動き出し、腕なし少女を抱き上げる。
「か、勝手に人の体を動かすなや!」鼻孔をくすぐる暴力的なまでに良い匂いを、皆無は必死に無視する。村田銃を保持しなおして、「行くで!」
地面を蹴った。途端、
「うわぁぁああああああッ!?」「あはァッ! 爽快じゃのぅ!」
皆無は空にいた。精々が脚力を強化する程度のはずの術式で、空高く舞い上がっている。
「ギャギャギャギャギャッ!!」目と鼻の先に、
「撃てッ!」「言われなくともッ!」
再び、百鬼夜行の夜に昼が訪れた。放たれた弾丸が、十数体もの
「あはァッ! よいぞよいぞ、幼子よ! ――【
夜空に真っ赤な魔法陣が立ち現われ、
皆無は自由落下し始める
(何やこの感覚――この、万能感はッ!!)敵集団を蹴散らしながら、皆無は陶酔する。昨日までの自分なら、一体倒すだけでも命懸けだったはずの相手を、引き金を引くたびにダース単位で吹き飛ばせるという快感――悪魔的な快楽。
「くぅッ――」不意に、腕の中で少女が体を縮めた。まるで痛みを
「何じゃ、心配して
「ちゃ、
「安心せよ、予は平気じゃ。ただな、腕が痛むのじゃ」
(存在しない腕が……痛む?)
「予にはこのとおり腕がない。じゃが、予の腕となるべき
「さっきから聞いてりゃ幼子幼子って! 僕は立派な大人や!」
阿ノ玖多羅皆無、十三歳。身長一四〇サンチで
「ぷッ――くふふ、自分で『立派な』なんぞと言うておるうちは、
言い争いを続けながらも、皆無は夜空を駆け、丁種
「くッ――」皆無は
「仕方のない使い魔じゃのぅ」少女が存外素直に、弾倉に口付けして呉れる。また、弾薬が鋭い光を帯びる。「じゃが、どうやって弾を込める?」
そう。試製
「教えてやろう。【
「そんな魔術、使えへんわ!」敵の亡骸を蹴って舞い上がりながら、皆無は叫ぶ。
「使えるとも。予の口付けを受け容れよ。ヱーテルと一緒に術式も流し込んでやろう」
「うぐぐ……」再装填はしたい。が、
――少女を、天高く放り上げた。
「ぅひゃぁッ!?」少女の、
そこから皆無の、洗練され尽くした動作が始まる。皆無は足場もない中、腹筋で以て見事に姿勢を正し、村田銃の銃床を右脇に抱え込む。次に、光り輝く新たな弾倉で以て空の弾倉をはじき、速やかに新たな弾倉を
【
放たれた弾丸が光の尾を引いて
「――ちッ」神速を誇る
皆無の目の前に
(【五大の風たるヴァーユ・十二天の一・風の化身たる風天よ】)風天の曼荼羅と、
(【旅人達の守護者・トビトの目を癒せし大天使ラファヱルよ・その行き先を示し
黄色いヱーテル光を纏った【
皆無は再度、【
自由落下の真っ最中だった腕なし少女を抱きとめた。
「だ、だだだ大丈夫ではないわ!
「あははっ」皆無は意趣返しができて、少し楽しい。「分かっとるわ」
無論、皆無とてこの少女を墜落死――甲種
「このような
「嫌やね」皆無は空を漂う妖魔たちの
何しろ相手は、ヱーテル総量五億単位の甲種
「それができれば苦労はせぬ」「お前、さっきも魔術使っとったやん」「【
口論しながらも戦い続け――そして気が付けば、辺りの飛行系妖魔は一掃されていた。他ならぬ自分が
そうしてようやく、皆無は気付く。眼下の――
銃弾を足場に降りていくと、果たして山道の入り口にいたのは、「――お前ら!?」
「「「しょ、少佐殿ッ!!」」」
愛すべき三人の
「何でこんなところに――」言いつつ無詠唱の【
戦力外の若手たちを、日本妖魔が潜む山の監視に当たらせるという配置らしい。
「あはァッ、幼子よ」地面に下ろすと同時、
「――…ッ!?」皆無の全身から、冷や汗が噴き出す。
今までは、ヱーテル核を集めたいこの
(こ、ここであいつらを殺してしまうくらいなら、この
――――……なかった。
(あ、アレッ!?)
代わりに、
「少佐殿、ありがとうございばずぅ~ッ!」紅一点の伊ノ上少尉が、顔をくしゃくしゃにして礼を言ってくる。「ところで少佐殿、この
伊ノ上少尉の体が、跳ね飛ばされた――腕なし少女の強烈な蹴りによって!
(やっぱりコイツは敵――ッ!?)皆無が南部式を少女に向けたそのとき、
「――グルルルルルルァッ!! バウゥッ!!」
体高二メートルはあろうかという巨大な
(えッ、伊ノ上を助けた!?)皆無はますます混乱する。(一体どういう――
皆無が息を吹き掛けるや、狼はその場で眠り込む。
「何ぞ大きな犬っころじゃのぅ」
(ってことは、やっぱり伊ノ上を攻撃するつもりやなかったってことか?)
実際、少尉は痛そうに尻をさすってはいるものの、
「ふむ。こやつ極東妖魔の
「待て! 待って呉れ!」自身の体が操られる気配を感じ、皆無は懇願する。「コイツを殺したらアカン! 六甲山条約違反になってまう!」
「ロッコーサン条約ぅ?」少女が小首を傾げてみせる。
「六甲山系にはたくさんの日本妖魔が
この地を統べる為政者たちと日本妖魔の争いの歴史は、長い。が、百数十年前の開国にあたり、海と山の二正面からの脅威に立ち向かうのは困難と判断した幕府と
「じゃが、こやつ今、明確な攻撃意思を持って突進してきたぞ?」
とはいえ大神家の手綱も万能ではない。反乱分子や道理を
「コイツははぐれ者やろ。人間にだって犯罪者はおるし――」
「――グルルルルルルァッ!!」「バゥワゥゥウゥッ!!」「ワオ ンッ!!」
皆無の言葉を遮るかのように、山奥から、まるで波のような狼の大群が押し寄せてきた!
「きゃっ」「うおっ、何やコイツら!?」「ひ、ひえぇぇ~ッ! 助けて少佐殿!」
狼たちはしめ縄の前に立ちはだかる見えない壁に激突し、それ以上は進めない。が、早くもそのしめ縄が千切れそうになっている。
「おやぁ? 随分とはぐれ者が多いようじゃが」
「な、何でや!?」皆無は頭を抱える。
「【赤き蛇・神の悪意サマヱルが植えし
「嗚呼――アレが原因じゃな。あやつめ、しぶといのぅ」
「え?」少女が顎で示す方――空を見上げると、宵闇よりもなお暗い漆黒の霧が空を覆っていた。あの霧には見覚えがある。「――
「アレはもう、
不和。
「あの霧が原因で、狼たちが暴走しとるってことか!?」
「左様。そうして人の子らの
言われて意識してみれば、摩耶山の麓にある数々の集落からどす黒い光――人々の恐怖心を乗せたヱーテルがあの霧の中心に集まりつつある様子が、【
狼たちの遠吠えはますます大きくなる。ヱーテル枯渇で気絶する師団員たちが出始める。
このままではいずれ結界が崩され、狼の大群が師団員たちを喰い散らかし、麓の人々を襲い、神戸を
(そんな、どうすれば……)頼りになる父は、いない。古参はみな港に掛かりっきりで、ここには退魔師未満のヒヨッコたちしかいない。皆無は左手を撫ぜる。勝てるのか。自分が、伝説の甲種
「今度こそ、
……絶望的な戦いが、始まる。
◇同日
皆無は【
「いい加減、観念して予の口付けを
「断る! ――【
今度は完全詠唱し、たっぷりとヱーテルを使ったうえで炎を放った。
「ゴァァアアアァァアアアアアアアアアッ!!」霧から亡者の
視界を覆い尽くすほどの巨大な火の玉はしかし、黒い霧に呑み込まれてしまった。
「
霧から触手が伸びてきて、弾丸に触れる。途端、弾丸は力を失い、落下していく。何発も打ち上げていたはずの足場が、みるみるうちに減っていく。
「――【
触手が破裂した。が、霧の中から次々と新しい触手が伸びてくるので、焼け石に水だ。
皆無は脳内高速詠唱で最高火力の術式【
霧の本体目掛けて、撃つ。少女の巨大なヱーテルが込められた
だが、それさえも――――……
「あ、嗚呼……あぁぁ……」皆無は、自分の声が絶望に彩られていることを自覚する。
弾丸が放つ輝きは、霧の中に呑み込まれ――…消えてしまった。
皆無が苦戦している間にも、刻一刻と時は過ぎていく。鋭敏になった【
無数の触手が皆無に襲い掛かってくる。皆無はそれを村田銃で
(また、守れへんのか?)残り少ない足場を頼りに逃げ回りながら、皆無は自問する。
「守れる」ふと、耳元で声がした。脳を
「くッ、それでも、それでも僕は――」
――そのとき、一本の触手が、まるで剣の如き鋭利さで
武器はなく、精神統一もままならず、防護結界を張るにはとても間に合わない。
(い、
――――――――…………が、待てど暮らせど、痛みはこない。
恐る恐る目を開き、皆無は
「あ…はァッ……」少女が、腕のない
少女の体が、皆無の腕から
「お前――ッ!!」皆無は【
見れば少女の方も、手を伸ばそうとしている――腕もないのに。
果たして皆無は、少女のドレスをつかみ、少女を手繰り寄せることに成功した。
「
「――許す」少女が、弱々しくも力強く、
皆無は少女の唇にかぶりつく。ドロリとした甘いヱーテルが皆無の舌を、喉を、胃を温めていく。全身が熱い、熱い、熱い。皆無の体が
「これは……」皆無は自身を見下ろす。真っ黒な毛に覆われた手足、鋭く
体内を、
――実に、日本一の退魔師たる父・正覚の、二倍。
「地獄の魔術を……授ける」途切れとぎれに、少女が言う。「復唱せよ」
「う、うん」
「【三つの暴力・
「み、【三つの暴力・
悪魔的な単語が、詠唱が少女の舌の上で踊り、皆無の舌に絡みつく。
「【苦患の森に満ちる涙よ雨となり】」「【苦患の森に満ちる涙よ雨となり】」
多量のヱーテルで
「「【煮えたぎる血の河と成せ】」」
皆無は少女を強く抱きしめながら、その右手の平を霧に――
「「【パペサタン・パペサタン・アレッペ・プルートー】」」
今や皆無は、少女とともに結びの句を叫ぶ。
「「――――【
空が、炎で満たされた。
「ゴァァアアアァアアァァアアアアアアアァアアァァアアアアアアアアアアッ!!」
黒い霧が、不和侯爵
地獄の炎が、全てを焼き尽くす業火が、瞬く間に霧を呑み込む。焼き滅ぼす。
……――――後にはただ、何もない空が在る。
夜が、明けたのだ。
◇
【
神戸は、守られたのだ。
「やった、やったで!」着地しながら、皆無は興奮と喜びを少女にぶつける。
「よ、よぅやったのぅ……そ、それは良いが」その少女が、真っ青な顔をしている。
「は、
「うわぁッ!?」皆無は仰天する。朝日の下で見てみれば、少女は肩口から胸元までざっくりと切り裂かれていて、傷口からはとめどなく血が
短縮詠唱で薬王
「ふむ。なかなかの術式展開能力じゃのぅ!」早々に顔色を取り戻し、少女が嗤う。「そなたに地獄級魔術の数々を仕込むのが、今から楽しみじゃァ」
あれほどの
(
今にも気を失いそうになりながら、皆無は少女に問う。「……お前、名前は?」
「リリス」少女が嗤った。「そなたの命を
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