第10話

 目を開けると、自分の顔が濡れているのがわかった。

「夢見て泣いてるとか・・・・・・メンヘラかよ・・・・・・」

 指で拭き取って、天井を眺める。

「・・・・・・・・・・・・」

「ぶふっ!」

「えっ!」

 自分の右側からした異音に俺は顔を横に向ける。

「なっ! 何でお前が俺の部屋に!」

「ぶふっ! ぶふふふふふふふふっ!」

 楊貴妃が俺の顔に向けて何かを吹きかけた瞬間、脳内に激痛が走る。

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

「ぶふっ! 味付けぶふふふふふっ!」

 目が開けられない、だけど、楊貴妃が俺に近づいてくる気配だけははっきりとわかった。

「くるなっ! こっちにくるなよっ!」

 俺は体を持ち上げ楊貴妃から離れようとする。

「ぶふっ、うるさいぶふっ!」

「ごっ……」

 何が起こったのかもわからない、ただ、わかることは俺はその場に前のめりに倒れこんだ事だけだ。

「足をね…ぶふっ、食べたの」

「足?」

「ぶふふふっ、感覚ないでしょう? ぶふふふふっ」

 何が起こってる…何が…

「これから、貴方は私に食べられるの……ぶふっ…最初は足から段々上に向かって……ぶふふふふっ」

 声が出ない……何で……

「でも大丈夫ぶふふふっ意識は脳みそを食べ終わるまで残ってるから安心して、じゃあ……いただきますぶふふふふふふふふっ」

 バリッボリッと深いな音が聞こえてくる。

 ああ、俺は食べられている。

「おいじい……おいじいいいいいぶふふふふふふふふっ!」

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

『大丈夫』

 え?

『安心しろ』

 この声……楊貴妃じゃない……誰か助けに来てくれたのか?

『お前は死ぬわけじゃない』

 助けを求めるために必死に目を開ける。

 

そこに、

『俺はここにいるんだからな』

 俺がいた。

 助けてくれよ。

 キュンキュン……ペリッポ……


それが俺の終わりだった。

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