瞬発力
擬似ダンジョンでさんざん戦ってきた可愛い小動物。
ダンジョンのモンスターは人を油断させるために姿を変えている。
常人ならそのあまりのくぁいいさにうっかりと隙を晒してしまうのだろうが、この赤谷誠はどんなに愛嬌があろうと騙せないぜ。
「サイズからして2階層のダンジョンモンスターだ。これなら相手じゃない」
ダンジョンモンスターは深い階層に行くほど、強力な個体が出現することで知られている。同時に階層ごとにおおよそお戦力も判断できる。
擬似ダンジョン2階層のポメと、天然ダンジョン2階層の柴犬はほとんど同じ運動性能と攻撃能力を備えているように感じた。
「まさかポメ狩り経験が生きるとはな。相変わらず経験値はスキルツリーに吸われるが」
まあそれもいいだろう。
ツリーキャットの話では経験値を食べて、『スキルの種』という異常物質を実らせるらしいし、それが有益なことはわかっている。
たくさん栄養をとって、大きくなれよ、スキルツリー。
「ダンジョンに引き摺り込まれるなんて、きっと異常現象なんだろうな。出口を探そう」
俺は鉄球を片手に、ダンジョンの中を歩きはじめた。
歩いていると度々柴犬に出くわした。
俺は鉄球を放ち、柴犬を粉砕し、経験値を回収する。
何度も戦闘しているうちに「これは素手で投げたらMP節約できるのでは」と悪魔的なひらめきを得て、俺は試しに素手で投擲してみた。
結果として俺の投擲した鉄球が柴犬に当たることはなかった。
大暴投に次ぐ、大暴投。
投擲というのは非常に高い技能を要求される運動だ。
誰でもピッチングできるわけではない。
それを動き回る柴犬に命中させるのは至難の技だ。
投げてみて気がついたが、柴犬は俺が鉄球を振りかぶった段階で、身構えて避ける心構えをしているようだった。
俺の『飛ばす』『筋力で飛ばす』がよく当たるのは、予備動作なしで最高速度で発射されることと、俺の意識した場所へ確実に飛んでいくことの正確性のおかげだったらしい。
「飛ばすって偉大だな」
「シヴァあ! ━━キャインッ」
━━しばらく後
ずいぶんと歩いたが出口が見つからない。
階層内をぐるぐる回っているような気がする。
まあ気がするだけで厳密には回っていない。ヘンゼルとグレーテル方式だ。俺は自分の歩いてきた壁に鉄球を定期的に叩きつけて、跡をつけ、自分が通った場所がわかるように目印をつけている。なので同じ場所を歩いていないことはわかる。
階段を登ったり、梯子を降りたり、ちょっと広い部屋に出たり、ちょっと狭い部屋を通ったり、その過程でダンジョン柴犬と幾度も戦った。
もうどれだけそうしているだろうか。
疲れが溜まってきている。
俺はさっき見つけた階段したの隠し通路のような場所で身を横たえる。
少し眠ろう。多分、想像以上に俺は動き続けているはずだ。
こんな状態で柴犬と戦っていては、いずれミスをして、殺されてしまう。
━━
どれくらい眠っただろうか。
もう眠気はない。疲労も無くなった。
ただ空腹がひどい。喉も乾いた。
「ステータス」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【Status】
赤谷誠
レベル:0
体力 89 / 100
魔力 388 / 400
防御 100
筋力 30,000
技量 300
知力 0
抵抗 0
敏捷 0
神秘 0
精神 0
【Skill】
『基礎体力』
『基礎魔力』×4
『基礎防御』
『発展筋力』×3
『基礎技量』×3
『かたくなる』
『やわらかくなる』
『くっつく』
『筋力で飛ばす』
『引きよせる』
『とどめる』
『曲げる』
『第六感』
【Equipment】
『スキルツリー』
『重たい球』
『蒼い血』
━━━━━━『スキルツリー』━━━━━━━
【Skill Tree】
ツリーレベル:2
スキルポイント:0
ポイントミッション:『懸垂』
【Skill Menu】
『基礎体力』
取得可能回数:4
『基礎魔力』
取得可能回数:1
『基礎防御』
取得可能回数:4
『発展筋力』
取得可能回数:2
『基礎技量』
取得可能回数:2
『基礎知力』
取得可能回数:5
『基礎抵抗』
取得可能回数:5
『基礎敏捷』
取得可能回数:5
『基礎神秘』
取得可能回数:5
『基礎精神』
取得可能回数:5
『第六感』
取得可能回数:2
【Completed Skill】
『応用筋力』
取得可能回数:0
『基礎筋力』
取得可能回数:0
『かたくなる』
取得可能回数:0
『やわらかくなる』
取得可能回数:0
『くっつく』
取得可能回数:0
『飛ばす』
取得可能回数:0
『引きよせる』
取得可能回数:0
『とどめる』
取得可能回数:0
『曲げる』
取得可能回数:0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
HP『89 / 100』MP『388 / 400』
これだけあれば十分に戦えるか。
ポイントミッションも更新されてるな。
もしかしてダンジョンに迷い込んで1日以上経過したのか?
マジかよ。疲れるし、腹が空くのも道理だな。
「とりあえず、ポイ活するか」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【本日のポイントミッション】
毎日コツコツ頑張ろう!
『懸垂』
懸垂 0/1,000
【継続日数】18日目
【コツコツランク】シルバー
【ポイント倍率】2.0倍
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ダンジョンの通路、天井付近の謎の窪みに手をかけ、俺は懸垂を始めた。
体が熱くなってきて、鍛えられた肉体を汗が滴る。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【本日のポイントミッション】
毎日コツコツ頑張ろう!
『懸垂』
懸垂 1,000/1,000
【報酬】
2スキルポイント獲得!
【継続日数】19日目
【コツコツランク】シルバー
【ポイント倍率】2.0倍
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
完了だ。
さてポイント何に割り振ろうか。
俺は周囲に柴犬たちの気配がないことを確認してから、スキルツリーと向き合った。
━━━━━━『スキルツリー』━━━━━━━
【Skill Tree】
ツリーレベル:2
スキルポイント:2
ポイントミッション:完了
【Skill Menu】
『基礎体力』
取得可能回数:4
『基礎魔力』
取得可能回数:1
『基礎防御』
取得可能回数:4
『発展筋力』
取得可能回数:2
『基礎技量』
取得可能回数:2
『基礎知力』
取得可能回数:5
『基礎抵抗』
取得可能回数:5
『基礎敏捷』
取得可能回数:5
『基礎神秘』
取得可能回数:5
『基礎精神』
取得可能回数:5
『第六感』
取得可能回数:2
『瞬発力』 NEW!
取得可能回数:3
【Completed Skill】
『応用筋力』
取得可能回数:0
『基礎筋力』
取得可能回数:0
『かたくなる』
取得可能回数:0
『やわらかくなる』
取得可能回数:0
『くっつく』
取得可能回数:0
『飛ばす』
取得可能回数:0
『引きよせる』
取得可能回数:0
『とどめる』
取得可能回数:0
『曲げる』
取得可能回数:0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ツリーレベル2になったからまた新しい取得可能スキルが増えているな。
『瞬発力』か。結構よさげな響きだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『瞬発力』
アクティブスキル
瞬発力を強化する
【コスト】なし
【リミット】1日3回
キレの有無 決定力を生む
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
これも使用制限タイプのスキル。
とりあえずもらっておくか。
今回解放するスキルは『第六感』と『瞬発力』にした。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【Status】
赤谷誠
レベル:0
体力 89 / 100
魔力 388 / 400
防御 100
筋力 30,000
技量 300
知力 0
抵抗 0
敏捷 0
神秘 0
精神 0
【Skill】
『基礎体力』
『基礎魔力』×4
『基礎防御』
『発展筋力』×3
『基礎技量』×3
『かたくなる』
『やわらかくなる』
『くっつく』
『筋力で飛ばす』
『引きよせる』
『とどめる』
『曲げる』
『第六感』×2
『瞬発力』
【Equipment】
『スキルツリー』
『重たい球』
『蒼い血』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『第六感』は使用制限タイプ。
1日1回しか使えないのならば、スキルを2つ保有することで、1日2回使える。
瞬発力も同様だ。使えそうだったら数を増やそう。
「1回くらいなら試用してみてもいいよな」
俺は意識を集中させ、スキル『瞬発力』の意味を悟る。
どういうタイミングで使えば発動するのか、それがどんな現象を及ぼすのか、スキルに馴染んできたおかげか、スキルツリーのナビゲートが優秀なのかはわからないが何をすればいいのかは直感的にわかった。
拳で素早く空を打つ。
ただの素振り。それで何が起きるわけもなし。
スキルの効果を加えると事象は変化する。
拳の初速が遥かに上昇し、空気は押し出され、それだけで衝撃波が発生したのだ。キレ。なるほど、同じ運動でもそこにキレがあるかどうかで結果が変わる。
奥深いな。てか強くね、瞬発力くん。
これさ一つ気づいたんだけど、敏捷ステータス取っていけば、同じようなことできるんじゃ……スピードが上がれば、瞬間的な速さも手に入るよね?
ただ空気を押し出すだけでは『筋力で飛ばす』をした方がずっと衝撃力がある。なにかもっと有効な使い方でこの『瞬発力』は使っていきたいところだ。
現状、思いつく限りでは素手での直接攻撃にキレを追加すること、あるいは普通では避けれない攻撃に対して回避という選択肢を追加することだろうか。
「瞬発力のことは、まあおいおいゆっくり考えていこうか。さて、日課は終わったけど……これどうすれば出口に辿り着けるんだ……?」
俺はあてもなく再び歩きだした。
そのさきにダンジョンの出口があることを願って。
ズゴン。上の方で物音がした。でかい。ダンジョンが揺れた気さえする。
直後、天井が崩れてきた。たまたま歩いていたのが天井の高い、広い空間だったので、背後へ10歩ほど下がれば避けることができた。
あぶねえ、あぶねえ。
なんだって言うんだ?
天井の崩落が終わったのをみて、俺は瓦礫に近づく。
何かが落ちてきたのかもしれない。
「ひいい、ごめんなさーい!」
物陰から飛びだす柴犬に気をつけていると、人の声がした。
女の子の声だ。聞き覚えがある。生徒だ。俺以外にも生徒がいる。
俺は声の主人を探して、情けない謝罪の聞こえてきた瓦礫の向こうを覗き込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます