引きよせる
昨晩はなかなか強力なスキル『飛ばす』を手に入れてしまった。
いろいろと応用が利きそうな能力である。可能性を試してみたい。
さて今日もポイントミッションに励むとしよう。
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【Status】
赤谷誠
レベル:0
体力 100 / 100
魔力 100 / 100
防御 0
筋力 30,000
技量 300
知力 0
抵抗 0
敏捷 0
神秘 0
精神 0
【Skill】
『基礎体力』
『基礎魔力』
『基礎技量』×3
『発展筋力』×3
『かたくなる』
『やわらかくなる』
『くっつく』
『飛ばす』
【Equipment】
『スキルツリー』
━━━━━━『スキルツリー』━━━━━━━
【Skill Tree】
ツリーレベル:1
スキルポイント:0
ポイントミッション:『雑草抜き』
【Skill Menu】
『基礎体力』
取得可能回数:4
『基礎魔力』
取得可能回数:4
『基礎防御』
取得可能回数:5
『発展筋力』
取得可能回数:2
『基礎技量』
取得可能回数:2
『基礎知力』
取得可能回数:5
『基礎抵抗』
取得可能回数:5
『基礎敏捷』
取得可能回数:5
『基礎神秘』
取得可能回数:5
『基礎精神』
取得可能回数:5
『引きよせる』
取得可能回数:1
『とどめる』
取得可能回数:1
『曲げる』
取得可能回数:1
【Completed Skill】
『応用筋力』
取得可能回数:0
『基礎筋力』
取得可能回数:0
『かたくなる』
取得可能回数:0
『やわらかくなる』
取得可能回数:0
『くっつく』
取得可能回数:0
『飛ばす』
取得可能回数:0
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朝、洗面所でステータスを確認し、ポイントミッションが更新されていることを確かめる。なんか『雑草抜き』ってあるんですけどね。変わったぞ。
恐る恐るポイントミッションを指でなぞり詳細を開く。
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【本日のポイントミッション】
毎日コツコツ頑張ろう!
『雑草抜き』
英雄高校の裏手で励む 0/20kg
【継続日数】14日目
【コツコツランク】シルバー
【ポイント倍率】2.0倍
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これまでと要領が違う。
英雄高校の裏手で雑草抜けってことかな。
しかし、裏手がどこを示しているのかイマイチわからない。
学校で話しかけられる数少ない知人、隣の席のヴィルトにたずねてみた。
普段は教室で話すことはなく、訓練棟で少し話す程度の間柄だ。
「珍しいね、赤谷が教室で話しかけてくるなんて」
「聞きたいことがあってな。この学校の裏手ってどこにあるか知ってるか? この学校で恐ろしくでかいし、俺たち生徒が入れない施設いっぱいあるし、どこが裏手なのかわからなくてさ」
「ところで、赤谷は最近はあまり訓練棟に来ないよね」
「話の腰を折るなよ」
「探索者は諦められたの?」
そういえばヴィルトとはそんな話をしていたか。
「いいや、諦めてない。ここだけの話だが実は俺、スキルに覚醒したんだよ。それも一つや二つじゃないぞ。俺は秘密の特訓を始めたのだ」
「それはすごいね。よかったよ、赤谷の頑張りが無駄にならなくて。あんなに頑張ってたのになんの成果も得られなかったら惨めだもん」
「お前は俺を気遣ってくれるのか、貶してるのかわからんやつだな」
「気遣ってるよ。すごく」
ヴィルトは心外とばかりに、少しだけムッとした。
知っている。彼女はみんなに優しい女の子だからな。
学年の2大美女のうち『銀の聖女』と呼ばれているのも学年じゃ有名な話だ。
ちなみに2大美女のうちもう片方は『氷の令嬢』と呼ばれている恐い奴だ。
「それで裏手がどこにあるかだったけ。詳しくは知らないけど、やたら緑が生い茂った区画が敷地内にあるね」
「緑が生い茂ったエリア……?」
放課後、俺はヴィルトから教えてもらった情報を頼りに、来たことのない区画へやってくる。生徒たちが入ってはいけない『職員レベル2以上』と書かれた入り口を持つ建物がたくさん並んでいる。
ちなみに学生の学生証は職員レベル1の権限を付与されていると入学式の日に担任に教えられた。なので学生が学生証を使えば、学生寮や教室棟、訓練棟、中央棟、そこらへんの施設に自由に出入り可能だ。
「緑の生い茂る区画ってこれか……?」
「お前、こんなところで何をしているのかね」
声をかけられ振り向くと、筋骨隆々のスキンヘッドの大男がいた。
「ダビデ寮長?」
「赤谷ボーイか。珍しい場所にいるな。ランニングかね」
「いえ、今日は違うメニューでして……ここって学校の裏手にあたる場所ですかね」
「正門を表とするなら、裏手ではあるだろうな、赤谷ボーイ」
「なるほど、じゃあ、ここか……ダビデ寮長、雑草抜きの手伝いは必要ありませんか」
「ボランティアか。それはありがたい」
俺とダビデ寮長は緑生い茂った地面の陥没を見下ろす。
クレーターというのだろうか。直径30mほどの陥没に雑草が生い茂っている。
「このクレーターはなんです」
「何年か前に校内にダンジョンが出現した。その時の名残りだ」
「名残り? どういう意味です」
「ダンジョンはいつでもどこでも出現する可能性を秘めている。ダンジョンが学校内、ちょうどこの位置に出現した際、特別講義に来ていた探索者がダンジョンを丸ごと焼き払った。このクレーターはその時にできた跡なのだ」
「ダンジョン丸ごとって……そんなことできるんですか」
「普通の探索者には不可能だ。最も強い者ならば可能だった」
へえ、すごい探索者が世の中にはいるんだな。
俺もそんな風になれたらいいな。
「このクレーターでは雑草が元気よく育つ。残留したダンジョンエネルギーが未だに土壌に力を与えているそうだ、だから、抜いても抜いても雑草が生えてきて敵わない。このクレーターは力に満ちている」
「埋めちゃえばいいんじゃないですか」
「伝説の探索者の作ったクレーターだ。パワースポットとして観光資源になる。なんとか雑草を全部抜いて、いい感じにしたい━━というのが経営層の判断だ」
ただのクレーターじゃないと言うわけか。
それでダビデ寮長に除草の任がまわってきていると。
「任せてください。毎日コツコツやればいつかやり遂げられますよ」
「赤谷ボーイ……そうだな、共に頑張ろう」
雑草抜きはなかなか体力を使う仕事であった。
軍手をして根本からひっこ抜く運動は、手首の高強度トレーニングになる。
でかい雑草は腰ではなく、背筋を使うことを意識して抜くことで楽に抜ける。
草を抜くだけなのに、なかなか奥が深い。多くの学びがある。
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【本日のポイントミッション】
毎日コツコツ頑張ろう!
『雑草抜き』
英雄高校の裏手で励む 20/20kg
【報酬】
2スキルポイント獲得!
【継続日数】15日目
【コツコツランク】シルバー
【ポイント倍率】2.0倍
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夕方になり、ミッションを達成した。
額に滲む汗を拭い去る。
『基礎技量』を3つ持っているから力のコントロール自体は可能だが、その分、パワーを発揮する時に意識的に力を込めなくてはいけない。外周より楽だったが、力を込めるという作業を1時間ほど繰り返していたので割と疲労感がある。
ダビデ寮長へ別れを告げ、ひと足先に寮に戻り、気持ちのいい汗をシャワーで流す。お待ちかねの割り振りタイムと行こうか。
━━━━━━『スキルツリー』━━━━━━━
【Skill Tree】
ツリーレベル:1
スキルポイント:2
ポイントミッション:完了
【Skill Menu】
『基礎体力』
取得可能回数:4
『基礎魔力』
取得可能回数:4
『基礎防御』
取得可能回数:5
『発展筋力』
取得可能回数:2
『基礎技量』
取得可能回数:2
『基礎知力』
取得可能回数:5
『基礎抵抗』
取得可能回数:5
『基礎敏捷』
取得可能回数:5
『基礎神秘』
取得可能回数:5
『基礎精神』
取得可能回数:5
『引きよせる』
取得可能回数:1
『とどめる』
取得可能回数:1
『曲げる』
取得可能回数:1
【Completed Skill】
『応用筋力』
取得可能回数:0
『基礎筋力』
取得可能回数:0
『かたくなる』
取得可能回数:0
『やわらかくなる』
取得可能回数:0
『くっつく』
取得可能回数:0
『飛ばす』
取得可能回数:0
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筋力のコントロールはだいぶ満足できる感じになってきた。
技量はまだ足してもいいが、優先順位はひとつ落としておこう。
というわけで今回は『基礎魔力』と『引きよせる』を解放することにした。
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【Status】
赤谷誠
レベル:0
体力 100 / 100
魔力 100 / 200
防御 0
筋力 30,000
技量 300
知力 0
抵抗 0
敏捷 0
神秘 0
精神 0
【Skill】
『基礎体力』
『基礎魔力』×2
『基礎技量』×3
『発展筋力』×3
『かたくなる』
『やわらかくなる』
『くっつく』
『飛ばす』
『引きよせる』
【Equipment】
『スキルツリー』
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ステータスはこんな感じである。
筋力以外のステータスも少しずつ数字が増えてきた。
『基礎魔力』をとったのは、アクティブスキルの増加のためだ。
俺は想像力が乏しいので、実際に触って、使って、確かめないとスキルがどういうものなのか理解することができない。スキルを複数使うためにもMPは多く確保しておきたい。
次に今回解放したアクティブスキル『引きよせる』の検証をしよう。
このスキルは何ができるんだい。教えてごらん。
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『引きよせる』
アクティブスキル
手元に物体を引きよせる
【コスト】MP 10
運動法則を見つけよう
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「スキル発動━━『引きよせる』」
マグカップを引き寄せる。
なかなかの速度でこちらへ吹っ飛んできた。
慌ててキャッチする。わりと危ないぞこれ。ちゃんと受け止めないと。
引き寄せられる限界サイズは『飛ばす』の時と同様に、おおよそマグカップサイズが限界だとわかった。
「それじゃあ、行くか、相棒」
俺は手のひらサイズの人間を撲殺するのにちょうど良さそうな石を片手に、訓練棟へ足を運んだ。擬似ダンジョンでポメラニアンを探す。
「ぽめえ!」
しばらく徘徊すると、ポメラニアンの群れに遭遇した。
数は3体。いや、おおいな。
第一のポメラニアンが突っ込んでくる。
俺は相棒の鈍器を『飛ばす』で発射する。
ダンジョンポメラニアンは砕け、光となった。
第二のポメラニアンもやってくる。
「戻ってこい!」
石を『引きよせる』でこちらへ飛ばす。
だが、かなりの速度だ。当たれば俺が砕け散ることになる。
俺は石が完全に俺へぶつかる前に再度『飛ばす』を発動した。
『飛ばす』は手元にあれば、”実際に手に触れていなくても飛ばせる”。
手元判定はおおよそ1m前後だ。
石が手のひら1m先まで戻ってきた途端、今度は逆方向の見えざる力が働き、勢いよくポメラニアンへ向かっていく。命中。
「やった! 成功だ!」
やりたかったコンビネーションに成功し、嬉しさが爆発する。
よし、これで第三のポメラニアンも打ち砕いてやる。
と思ったのだが、石が炸裂して、パラパラになってしまった。ダンジョン内に落ちていたただの石だ。耐久値に問題があったのか。
「ぽめえ!」
「くっ、『飛ばす』!」
空気を飛ばすことで、噛みついてきたポメラニアンを牽制して押しかえす。
地面に落ちる前に『くっつく』をかけておいた。
背中から落下したポメラニアンは、身動きが取れない。
俺はへそ天しているポメラニアンへ刃こぼれした魔法剣を振りかぶり「パワーぁぁあ!」と叩きつけとどめを刺した。経験値はきっちり回収しておいた。
「ふぅ。うまいこと3体同時でも倒せたが……」
俺はへし折れた魔法剣を見やる。
さんざん乱暴に使ったせいでもう使えそうにない。
砕け散った石の破片も視界に映る。
「壊れない武器が欲しいな」
武器を買うのには費用がかかる。出費はできるだけ避けたいが……いつまでもボロボロの剣や石を武器にするわけにはいかない。
ここいらでスキルを踏まえた上で良さげな武装を探してみよう。
いい感じに質量があって、ダメージの出そうな物。
あと『飛ばす』に対応しているといいな。あと腕力を活かせたら尚いい。
戦術が決まってきたので訓練棟のウェポンショップで探してみることにした。
俺はスマホで学園アプリを開いて、英雄ポイント━━学園通貨━━の残高を確認し、擬似ダンジョンをあとにする。良い武器が見つかればいいのだが。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
こんにちは
作者のファンタスティック小説家です
実は本日2022/12/20『俺だけデイリーミッションがあるダンジョン生活』という書籍をファンタジア文庫さまより刊行させていただきました。
明るく痛快な現代ダンジョン物語となっております。
電子書籍もあります。もしよかったら読んでみてください。
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