4ー②
「biotopeって言うのはね、人工的に水場の自然を再現したものよ。屋外に設置するから光も温度も全て自然任せなの!」
「照明は太陽の光そのままだから植物はグングン伸びるし、外から虫やカエルなんかも集まって来て面白いんだよ」
「あ、もしかして『豪腕RUSH』でやってるやつ?」
礼は、日曜の夜に放送しているテレビ番組を思い出した。同番組では都会の建物で屋上にビオトープを作るという企画を行っている。
「あんなに大がかりじゃないけどね。屋上が使えたら、ワタシもあのくらいやりたいけど」
と、言いながらコメットは素焼きの植木鉢に植えられた植物をトロ舟の中に配置してゆく。
「何それ?
「違うわよ。これはルイジアナ・アイリス!日本語では……ハナショウブ?だったかしら」
ルイジアナ・アイリスは、その名の通りアメリカはルイジアナ州原産のアヤメ科の植物である。菖蒲の花が咲く季は5月。来月にはビオトープを彩る花が咲くことだろう。
「水草じゃない植物も育てられるのがビオトープの面白い所だね。水草も水上葉を楽しめたり!」
「すいじょうよう?」
「コレの事よ。礼ちゃん」
背後から掛けられた声の主は志麻だった。 その手には何やら鉢植えの植物がある。
「志麻さん!何です?その草」
「あら、これは礼ちゃんも知ってる水草のはずよ?というか、あなたの水槽にも入ってるわ」
見慣れない章体を見て困惑する礼。見たところ有茎種の様だ。ならばアマゾンソード、クリプトコリネとアヌビアス・ナナは違う。残る選択肢はルドウィジア、アンブリア、そしてウォーターウィステリアの3種。
「もしかして、ウィステリアですか!?」
「ご名答。 全然見た目が違うでしょ?」
礼は選択肢の中から色と形が近いものを選んだが、当たった。水草として売られている水生植物には、水中と陸上の双方で生きられるものが多数おり、その殆どがそれぞれの環境に適応した形に姿を変える。これが水中葉と水上葉だ。
「熱帯には雨期と乾期がある所も多いから、水が増えたり少なくなったりした時に変化して対応するんだよ」
と、唯。
「アナカリスやバリスネリアみたいに水上葉にならない水草もあるわよ。……はいコメットちゃん、コレとコレね」
志麻は手に持っていたの水上葉ともう一つ、ロゼット型の植物を手渡す。
「サンキュー志麻サン!これでワタシのビオトープも華やかになるわ!」
「こっちのホウレン草みたいなのは?」
「それはエキノドルス・ルビン。アマゾンソードと同じエキノドルスの仲間で、水上葉にして育てると白くて可愛い花が咲くわよ」
エキノドルスは熱帯に生息する、オモダカ科の植物である。志麻の言うとおり水上に葉が出る状態で栽培すると、ランナーと呼ばれる茎を伸ばし、そこから花が咲き、やがて小さな分身の様に子株を作り殖えるのだ。
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