第四魚 俺たちのフィールド採集

4ー1

─水槽学部・部室


 礼と唯が入ると、そこに居たのは光青ただ一人であった。


「やあ、唯に礼くん!」


「あれっ?部長さん一人だけ?しかも普通に登場してるし」


「僕が常に倉庫から出てくる変な人みたいな言い方はやめたまえ。それにコメットくんも来てるぞ!」


 光青はベランダを指さした。そういえば入部してからベランダには出たことが無かったと思いながら、礼と唯は開きっぱなしの出入り窓から外へ出た。


「あ、コメちゃん居た!」


「オイッス!コメっち!」


 二人の視線の先には、トロ舟と呼ばれる本来はセメント等を混ぜるのに使うプラスチック製の四角い箱形容器に、何やら細工をするコメットの姿があった。


「アヤにユイじゃない。丁度いい所に来たわね、ちょっとコレを押さえていてくれるかしら?」


「え?いいけど……」


 言われた通りにトロ舟を固定する礼と唯。すると、コメットは先端をドリルに換装したインパクトドライバーを構えていた。


「しっかりホールドしときなさい!」


 コメットがインパクトドライバーのスイッチを入れると、ドリルがギュルルルと音を立て高速回転

を始めた。


「「ゲェーーッ!!?」」


 コメットがドリルの先端をトロ舟の側面に当てると、プラスチックの壁面は刹那の内に穴が穿たれてゆく。


「何すんの!?」


「ゲッター2かよ!?」


 いきなりの事に礼と唯は思わず声を上げる。


「ソーリーソーリー。でも二人のお陰で上手くいったわ。サンキューね!あとはコレを付けて……」


 コメットは塩ビパイプに排水コックを取り付けたものを、先ほど開けた穴に挿入する。


「そして水が漏れない様に隙間をコーキング剤で埋めたら、乾くまで待つの。そしたら排水設備はOKね」


「そもそも何作ってるの?」


「トロ舟に水を入れるって事は池?いや、ビオトープか!」


「Exactly!ユイ、正解よ!!」


「びおとおぷ?」


 いつもの様に、礼は知らない単語を聞いて頭上に疑問符を浮かべる。

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