第007話 "普通"の陰陽師計画
「それはそれとして力が目覚めたのなら陰陽師としての講習を受けてみますか?護身にもなりますし。ただ、私は仕事と光明の方で手が空いてませんので陰陽師協会で開催している講習になりますが」
「母さんも随分離れてるから教えてるのに向かないしねぇ」
説教は終わったらしく、ここで父さんから提案があった。
今日思い知ったことだけど、俺は陰陽師に関して知らなさ過ぎる。これでは今日のように重大なミスをしてしまう可能性がある。そうならないために教育を受けられるのは願ってもないことだ。
「ああ、それはいいな。教えてもらいたいな」
だから俺はその提案に乗ることにした。
ひとまず力に目覚めたという
目立たない陰陽師生活。
これなら普通の幸せと呼べるはず。うんうん、間違いない。
頑張って普通の陰陽師を目指すぞ!!
「それでしたら早速明日陰陽師協会への入会手続きしましょう。それと、後天的に霊力に目覚めた人のために陰陽師が基礎を教えてくれる講習に参加できるように連絡しておきますよ」
「おおマジか。ありがとう父さん」
「いえいえ、これくらい父として当然のことです」
決意を新たに嬉し気に感謝すると、父さんは胸を張って誇らしげに言った。
まさかそんなに早く手続きしてくれるとは思わなかった。
勉強するのは早ければ早いほどいい。
「そういえば講習ってお金かからないのか?」
ただ……ふと不安になる。
ウチは貧乏だ。
そんなお金あるのだろうか。
「ああ。そのことなんだがな……」
父さんが真剣な表情になって言い淀む。
―ゴクリッ
俺は思わず喉を鳴らした。
「なんと無料なんです!!」
父さんはにっこりと笑って言い放つ。
「はぁ!?」
「いいですか秋水君。講習は無料なんですよ無料!! 凄いですよね!!」
「さっきの溜めは一体何だったんだよ!!」
俺が驚いた顔をしてすれば穏やかな見た目とは裏腹にテンション高めに話す父さん。おれは思わずツッコミを入れた。
「秋水君の驚く顔が見たくてね」
「全くもう勘弁してくれよ……」
「ふふふっ。だから思う存分学んできてください」
茶目っ気たっぷりに言う父さんに苦笑いを浮かべたら、父さんは面白そうにケラケラと笑う。
気を遣うなってことか……。
「はぁ……分かったよ」
俺はため息を吐いて頷いた。
父さんには敵わないな。
「それじゃあ兄さんが基礎を収めたら一緒に任務に行けるんですね!!」
話が終わると、空気と化していた光明が嬉しそうにはしゃぐ。
こいつと俺は年が四つ離れていて、中学生になっても未だに兄離れできない可愛い弟だ。
父さん似の灰色っぽいサラサラの髪の毛と、見た目が母さんに似て線の細くて、まるで女の子みたいな容姿だから猶更可愛がってしまう。
「大分先になるでしょうけど、それも可能でしょう」
「やったぁ!!」
光明の言葉を父さんが肯定したらさらに嬉しさを爆発させる光明。
簡単仕事なら俺が手伝っても目立たないはずだ。
それくらいなら良いだろう。
嬉しそうにする光明をがっかりさせるわけにもいかないしな。
「はははっ。俺も光明と一緒に仕事が出来るのを楽しみにしてるよ」
「うん」
俺が期待に応えるように返事をして光明の頭を撫でると、弟は嬉しそうに笑うのであった。
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