第96話レオのライオニア 初めての天丼と鴨そば
レオのライオニア
十二星座団の中で一番の食いしん坊であり、食を楽しむ事に重きを置き、八百万が大好きな女の子である。
ニーアやクリスタに進められるがまま、十二星座団の帰還の宴は八百万で行われ、その日以来多くの団員達が八百万に通う様になった。
自分達がいなかったせいで、八百万のメニューの中でも人気なラーメンや天丼を食べた事がない事を残念に思っている。
他の客が日頃八百万で舌を鍛えても、それでも八百万は次の日には新しいメニューと共に新鮮な驚きを与えてくれる。
スタートダッシュの遅れた、ライオニアは他の客がもう慣れて驚かない様な事にも慣れていない為新鮮に驚くのだ。
大の肉好きで、肉なら大体塩で焼けば美味いと思っていて、料理とは誰が作っても大して味も変わらず手間ばかりかかって、その癖に味の感動の少ないものだと思っていた。
そんな料理なんて大したものじゃないと思っていたライオニアに衝撃を与えたのが八百万だった。
到底塩を振っただけなどとは言えない味付け!絶妙な火の入り具合!素材の味を生かし、何倍にも膨れ上がらせたかのような調理の味に驚愕して畏怖を覚えた。
素材の味わいを最大限に生かす、これが一番うまい食い方だと、ある意味で究極的に理解していたライオニアの知らない世界、人が手を加える事で味を損なう所か、人間が手を加えたが故に、素材のみの力だけでは到達できない味の終着点、いままでこんな料理をする人間などいなかったのだ。
料理に希望をもっていた時期もちゃんとある、人の手の加える料理でしか到達できない世界があると信じていた時代もちゃんとある。
その上で、人が手を加えるという事は、美味い食材の前では蛇足にしかならないと日々知らされる思いで獲物を味わってきた。
だが答えはここにあったのだ!
素材だけでは出せない境地、人類の手が加わってこそ出せる味の世界の存在。
そんな料理を当たり前の様に出す店、八百万!
野菜も魚も嫌いじゃないけど、個人的には肉が大好きなライオニアの前に出されたものは・・・・・・・・なんの変哲もない天丼だった。
天丼!
揚げた野菜や魚、だが普通の揚げ物とは全然違う。
サクサクの食感なのに!衣の独特のサクサクの食感に何故ふわふわとした軽さを感じるのか!?そして素材からの味わいが広がり、濃いめの甘いタレと絡まると理性が飛ぶ!
エビ!キングシュリンプの巨大なエビが四本!思いっきり口にほうばっても二口三口と食べれるエビが四本!むっちりぷりぷりのエビの強い存在感!もう理性などとはいっていられない!止まる事無く米を掻っ込み!味わう!
そして野菜!これが美味い!まずはナスの天ぷら!味噌田楽でも美味いが、甘いタレとしっとりした身は油を吸って私の知らない味に進化している!ナスだけではこんな味はしない!脂とタレ、それとナスの独特のとろっとした食感が米を誘惑する。
魚!キスっていうのか?小魚なんかの名前なんか一々覚えていない!小さい癖にふわふわっとした身!これがぎちぎちに詰まってる!小さいからこその存在感なのか!?
イカ!あの透明な奴!あの気持ちの悪い奴!これがくにくにとして独自に甘味まで放つ!口の中は甘味でいっぱいなのに、ちゃんとタレの甘味!イカの甘味!米の甘味!これらを鋭敏に仕分けした挙句、一まとめに合体して喉奥に消える快感!!
どれだけ小さくても小骨を舌で仕分けできるように、味わいが違うだけで甘味を何種類も仕分けする舌の鋭さ!
いんげん!この緑の棒みたいな野菜になんの意味があるのか考えた事はあるだろうか?しゃくしゃくとして青さを感じつつしっかりと美味い!生で食うより全然美味い野菜たち!何が生とちがうのか!?あげたからなのか???
かき揚げ!野菜をいろいろ細かくして小エビなんかもまぜた揚げ物!これがまたうめぇ!!!カリカリとしっかり咀嚼して、また米を食う!
ホタテ!ジュエルシェルとかいう貝!うひょひょひょ濃い海の香を味わいつつ、しっかりとした身が口の中で暴れる!
天ぷらの一つ一つが米とあう!天ぷらも美味いが米も美味い!なんでも受け入れ自分の土俵に引き込んで喉奥に消えていく!
この米を喉を鳴らして、んぐんぐと飲み込む快感!そして味噌汁で流し込み、漬物をちょいと一つまみ!このトライアングルから抜け出せない!
卵の天ぷらなんかも入ってやがる!半分ぱくりと食うと、とろ~っと黄身が出て来た!
ちょっと前なら、この時点でぎょっとして、おい!卵中身生じゃね~か!なんていったもんだが、このトロトロの黄身!これが美味いんじゃぁ!
んでもってカボチャ!かぼちゃはおかずじゃねぇ!デザートじゃ!かぼちゃの煮つけも美味いけども、甘くて完全にデザートじゃ!!
ふんっと鼻をならしてかぼちゃを食うと、これが意外と悪くないんかい!?ほんのり甘いのとタレでしっかりおかずしとるわい!喉にひっかかる感じもわるくねぇ!
油と衣で揚げただけの野菜と魚が美味すぎる!なんじゃいこれ!テーマパークなんか!?
大根おろしとしょっぱめのつゆもまたうんまいじゃ!
気がつけばエビの尻尾までむしゃむしゃと食い、もっと歯に引っかかると思ったら、香ばしくて美味いんかい!と驚愕する。
回りを見る暇なんかない!
もう食う事以外考えれない!
レオの野生が飛び出し、体をオーラが纏う。
斗真の兄ちゃんはようわかっとる!エビも一本じゃ全然足らんのじゃ!!二本三本!味わって四本目でやっと落ち着くんじゃ!
いか!透明なくせに、なんでこんなに美味いんじゃ!シャキシャキのくにくにして甘くってもう弾力が心地いい!
ホタテ!こいつがまた贅沢なんじゃ!口いっぱいにいれるともう、あっはっはっはっは!!!
野菜!かき揚げ!これも強い!否どれも弱い奴なんていない!玉ねぎと人参の旨味を感じ、小エビの香と食感もザクザクていい!
箸をもって踊りたくなる!
添えられている味噌にナス天をつけてみると、これまた風味も色々変わって美味い!オタクはナス食わねぇだろだと!?けつから手突っ込んで奥歯ガタガタ言わすぞ!!
好き嫌いを誇らしげにドヤ顔で語る奴の意味がわからん、そいつらはただの敗北者じゃけぇ!味を知らんなら黙っとれや!!!
かぼちゃは自然と口直しにもってくる。
確かにばくばく何個も食う感じでは決してない、この一切れ!この一切れ入っている甘めのかぼちゃが、一切れって所がいいんだ。
そうして最後の方には大きめのネタや種類の多いネタが自然と残って、贅沢に反芻する様にまた味を確かめ、最初の怒涛の勢いとは違い冷静に味わうと、もう満足する。
というのは日本人の胃袋で考えたらの話であり、八百万の丼の中でも天丼は大きめの丼でネタも沢山乗っている。
でもここは異世界!ただでさえ大食いの異世界人に美味い天丼はいっぱいだけだともの足りない!
お茶碗だと二杯が限界なのに、回転寿司だといつも以上に食べてしまう現象である。
だがここは八百万、安くはらいっぱい出しての八百万である。
天丼をもういっぱい頼む事も可能であれば、〆としてざるそば、温そば、鴨出汁のそばと追加注文できるのである。
普通のざるそばももちろん美味いのだが、八百万の鴨そばがこれまたバチクソに美味い!
脂身と肉の境がしっかりとわかれている鴨肉にぎゅんぎゅんぎゅううううううううん!そいや!!と感じる鴨の濃いい出汁!そこに香りのいい蕎麦の味がズルズルと鼻を抜ける。
ひょ~~!!うひょひょ~~~!!えへへえへえへ!!!
ここに天丼のかき揚げや、エビなんか残して乗せても、ブリバリにうんまいのだ!
程よい満腹感になった胃に、濃厚なのにするすると入ってくる蕎麦!鴨の肉!みりみりと肉肉しい部分に歯を立てながら、じゅわわんと溢れ出る脂に濃厚なぷるぷるの皮の味!
そしてネギ!七味!と味を変え!、ネギお前蕎麦に必須やないかい!もうずっと側にいて蕎麦だけに・・・・・と死にたくなった所でぴりりと七味のビンタが飛んでくる!ありがとうございます!!!!!
そうしてズルズルとズルズルと蕎麦を食べてやってくる満腹のサインと俺は私は天丼と蕎麦を食ったと言う、山にでも上ったかのような解放感!そして店を出る時に吹く風は、蕎麦を食い、じんわりと少しかいた汗を冷やし涼しく吹き抜けていく。
レオのライオニア!!!私はいま強い!強い生命を感じてここに立っているのだ!!!
そしてまた明日も八百万の飯を食らう!必ずだ!!
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