第27話・獣戦士

 辺境都市ロジエにある教会。俺は早速ルナ達と共に中に入り鑑定用紙を銀貨1枚で購入する。


「ここは教会だよね」

「まあな」

「もしかして僕の能力を知りたいの?」

「端的に言えばそうだ」


 俺はルナに鑑定用紙を渡して女神像の前に向かわせる。その時にアシュリーさんが不思議そうに喋った。


「グレイ様は彼女に一目惚れしたのですか?」

「うーん、まあそうですね」

「そうですか……」


 何か思うところがあるのかブツブツと言っているアシュリーさん。俺は少し冷や汗を流しながらルナを待っていると彼女はピョンピョンと嬉しそうに跳ねながらコチラに来た。


「ご主人様!」

「おお、どうだった?」

「かなりいいと思うよ!」


 俺はルナから鑑定用紙を受け取り中を見てみる。すると書いてあった事は……。


・名前、ルナ

・性別、女性

・年齢、10歳

・加護、獣戦士

〈スキル〉

・両手斧術〈レベル1〉

・体術〈レベル1〉

〈パッシブスキル〉

・危険探知〈レベル1〉

・怪力〈レベル1〉

〈祝福〉

・獣魔の本能


(ほぼ予想通りだな)


 まず両手斧術は名前のまま大きな斧の熟練度を示すスキル。ここは片手剣や両手剣と同じなので省く。


 体術は基本的に殴ったり蹴ったりする時に補正が入るスキル。もちろんウェポンスキルもあるので使い勝手がいい。まあ、武器を使ってないのにウェポンスキルが使えるのには突っ込んではいけない。


 パッシブスキルの危険探知は自分に危険な相手が近付きてきた時にさっち出来る能力。ゲームでは敵の不意打ちを対処する時に使えた。

 怪力のスキルは身体強化の下位互換で攻撃力が上がるパッシブスキルだ。


(そしてルナしかもたない獣魔の本能)


 ルナが持つ獣魔の本能は自分の能力を1.5倍になるぶっ壊れの祝福。このスキルのおかげで獣戦士なのに総合力が上位職を上回るステータスを持つ。

 

「ご主人様、どうかな?」

「かなりすごいと思うぞ」

「おお、良かった!」


 ニコニコと笑っているルナを見てホッコリしているとアシュリーさんがため息を吐いた。


「グレイ様の将来が心配です……」

「アシュリーさん、何か言いましたか?」

「いえ、なんでもないです」


 ぎこちない笑顔を浮かべているアシュリーさんを見て俺は頭を傾ける。


(そこまで気にしなくてもいいか)


 なんか引っかかるが俺は長椅子から立ち上がりルナの方を見る。彼女は嬉しそうにしているので俺は左手を彼女に向けて差し出す。


「ご主人ー!」

「お、おう……」


 ルナはコチラの思惑に気づいたのか俺の左手を握った。その時に誰かのお腹が鳴った音が聞こえる。


「あうう、お腹が空いた」

「あー、ならご飯を食べに行くか」

「ええ!? ご飯を食べさせてくれるの?」

「そりゃ当たり前だろ」


 メインヒロインのルナ相手に飯抜きとか、前世の紳士達かり罵詈雑言を受ける事になるだろ。俺はその事を思い出し、苦笑いを浮かべているとアシュリーさんが一つ頷く。


「では移動しましょうか」

「そうですね」


 アシュリーさんの言葉を聞いた俺はルナと手を繋いで教会から出ていく。


 ーーーー


 教会の近くにある大衆食堂のキリン亭。ここからいい匂いがしたので釣られたように中に入り食事を注文したのだが……。


「おかわり!」

「おお、まだ入るのか……」


 既に5人前ほど食べているルナがおかわりを頼んでいるのを見て俺は苦笑いを浮かべる。ゲームの時の記憶でルナが大食いなのは知っていたがフードファイターみたいな感じでモグモグとステーキにかぶりついた。


(前世の大食い番組を見ているようだ)


 運ばれてくる料理をブルドーザーのように平らげるルナを見てアシュリーさんは硬直。すぐに復活したが目が点になっており他のお客さんも驚いた表情を浮かべていた。


「さ、流石獣人ですね」

「いや、比較的大食いの獣人でもルナは食べる方だと思いますよ」

「ですよね……」

 

 男性獣人でもここまで食べる人は少ないはず。俺は前世の記憶を思い出しながらアシュリーさんと話す。


「ご主人! もっとおわかりしてもいいかな?」

「ああ、好きなだけ食べていいぞ」

「やったぁ! ご主人大好きです!」


 可愛い狐娘に大好きと言われて思わず頬が緩みそうになるが、それよりも店員さんの目がやばい。


(小さな少女がここまで食べているから驚くよな)


 ルナが奴隷になった理由は住んでいた村が不作で食べる物がなくなって売られた。まあ、普通に考えて自分の子供を売る親はクソだと思うが食費的に考えると少し同情してしまうのは何故だろうか。


(仕方ないのか?)


 他の子供や村の人達の数倍は食べるルナを置いておくと食糧難になる。ならまだ生きられる可能性があり両親にもお金が入ってくる身売りの方がいいのか……。

 俺はそんなことをグルグル考えているとルナが笑顔になりながら口を開く。


「このお肉は美味しい!」

「そ、それはよかった」


 手に持ったフォークをお肉にブッ刺してワイルドに食べており、俺はカップに入った水を飲みながらアシュリーさんと共にルナが食べ終わるまで待つ。


「アシュリーさん、お金は大丈夫ですか?」

「ええ、その辺は大丈夫ですが……」


 大衆食堂は安くて美味しいのが魅力。逆にお高いところに行っていたら大変な事になっていたと思い冷や汗が流れる。


(そう考えるとルナの食いぶちを考えないとな)


 実家のアーセナル家に帰った時に食べる物がなくなるとマズイので、俺はカシャ村での動き方を考え始める。

 

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