第118話 ゆるい「ひとりSFまつり」

 今回は僕の好きな分野(?)、SFと幻想物語。

 このところ、最近は定期的なSF作品の映画や動画などの鑑賞を心掛けている。ちょっとまえには筒井作品をオンパレードで読んで視てと続けていた。

 そう初心に返るべく、そしてちょっとした「ひとりSFまつり」である。そして今回は筒井作品に加えて眉村作品も吟味しながら再確認と、さらにもっと加えて最近の流行の小説原作の動画作品も合わせてランダムに鑑賞している。

 では本題。眉村卓さんの小説はジュブナイル版のものを含めて、当時ほぼ網羅して揃えていた。

『ねらわれた学園』。これは僕がSFを好きになるキッカケとなった作品のひとつで、筒井康隆さんの『時をかける少女』や『七瀬ふたたび』と同じぐらい何度も視て、読んだ作品である。映像作品は1970年代後半から1980年代の前半というバブル以前の昭和の作品である。

 薬師丸ひろ子さんの『ねらわれた学園』は大林作品。ちょっと慣れていないとクセのある雰囲気だ。尾道三部作とおなじテイスト、味を感じる(好きな人にはたまらない雰囲気だ)。カメラをキャメラと言いたい世代の人だ。ONJの『ザナドゥ』の雰囲気を狙ったかな? と思わせる演出効果が多い。プロットとシナリオとしては、まあ原作に近いものだ。進学塾を隠れ蓑にした異星人ミュータントの支配を進める侵略者にユカが耕二の協力の下に勧善懲悪として戦うという部分はぶれずに原作のままだ。


 近年リニューアルされたもの、アニメ作品だったが、声を渡辺麻友さんと花村香菜さんのものは、とても面白いけど、何もかもアイテムも設定すらも違うので、もうタイトルも変えて、原作ではなく原案とする方が適切かも知れないという気がした。見終えてみると、おじさんの頭では『ねらわれた学園』というよりも『時をかける少女』のほうが雰囲気的には近かったかな。しかも敵は進学塾ではなく、生徒会に変わっている。ほぼ原作唯一の登場人物となった敵の大将京極はとてもいい人になったし、手先の高見沢ミチルはいない。

 うーん、面白いストーリーだけど、どうなんだろうなあ。タイトル変えた方が売れたかもね。この作品も藤沢や鎌倉が舞台で見慣れた風景がここかしこにあって楽しかった。珊瑚礁のカレー屋の近くの134号線や音無川の近くの江ノ電、そしてシーキャンドルの展望デッキといった場所だ。


『ねらわれた学園』は他に原田知世さんや新田恵利さんの主演でテレビドラマ化されてると言うことだが、僕は見たこと無い。同様に『時をかける少女』も南野陽子さん主演でテレビドラマ化されているそうだ。

 

 僕の読んでいた時代はSF御三家と言えば、小松左京・筒井康隆・星新一というのが定番だった。とにかく流行った。僕の中では、この三人では星新一が一番で、小松左京が僕の好みからはもっとも遠かった。

 そしてショートショートの神さまが星新一だが、掌編小説の星と言えば当該の眉村卓だったと思う。今では随分眉村作品は絶版になったものも多いと解説書などで知った。

 まあ、涼宮ハルヒがSFの定番となった今世紀では、納得は行くのだが、おじさんとしては、ちと悲しい。でも過去作品と同世代の僕が、現在の作品である涼宮ハルヒのメディア化した作品に、どこか筒井作品に通じるものが感じられると思うこともあるので、どこかできっと理解するための接点があるのだろう。SF作品の系譜としてだ。勿論僕の勝手な感想だ。実験的で、何度もプロットと時間の壁を行き来する物語は、そう、ほぼ同じ系譜だ。これは我が町が舞台の「青春ブタやろう……バニーガールがどうとかこうとか(長すぎてタイトル全部知らない・笑)」も似た感じだ。

 そんな時代の流れに反旗を翻し(ちょっとオーバーだな・笑)、今こそ眉村作品なのだ、とばかりに配信なども含めて結構仕入れて楽しんでいた。

 今回のこの動き、僕にとってのSF作品への憧憬と原点回帰の良い刺激になった。新旧の入り混じったコンテンツの中で僕のSF愛って今もあるんだな、ってあらためて感じてしまった(笑)。そして新しい作品を見る度に分析癖が出てきてわくわくする。困ったおじさんである(大笑)。


 最後にふたつのハートウォーミング作品を紹介して今回はお開きにしよう。眉村さんの生活をおおよそドキュメントで編んだ現実作品『僕と妻の1778の物語』、お気に入りの作家の晩年と温かな愛を感じられるもの、今回はこれで眉村作品を着地させてみよう。

 円盤と文庫本の両方を入手して眉村卓という面白いおじさんをあらためて感じる。ここに出てくるSFしかかけない不器用な小説家の牧村と銀行員で妻節子の心温まるハートウォーミング物語である。

 なにが良いのかというと、この作品に登場するロボット。まさに最近は見なくなったが僕の掌編小説にも出てくる箱形ロボットである(笑)。そして火星人やパラレルワールド、スーパージェッタ―が乗っているジェット戦闘機のような単座式宇宙船。まさに僕が青春時代に読んだSF小説そのものである。古い(笑)。ノスタルジックなSFをひとつの題材として受け入れるなら、そしてその書き手の妻への愛に感銘を受けたいならこのドキュメンタリー作品をおすすめするしだいだ。

 そして新しいもの、作品の楽しみ方として付け足しておくと、平井和正の『幻魔大戦』の醍醐味を柔らかく現代風にしたようなのが『私の幸せな結婚』。これもハートウォーミングではあるが、同時にSF思念大戦劇である。毛色としては『幻魔大戦』や『バビル二世』、『地球へ』、『サクラ大戦』などと一緒のグループである。でも柔らかさでは群を抜くのでこれもオススメである。ではまた。



『ねらわれた学園』角川・東宝映画 監督大林宣彦 主演薬師丸ひろ子 1981年

『ねらわれた学園』松竹映画 監督中村亮介 声の主演渡辺麻友・花澤香菜 2012年

『僕と妻の1778の物語』東宝映画 監督星護 主演草彅剛・竹内結子

2011年

『私の幸せな結婚』 原作顎木あくみ 監督 久保田雄大 2023年

『幻魔大戦』 原作平井和正 監督りん・たろう 1983年

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