第11話 ナイアガラ・サウンドとレーベル

 マッカートニーを除けば、僕はナイアガラサウンドをよく聴く。もう説明がいるだろうな。同年代の人は、「怪盗ルビイ」、「風立ちぬ」、「探偵物語」の作曲、編曲者と言えば通じる大滝詠一さんのつくる音楽とその特性だ。

 広義で言うナイアガラサウンドもある。一見、そういうグループ名のように聞こえるが、芸能界で言う●●ファミリーみたいなもんで、個々で活躍する大滝詠一さんの主催するレーベルに集まった音楽集団を指す。

 その中でも僕は大滝さん本人と山下達郎さん、佐野元春さん、杉真理さん辺りをよく聴いた。アルバムで挙げると、大滝さんは『ア・ロング・ヴァケーション』、『イーチ・タイム』、佐野さんは『サムディ』、『バック・トゥー・ザ・ストリート』、『ハート・ビート』、『ヴィジタ-ズ』、『カフェ・ボヘミア』、杉さんは『オーバーラップ』、『スターゲイザー』、『ミストーン』、山下さんは『コージー』、『FOR YOU』、『BIG WAVE』、『MELODIES』などである。ほぼ一九八〇年から八〇年代の中頃のモノである。山下さんはその後も結構な頻度で多くのヒット曲を世に送り出している。妻の竹内まりやさんとともにポップス界のおしどり夫婦の異名を持つ。

 曲自体は大滝さんなら「恋するカレン」、「君は天然色」、「ペパーミントブルー」、「ハート♡仕掛けのオレンジ」、「A面で恋をして(佐野・杉両氏とのコラボ)」などだ。佐野さんは「サムディ」、「スターダスト・キッズ」、「ガラスのジェネレーション」、「トゥナイト」などだろうか。杉さんは「CATCH YOUR WAY」、「バカンスはいつも雨(レイン)」、「ガラスの恋人」、「ロンリーガール」などがお気に入りだった。

 山下さんは「BIGWAVEのテーマ」から知ったのだが、その後いろいろと聴いた。「高気圧ガール」、「ライド・オン・タイム」、「ラブランド・アイランド」を聴いた。九〇年代以後も「ドリーミング・ガール」、リバイバルされた「クリスマス・イブ」なんかはいまでもたまに聴きたくなる。

 他に伊藤銀次さんや大滝さんの古巣である「はっぴいえんど」というバンドの人たちも聴く。細野晴臣さんはYMOで有名だけど、もとははっぴいえんどである。作詞家の松本隆さんもこのバンドのドラマー。そしてギターの鈴木茂さんである。通称『ゆでめん』というアルバムが人気のアルバムだ。

 ちなみになんでナイアガラというのかについては「大きな滝」だからである。そう大滝さんがつくったレコードレーベルの名称から来ている。今では『音の壁』と言われるエコーとリバーブの固まるサウンド技術を総称して「ナイアガラサウンド」と呼んでいる。その特徴を持つ人々もナイアガラサウンドの人々と言われる。

 行くあてのない彷徨い人だった僕の心を満たしてくれた音楽。僕の青春と幸せの詰まった音楽はマッカートニーとこのナイアガラにあるのだ。いまも大切な宝物である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る