第7話 しょっぱい


「「いただきます」」


静琉はチャーハンと卵スープを作ってくれた



けど、しょっぱい…



「どう?」

「お、美味しいよ…」

「よかった♪」


こんな笑顔を見せられたら言えないでしょ


「じゃ、私も…うっ!しょっぱ!」

「だ、大丈夫だよ…」

「うぅ…」


彼女は涙目になって俯いてしまった


「大丈夫だって、ほら!食べれるから!」


そりゃ火は通ってるから食べれるのは当たり前だろ


「そりゃ…火は通ってるからね…」


俺が思っていた事をそのままボソッと呟く彼女の目は死んでいる


「 ああ…こんなんじゃ私捨てられちゃう…このままじゃ都合のいい女で終わっちゃう…そんなの許せない許さない捨てられるくらいならいっそのこと…」


なんか物騒な事を言い出しそうな雰囲気なのでさすがにスルーするわけにもいかず


「そうだ!今度からはさ、一緒に味見しながら作ろうよ。そしたら大丈夫だよ」


これなら問題ないだろうと思ったんだけど、


「今度から…?一緒に味見?え?それってもう新婚さん?夫婦?…ふふ…ふふふ…」

「…………」



どうやら問題があったみたいだ





┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄


結局、卵を増量してなんとか美味しく夕飯を一緒に食べ、リビングで一緒にダラダラして

そろそろいい時間になるかな、と思った時、


「もうこんな時間だね。送るよ」

「え?」

「うん。夜道は危ないからね」

「え?帰らないよ?」

「え?」

「帰るわけないでしょ」

「……え?」

「それともなに?帰らせたいの?」

「いやいや、そういう話じゃないよ!」

「…まさか…女が…」

「だからいないってば!」

「じゃあ問題ないよね」


彼女は持ってきた鞄の中から着替えやメイク用品やドライヤー、歯ブラシなんかをガサゴソと出し始める。


「あ、これ、ここに置く分だから。足りないようならまた取りに行くから大丈夫」

「あ…はい…」


何が大丈夫かは分からないけどツッコんだら駄目だともう一人の俺が言う


「じゃあ、お風呂に入ろうか」


「なんかベタベタするし…もう…うふふ」と少し恥ずかしそうに言う静琉に俺も恥ずかしくなるけど、そこは耐えて「お先にどうぞ」と答えると、


「え?一緒に入るでしょ?」

「え!?」

「そんなに驚くこと?」

「驚きますよ!」

「今更じゃない…もう…」

「うっ…!」


少し前に俺の事を優しく抱きしめてくれて包み込んでくれた人と同じ人間とは思えない


「あ、あの…さすがにまだそれは…」

「え?まだ?じゃあいつになればいいの?」


くそっ…細かい所を聞き逃さないな…


「と、とにかく!今日はダメです!!」

「…今日は?…じゃあ明日ならいいんだ…」


揚げ足取られてる気がする…


む~…なんとかしないと…



俺はメガネを外して前髪をかきあげ、彼女の瞳を見つめ問いかける


「ねえ…静琉?」

「ひゃ、ひゃい!」


うん。効果ありそう

恥ずかしいけどちょっと大人っぽく、もっと艶っぽく甘い感じで頑張ってみることにする


「俺はね、もっと君の事が知りたいんだ」

「はぅぅ…」

「こんな急かすように、いきなりじゃなくて、もっとゆっくりと、ね?」

「は…はい…」

「もっと静琉の事を好きになれるように、って言っただろ?」

「はい…」

「だから、ね?」

「はぁ…もう無理…」

「え?…って、ちょっと…ん!」



駄目だ

どうやらやり過ぎたらしい







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