第5話『グリーンレクイエム』

 まばゆい陽光に反して、風に冬の気配を感じる。


 洗濯と洗い物を終えて少しだけ休憩をする。読書欲が戻ってきたため、『幸福論』の前に図書館の返却期限が切れてしまった小説を読み終えようとして、そこまでの休憩時間ではないので途中できりあげる。あとで期限を延長してもらえないかどうかお願いしてみよう。


 新井素子さんの『いつか猫になる日まで』と『グリーンレクイエム』を読んでいる。

 私は「創造主」が出てくる創作物が好きなので(一番好きなのは、PS2の『ボクと魔王』というゲームである。脚本が素晴らしい)『いつか猫になる日まで』を手に取ったのだが、見事に『グリーンレクイエム』の方に夢中になってしまった。

 植物に関する造詣が深く、読んでいて勉強になる。その上、「植物から見た、人間が行っている自然破壊」に関する哲学が、とても新鮮で目から鱗が落ちた。この価値観は、知識に裏打ちされていなければ生まれない物のように思う。


 なんとなく、藤崎竜先生の『サイコプラス』という漫画を思い出す。


 文体に癖があり、今でいうラノベっぽさがみられて少し面食らったけれど、物語と世界観の完成度が高く、ぐいぐい引き込まれてしまった。

 調べてみたら新井素子先生、17歳の頃にデビューされていらしたのね! 『いつか猫になる日まで』も10代の頃に執筆されたとのことで、文体の癖については納得。しかし、物語の完成度が高さに驚いた。


 このエッセイの初めに「齢三十六にして何者かになりたかった」と書いた私だが、はっきりいって、プロの作品を目にして嫉妬する事は無い。

 どっちかというと、「こんなに面白く、完成度の高い作品が世には溢れているのだから、私が文章書かなくたって良くない?」と思ってしまう。井上ひさし先生がご自身の文章教室で言っていたという「良い読者」の条件にぴったり適うタイプの人間なのかもしれない。

 ちなみに、それは決してネガティブな意味で言っているのではなくて、本物に触れてただただ感激して、子供みたいに純粋に、拍手喝采をしたくなるというだけの事だ。


 居の中の蛙、大海を知ってただただ目を丸くするという所だろうか。


「じゃあなんのためにこうやって文章を書いているのか」と問われると、再び承認欲求やら果たされなかった自己実現の問題に直面する事になるので、今は目を反らす。

 今日はまだまだ仕事が残っている。へこんでいる訳にはいかない。

「好きだから文を書いている」

 それだけのモチベーションで純粋に文章に向き合えたなら、少しは違った展開になるのだろうか。


 小説をおいて2000字ほど短編を書く。「人からどう見られるか」を気にする、『カラフル』という小説では脇役だった「かよちゃん」という女の子の話。


 人の目を気にしすぎて自分の行動を制限するのはもったいないけれど、誤解が誤解を招いて無実の罪を着せられた経験をしても、同じことがいえるのか。そんなに強い人ばかりじゃないんじゃないか、そんな感じのお話。


さて本格的に自由時間を切り上げねば。

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