第11話 表もあれば裏もある!?ダブル『凛』の日常!!(11)




タイガーズファンになったのがよかったのか、ジャージを私への頭へと乗せながら笑顔でヤマトは言う。




「うはははは!そういや、お客様なのに、なんも出してなかったのぉ~!?なんか冷たいもんでも出すわ!」


「お願いします・・・ツッコミが追い付かない・・・!」


「蒸すから、冷房も入れようなぁぁー♪」




私が頭からジャージを下ろした時、彼は私の手を引いて部屋から出ていた。


壁についていたリモコンを取ると、クーラーのスイッチを入れるヤマト。


そのまま、立派なダイニングキッチンへ向かう。


そこで新たな発見をする。




「ヤマト・・・・・家電は使えるようにしてるんですね。」




IHヒーターはともかく、冷蔵庫に電子レンジ、オーブンまで綺麗に設置されていた。


これに、冷蔵庫からペットボトルのお茶を出したヤマトが答えた。




「うははは!せやねん!家電類は、部屋とセットでついてたんや!すぐ使えるようになぁ~!」


「ええ!?冷蔵庫が!?」


「冷凍庫だけやのぉーて、保温の機能もついとるから、便利やでぇ~!風呂上がりの冷たいコーヒー牛乳と、買っておいた肉まんもホカホカで最高や!クーラーとテレビもや!洗濯機も、ルンパも、レンジも、オーブンもやで!うはははは!」





(そんな好条件の物件を安いと言うなんて!)



やっぱりヤマトは――――――――!?




「ヤマトって・・・お金持ちなの?」



「うはははは!せやから、清く正しい貧乏やって!ほら、ウーロン茶冷えてるから飲みぃ!」


「ありがとう!でもね、本当に貧しい人は、こんなに広い3LDKに暮らしてませんから!」


「そんでのぉ~凛の部屋は、あっちの部屋のどっちかや!」


「聞いてないよね、僕の話!?てか、あっちとこっちって?」




お茶を受け取る私に、変わらぬマイペースぶりでヤマトは指をさす。




「右が洋室で、左が和室や!どっちや!?」


「どっちって、見て見ないと・・・」


「ほな、右からやな!」




こちらの返事を聞かずに、ガチャッと右の扉を開ける。




「って、空っぽじゃないですか!?」




〔★一番何もない部屋だった★〕




目に映るのは、空っぽの部屋。


エアコンがあるだけで何もない。


その理由についてヤマトは・・・・




「家具はわしの分しかないからなぁ~!凛は自分で揃えてやぁ~寝袋は貸したるけど!うはははは!」




〔★寝袋の利用を申し出てくれた★〕




「いやいや!いろいろ言いたいことがありますが、寝袋はいいですから!瑞希お兄ちゃんの方に泊まるからいいです!」


「遠慮せんでぇのに~うはははは!」


「ほんっっっと!もったいないことしてますよ、ヤマト!?こんなにきれいで広い部屋を・・・物がありすぎるのもよくないですが・・・」


「せやから、凛に貸すねん!こっちにするか!?」


「いえ、やっぱり悪いですよ。ヤマトが自分でつかった方が良いような・・・」


「うはははは!ホンマ、気にすんなや!別に、金取ろうって言う話やないで!?ツレから金はとらん。」


「だったら、なおさらですよ。」


「わし的には、こっちがお勧めやで?左の和室はせめいからなぁ!」


「え!?だったら、和室でいいですよ!」


「なんや?和風派かいな!?」


「だって、服を着替えるだけの個室なら、広くなくていいですよ。和室の畳の香りは落ち着きますし・・・」


「あーわかる!和室やったら、芳香剤置かんでもええもんなぁ~!


「どういう良いですか?とにかく、和室でいいです。」


「え~!?ほんまにええんか!?」


「選べと言っておいて、嫌そうに言いますね?」


「いや、凛がええなら、わしはええけど~ほんませまいで?」


「いいですよ。」


「ほら、段ボールに気ぃーつけて着替えや。」


「段ボール?」


「せや!ここに、押し込めてんねん!」




カタン!




陽気なヤマトの声に合わせて、和室のふすまが開かれる。


目に飛び込んできたのは、茶色の箱。




「って!?なにこれっ!!!?」


「うはははは~ここ使うとなると、どけんとあかんのぉーわしの荷物!?


「このダンボールの壁をかっ!!?」




そこにあったのは、端から端まで置かれた段ボール箱。


上から下まで、隙間なくピッタリと積み上げられた段ボールの山。


辛うじて、畳が見えるのは、出入り口からA4サイズほどの足元だけ。




〔★一番物のある部屋だった★〕





「ちょっとぉぉぉぉ!?なにをどうして、こんなことしたんですか!?」


「いやぁ~リビングにあると邪魔やから、ここにまとめて入れてんねん!」


「そういう問題じゃないですよ!?なにこれ!?天井が見えないんですけど!?」


「うははは!大丈夫や!証明すれすれで積んどるから家事の心配あらへんでー!?」


「違うことを気にして下さいよっ!?ここで着替えろって!?」


「いや~木のふすまで助かったわ!障子やったら、体重かけたら破れるからのぉ~あ、戸を閉めて、もたれるようにしたら着替えられるんちゃうかな!凛のサイズなら!」


「そうかもしれないけど出来るかっ!!チェンジ!」


「うははは~!そう言うとゆーてくれて、助かったわ!今後凛が使うとなると、わしの荷物が出せへんようになるからなぁ~」


「むしろ、出していきなさいよ!?可児君を助けた時、コンビニでご飯かったって言ってたけど・・・お皿は!?」


「この中や!」


「フライパンは!?お玉はあるよね!?」


「コンビニなら、温めてくれるやん?」


「だからって、食器がいまだにこの中なの!?困るでしょう!?」


「せやから、必要のもんだけ、最初に引っ張り出してやなぁ~」


「そのまま、荷ほどきしなさいよ!」


「そのうちするわ!うはははは!」


「4か月もこのままにしてんなら、これから先も動くわけないだろう馬鹿野郎―!!」




〔★片付いている想像が出来ない★〕




「うはははは!それはそれとしてぇ~ほんまに、和室でええんか?凛専用の着がえる部屋―!?」


「くっ・・・洋室でお願いします、この野郎。」


「せやからゆーたやろう~!洋室がお勧めやって!


「自分で荷ほどきするのが面倒だっただけでしょう!?今日は無理だけど、今度一緒に片づけてあげるから!ちゃんと整理するのよ!?」


「ホンマか!?いや~おおきに!凛ならそう言うと思っとったで~!うはははは!ラッキー!




大笑いするヤマトを見て思う。



こいつは、私に引越しの荷物の整理を頼むために、着替えという口実を作って、ここに連れて来たのかもしれない。


とはいえ、ただで借りるのも気が引けたので、今回はこれで良しとした。


行き止まりの壁のようになっている段ボールを、一緒に片づけていく決意をしたのだった。




〔★凛は妥協を覚えた★〕






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