第二章
12 これが正しい召喚者生活
新生リルは冒険者として活動を始めた。
手始めはやはり薬草採取だと依頼を受けた。
草を抜きながら工夫した。先ず土魔法で薬草の周りの草を柔らかくする。次に薬草に身体強化をかけて根ごと引っこ抜く。
根のいらない薬草は切り取った後で強化しておく。空間収納にいれているので採れたて新鮮なままギルドへお持ち帰りができる。
朝、依頼を受けてお昼に戻り屋台で買ったお昼を食べる。やって行けそうとだと思い、宿を延長して月決めで契約した。それからあのおじさんの店に行った。
「あぁ来たか、お若いのは武器がないから心配でなぁ」
「いやぁ、一応これを持ってるんだけど」と短剣をみせた。
「いいもんだけど、もっとごついのを持って欲しいね」
「実は欲しいのは刀なんだけど知ってる?」
「刀っておま・・・若いのに・・・」
「前から欲しくてね」
「よし、そこにある棒を振り回してみろ。何本かあるから一番しっくり来るのを持って来い」
「はいよ」
リルは適当に抜き出すと庭に出た。戻って来てまた抜き出して庭に出た。
「これだな」と棒を渡すと
「おぉこれか、来週できるから取りに来な?」
「いくら?」
「よし、金貨三枚でどうだ?」
「うん、待って払っとく」
「半分、残りは納品の時に」
「頼んだ」というと店を出て行った。店を出ると外にいた冒険者に話しかけられた。
「今、ここから出てきたが、どんな用事だったんだ?」
「武器を頼んだ」
「武器だと?」
「「お前がか」」
「えぇ、鍛冶屋に武器を頼むのはおかしくないですよね」
三人はリルを睨みつけると店に入っていった。
「お前たちか。お前たちの注文は受けないと言っただろ」
「あの、へなちょこの注文は受けたそうじゃないか」
「うん?表で会ったのか?」
「確かに、あいつは作ってやってもいいと思ったからな」
「どうしてなんだ?」
「簡単だよ。気に入ったから」
「・・・・・・」
「「「もう、いい」」」と言うと三人は店を出た。
「なんであいつは・・・」
「どこを気に入ったんだ」
薬草を取っていると悲鳴と叫び声が聞こえた。反射的に助けに行きかけて踏みとどまった。
これは逃げるのが正解だ。様子を見にいくとやっかいごとに巻き込まれる。
間を取って踏みとどまるってやり方もあるかな?と手は薬草を取りながら考えていると
「おい、のんびり薬草を取っている場合じゃない、逃げろ。あの悲鳴はなにか起こったのだ。おまえは逃げろ」
こう行って男は悲鳴と物音が激しくなった方向へ走って行った。後ろから男について行くものがいたが、リルは忠告に従って逃げようとしたが、一行のあとを追っていった。
あの強そうな男達が行くなら安全だろう。だったら見物させてもらおうということで・・・
知らない魔獣だ。前世でもリルは魔獣の名前を全部知っていたワケじゃないが・・・強いて言えばおおきい猫だ。ライオン?虎? ネコ科の大型獣・・・
落ち着く表現が見つかったが・・・・名前がわかったからと言って物事が解決するとは言えない。体に纏わりつく黒いもやもやが凶暴さを増しているし・・・
好奇心は猫をも殺す。猫に殺されそうなんですが・・・・
あたりに人影が倒れていた。先ほどの悲鳴や物音の主だろう・・・・助けに入った男たちの中で動いているのは二名、地面を這っているのを動いていると言えるなら・・・・
戦っているのは・・・・一名か?動けるうちに逃げようとしているのが・・・若干名
こうなると戦うのが助かる早道だってことで、大型猫の足を地面に埋めた。
すかさず、何人かが斬りかかった。リルも石を飛ばして援護する。
できるだけ顔を攻撃するようにしたが、リルの威力だと傷にもならない。
だが、偶然一発が目に当たった。大猫が怯んだ。なるほどと思い目を狙うがなかなか当たらない。
土から足が抜けそうになっているのに気づいて、もう一度丁寧に埋めなおす。
それを見た男がちらっとリルを見た。それからなんどか男たちが斬りかかりやっと大型猫は動きを止めた。
それからリルは好奇心に負けたことを後悔しながら、怪我人の収容などを手伝った。
しばらくしたら、神官のかっこうの男が冒険者に背負われてやって来た。
その男に治療が必要そうだったが、そいつは自分を治癒すると怪我人の治療を始めた。
どの程度治療するのが普通かを知りたかったので、リルにとってこれはいい機会だった。
自分で歩けないもの、捻挫、足の骨折は直していた。それ以外は帰ってからということになった。
それでリルも包帯を巻くなどの手伝いをした。
意識不明の二人は担架に乗せられた。リルは自分は安全に薬草採取をするのが一番だよなと思いながらギルドに戻った。
ギルド全体が忙しそうだったのでリルは薬草をださずにギルドをでた。
ビュ、ビュと刀を振るたびにいい音がする。それなりの重量があるが手首に無理がない。
「これは頼りになる」とリルが刀を見ながら言うと
「我ながらいいものができた。これはわしからのお礼だ」と鞘を渡した。
パチンと音を立てて刀を収めると腰のベルトにはさもうとしてモタモタした。様子を見ていた鍛冶屋のおじさんは、地図を書いた紙を渡して説明した。
「ホルダーがついたベルトをここで作ってもらえ、いい腕をしている」
「おっありがとよ、おじさん、わかってるね」
「わしはロミオと言うんじゃ。おじさんと言うな」
「ありがと、ロミオ」と言うとリルは急いで店を出た。
店を離れて安全だと思うまでリルは笑いをこらえた。
そしてぶーーと噴き出した。ロミオだとよ。ぶーーー
いやぁ世の中にはいろいろあるよな、僕だって転生してるし、召喚されたし・・・
地図を見ながらリルは腰に刀の重みを感じながら歩いて行った。
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