第56話 闇の組織

 戦場は目的を果たしたので、オウブさんに任せて、僕は商館に帰って来た。


 エドバン商会は、武器と薬品の販売で暴利をむさぼっている。

 魔王正規軍が勝利をすると、負けた前魔王軍の、装備や物資は奪いとっている。

 奪いとられた前魔王軍は、再出撃する為に、再度装備や物資を買いそろえなくてはならない。

 エドバン商会の販売している武器や物資の多くが、その武器の横流しなので儲からないわけがない。


 そのまま売るとうま味がないので、魔王の付与をほんの少し付けて高い値段で販売している。


「アスラ様、また倉庫に忍び込もうとした者を捕らえました」


 フォリスさんが賊を捕まえたことを報告してくれた。

 最近その数が、増えてきている。

 エドバン商会の事を探りに来ているのだろう。

 まあ、怪しいですからね。


「最近、多いですね。何かわかりましたか」


「いいえ、なにも聞かされていないようです」


「ふふふ、ヌーナとかいう闇の組織ニャ」


 アドは何かをつかんでいる様だ。


「ヌーナとは何ですか」


「まだ調査中ニャ」


「罠でもはってみますか」


「アジトの一つはわかっているニャ」


 アドの目が怪しく光った。

 夜の散歩で見つけたのだろうか。


「では、今夜にでも訪ねて見ましょうか」






 暗い石造りの、廊下にロウソクが立てられ光源になっている。

 その突き当たりに木製の扉がある。

 組織ヌーナの支部に俺は報告に来た。

 エドバン商会を探る為送り込んだ、情報屋が全部帰ってこねえ、その報告に来たのだ。


 この支部は地下に有り、湿度は高いし暗いし辛気くせえ。

 扉の中に入ると、正面の机に支部長コルトが、不機嫌な顔をして座っている。


「コルト様、エドバン商会に送り込んだ者達が全員消息を絶ちました」


 コルトは、頭に毛がなく、でっぷり太った気持ちの悪い男だ。

 暗い部屋の中で見ると、まるで肌色のカエルのモンスターだ。


「バルカス、こちらのことは、何もバレていないだろうな」


 あたりめーだ。そのため高い金を出して、足が付かねえ奴を送り込んだんだ。


「足が付かないものを使っています。捕まった者から俺たちの事がバレることはありません」


「……エドバン商会か、警戒が厳重だな。警戒が厳重と言うことはやましい事があると言うことだ。そろそろこっちも本気で仕掛ける頃合いか」


「一体誰の依頼なんですかい?」


「お前が、捕まるとは思えねえが、知らねえ方がいい。しかしエドバン商会も敵を作りすぎだ。もう少し静かに商売すりゃあいいものを目立ちすぎだ」


「てー事は、数カ所からつぶすように依頼があったと言うことですな」


 まあ、エドバン商会が、どんな商売をしているのか知らねえが、俺たちみてえなもんに狙われちゃあおしめえだ。かわぇそうに。


「ふふふ、で、準備は出来ているのか」


「すでに魔王都のアジトに幹部を五人集めていますぜ」


「うむ、最高幹部は呼んでいないのか」


「俺だけです、俺以外動ける奴がいなかった。それにたかだか商会を、つぶすのにそんなに人数はいらんでしょう」


「ふむ、まあバルカスに任せれば大丈夫か。皆殺しにしろ、一人も生かしておくな!」


「わかりました」


 ちっ、皆殺しとは穏やかじゃねえぜ。

 組織の中には女子供を殺すのを楽しむ奴もいるが、俺は出来ればやりたくねえ。

 まあこんな商売していて、好ききれーもねえもんだがな。




 俺が町外れのアジトに付くとすでに深夜だった。

 幹部五人と手下が二十人、俺が来るのを待っていた。


「一時間後に出発する。エドバン商会にいる奴は皆殺しだ。これで誰が得するのかは知らねえが、情けはかけるな」


「ひひひ、俺たちが情けなんぞかけるわけがねえでしょう。女子供の泣きわめく声がはやく聞きたいぜ」


 あーっ、こいつは駄目な奴だ。

 こいつに女、子供は任せよう。


 ドン


「な、何の音だ?」


「誰か、見てこい、念の為一人では行くな!!」


 俺が命令すると、手下が五人様子を見に行った。


「何だ、てめーわ!!」


「ぎゃっ」

「ぎゃっ」

「くそおーーぐはっ」


「侵入者だ、気を付けろ」


 何人で来ているのかはわからねえが、俺たちを瞬殺とはなかなかやる。

 一体どこの誰だ。


「いやー、一時間後に皆殺しとは、恐ろしい人達ですね」


 な、何だこいつ子供じゃねえか。

 しかも、俺たちの会話をどこで聞いていた。


「アド、フォリスさん、悪党ですがアスラバキで作戦通りお願いします」


 アスラバキだと、何だそれ。


「お前達、子供だけで来たのか?」


 俺が質問したら、アスラバキと言っていた子供がうなずいた。


「ひひひ、俺は、女、子供を殺すのが……」


 さっきのあいつが、一瞬で笑ったまま倒された。


「ふふふ、僕たち三人です。手加減無しでかかってきて下さい」


 三人とも黒い服を着て顔を隠しているが、身長から子供だとわかる。

 一人は本当に小さい幼児のような大きさだ。


「ぎゃああああーーー」

「ぎゃああ」

「ぐあっ」


 たった、三人の子供に幹部まで倒されてしまった。


「うおおおーー」


 俺は、三人のリーダーと思われる、アスラバキの子供に攻撃を仕掛けた。

 俺の攻撃が全くあたらない。

 あり得ない、こんな子供が俺の攻撃をかわすなんて。

 俺がアスラバキと戦っていると、手下も幹部も倒されてしまった。

 嘘だろ、どれだけ強いんだよ。


 俺との戦いに、他の二人は手出ししないつもりなのか、座り込んでしまった。


「なめるなー」


 拳を出すと、アスラバキは案の定、横に避けた。

 その隙をついて俺は、アジトの外に逃げ出した。

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