第33話 ユージャさんの協力
昨日ギルドマスターにお願いしたことのひとつは、この発光するポーションの効果の確認だ。昨日フロラに言われたように、ここは異世界で、魔法やポーションなどといった元の世界の法則では通じないことが多々ある。
多分ないとは思うが、毒消しポーションにキュアの魔法を使用したことにより、効果が反転して毒のほうを強化するなんてことが起こる可能性だってゼロではない。
このポーションを人に使う前に、どうしても動物や魔物で検証をしなければならなかった。本当ならば俺がやらなければいけないことなのだが、俺が森に行くのは全力でみんなに止められたし、ナイフや剣をまともに使えない俺では動物や魔物をより苦しめてしまう。
昨日ギルドマスターにお願いして、口の堅い冒険者に高額の依頼料を払って依頼を頼んだつもりだったのだが、ギルドマスターのターリアさん本人が行ってくれたみたいだ。嫌な仕事を押し付けてしまったな。本当にエルミー達やターリアさんにはお世話になりっぱなしだよ。
「ポーションの性能を確認したところ、キュアを使用した毒消しポーションも、ハイヒールを使用したポーションもユージャ商店のポーションを使用したものにだけ、その回復量の向上が確認できました。
魔物を毒状態にしてから毒消しポーションを使用しましたところ、既存の毒消しポーションでは治せないほどの重い毒でも治すことが確認できました。
また、ハイヒールを使用したポーションは部位欠損までは治せなかったものの、ヒールを使用したポーションより回復量や回復速度が上でした。これはとんでもない代物ですよ!」
ギルドマスターが興奮した様子で検証結果を教えてくれた。ギルドマスターがこれほど興奮する気持ちもわからなくもない。このポーションがあれば、冒険者がこの街から離れた場所で大きな怪我をしてしまっても治療が可能となるからな。
「本当にありがとうございました。あとはこの現象が俺だけじゃなくて、他の治療士でも可能かを確認したいところですよね」
「少なくともこの街にいるもうひとりの治療士に、協力を依頼するのはやめたほうがよろしいかと……」
「うむ!」
「絶対ダメ!」
「駄目だな!」
「………………」
うん、さすがの俺でもそこまで馬鹿じゃない。少なくともいい方向に進まないということだけはわかる。
「となるとこっちの検証は王都に行ってからになるかな。さすがに王都と言うくらいなら、治療士のひとりくらいはいるでしょうし」
「ええ、王都に治療士は複数名おりますから可能でしょうな」
どうやらこちらの検証はもう少し後になりそうだ。となると王都にユージャさんが作ったポーションを持っていかないといけないし、俺が王都に行っている間に大怪我を負った患者が治療所に来た時用にハイポーションを使ったポーションを用意しておきたい。
改めてユージャさんの商店に行ってポーションを購入しないといけないな。そしてどうしてユージャさんのポーションにだけ、回復魔法を使うとこのような現象が起こるのかも確認しておきたい。場合によっては王都に行く前にポーションの調合レシピのほうも教えてもらいたいところである。
というわけでそのまま冒険者ギルドからユージャさんの商店にやってきた。ギルドマスターやエルミー達と相談して、すべて正直に話してレシピを売ってもらおうという話になった。以前にフロラの精霊の力によって、ユージャさんが治療士の俺に悪い感情を持っていないことがわかっているからできることだ。
「いらっしゃいませ。おや、ソーマ様。またこの店に寄っていただいてありがとうございます」
「ユージャさん、こんにちは。すみません、今日は少しお話があってきました」
「はい、なんでしょうか?」
商店の奥の部屋は俺達4人が入れるほど広くないそうなので、お客さんが来ないかを確認しながら店の中でユージャさんに事情を話した。
「素晴らしいですね! もしこのポーションが広まれば、治療士様がいない場所でもそのお力を分けていただくことが可能となります! ええ、喜んで協力させていただきますよ」
やはりユージャさんはいい人で、事情を伝えると喜んで協力してもらえることになった。
「ありがとうございます。今のところなぜユージャさんのポーションにだけこのような効果があるのか分かっていないんですよね。なので、もし可能でありましたら、ポーションの素材や調合方法のレシピを売っていただければと思っています」
「なるほど、別に秘伝のレシピというわけでもないので、大丈夫ですよ。お金も必要ありませんので、ぜひみなさんで役立たせてください。これによって多くの人々が救われれば私も嬉しいですから」
「………………」
……おう、本物の聖人とは、こういう人のことを言うのだろうな。
「本当にありがとうございます。ですがユージャさんにもいろいろと検証を手伝っていただきたいので、その分のお礼はちゃんと受け取ってくださいね」
「はい、微力ですが協力させていただきます。いやあ、のんびりとした余生を送っているつもりでしたが、200歳を超えてこれほどの大役を担うことになるとは思ってもいませんでしたよ」
「200歳!?」
どうやらユージャさんの年齢は200歳を超えているらしかった。やっぱりエルフって長生きなんだな。というか同じエルフのフロラの年齢って一体いくつなんだろ……
「……ソーマ、私はまだ19歳」
「はは、やだなあフロラ! 別にフロラが100歳を超えているんじゃないかなんて、これっぽっちも思ってなかったよ!」
「それは嘘」
「すみませんでした……」
そういえばフロラに嘘は通用しなかったんだ。ファンタジーとかだと何百歳ものエルフとかもいるし、俺たちの中で一番幼そうに見えるフロラも100歳を超えているんじゃないかと一瞬だけ疑ってしまった。でも俺よりも年上ではあるんだな。
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