第67話 初めての魔物退治(魔物:メガ・フルーツスライム)

第二章 葡萄の国と聖女(67)



67.初めての魔物退治(魔物:メガ・フルーツスライム)



「全員僕の従魔です。魔物退治を手伝います。」


僕が大声で叫ぶと葡萄農園の従業員たちはとりあえず安心したようで松明を持って走り出した。

破られた防護柵は農園の入り口から見てちょうど反対側の一番遠い場所らしくみんなその方向を目指している。


「ルルさん、フルーツスライムの情報を下さい!」


他の人たちと同じ方向に走り出しながら僕は叫んだ。

実物を見れば魔物鑑定できるけど、まだ接敵していないのでルルさんに魔物情報を訊くことにした。


「黄色い小型のスライム。星1つ。倒し方は火で焼くか、体内の核を潰す。攻撃は弱い酸を飛ばしてくる。」


ルルさんから的確な答えが返ってきた。

実戦ではこういう無駄のない行動が求められるのだろう。


全員で葡萄畑の中を走る。

風クエストを使って速度を上げると、あっという間にフルーツスライムが侵入した場所にたどり着いた。

僕はすぐに魔物鑑定を発動した。



○フルーツスライム ☆

 体型 : 小型

 体色 : 黄色

 食性 : 果実食

 生息地: 森に生息。

 特徴 : 果実類を酸で溶かしながら吸収する。

      攻撃を受けると弱酸の液体を飛ばす。

      打撃に耐性がある。

      火耐性が低い。

      体内の核を潰されると死ぬ。

      可食(フルーツゼリーに似ている)

 特技 : 飛酸(弱)・打撃軽減



魔物情報はほぼルルさんから聞いた通りだった。

「特技」に打撃軽減があるけど、ルルさんの打撃力からすれば無視できる程度なのだろう。

あと・・・「可食」。

この世界ではスライムを食べるのだろうか?


破られた防護柵の部分からは黄色いスライムが侵入し続けていた。

農園の従業員たちは中に入ってきたフルーツスライムに松明で対応しているけど、人間に対してスライムの数が多過ぎる。

僕は仲間たちに指示を飛ばした。


「防護柵周辺は僕が対応します。従魔たちは畑の方へ逃れたスライムをお願い。ルルさん、自由にして下さい。」


「わかったよ〜」

「リン(了)」

(了解なの。)

「分かった。」


ディーくん、スラちゃん、タコさん、ルルさんから返事が返ってきた。

他の従魔たちもうなずいている。

初めての魔物退治にちょっとテンションが上がっている僕に対して、従魔たちとルルさんは通常モード。

まあ、力の差は歴然としてるからね。

そしてそこからは、フルーツスライムの瞬殺ショーが始まった。


蜘蛛型のラクちゃんは糸を使って移動しながら、前足の鎌の一振りでフルーツスライムを真っ二つにしていく。

うん、核も真っ二つにしてるんだね。


蜂型のハニちゃんは空中を飛び回りながら、毒針を的確にフルーツスライムの核に打ち込んでいく。

まるでスナイパーみたいに正確だね。


食虫植物型のコンちゃんは葡萄畑の緑に姿を隠しながら、根を地面から突き出してフルーツスライムの核を破壊していく。

見えない暗殺者って感じ。


蛸型のタコさんはフルーツスライムが飛ばす弱酸から逃げ回りながら、隙があれば麻痺をかけて回っている。

それ、クルクル回りながらする必要があるのかな。


兎型のウサくんは何かの葉っぱをもぐもぐしながら、タコさんが麻痺をかけたフルーツスライムを影潜りで集めて僕の前に積み上げていく。

これ、燃やせってことだよね。


スライム型のスラちゃんは体の一部を槍型に変形させて、フルーツスライムの核を狙い撃ちしている。

一応同族相手だと思うけど容赦ないね。


それから熊型のディーくん、その倒し方おかしくないかな?

ぬいぐるみみたいな右手を一振りすると、フルーツスライムがパンって破裂してるけど。

それ風船じゃないよね。


戦闘狂のルルさんは淡々とフルーツスライムを殴っていた。

どうやら一撃で核を砕いているようだ。

表情は明らかに物足りなさそうだけどね。


そして僕が何をしているかというと、新たに侵入してくるフルーツスライムを炎で燃やしていた。

ほとんど流れ作業で。


松明を持った人たちはほとんどが立ち止まって僕たちの戦い(駆除)をただ見つめている。

殲滅の速度が速過ぎて何をしていいか分からなくなってるようだ。


しばらくするとすべての戦闘が終了した。

周囲にはフルーツスライムの残骸と燃えた後の灰があちこちに残されている。

今気づいたけどフルーツスライムは倒しても光の粒にならなかった。

やはり島の魔物は特別なのだろうか。

あるいは島自体が特別なのかもしれない。


僕は戦闘を終えてこちらに近づいてくるスラちゃんに索敵をお願いした。


「もう魔物はいない?」


「リン(内)、リン(無)。」


スラちゃんは葡萄畑を見渡して内部には魔物がいないことを伝えてきた。

でもすぐ後に防護柵の外を見て付け足した。


「リン(外)、リン(大)!」


(外に大きいの?)


スラちゃんの警告を聞いて防護柵の方を見ると何か大きくて赤いものが近づいてくるのが見えた。

僕はすぐに鑑定を発動した。



○メガ・フルーツスライム ☆☆

 フルーツスライムの進化種。

 体型 : 大型

 体色 : 赤色

 食性 : 雑食(果実を好む)

 生息地: 森の奥地

 特徴 : フルーツを好むが、何でも酸で溶かして吸収する。

      攻撃を受けると強酸の液体を飛ばす。

      打撃が効かない。

      火にかなり耐性がある。

      可食(フルーツアイスに似ている)

 特技 : 飛酸(強)・打撃無効・火耐性(大)



フルーツスライムの進化種で星2つ。

大きさは前の世界の象くらいある。

打撃は無効だし火耐性も大きい。

進化して弱点を克服したということだろう。

さて、どうやって倒そうかな。

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