第58話 勇者もいるそうです(初心者?:ウィン)
第二章 葡萄の国と聖女(58)
58. 勇者もいるそうです(初心者?)
「次はどこに行く?」
ルルさんの問い掛けにどうしようかなと少し考える。
本当は魔術師ギルドと錬金ギルドにも行ってみたい。
それで登録できればおそらく収納クエストが進展して、マジックバッグの性能がさらに上がるんだと思う。
だがしかし、果たして魔力0の人間が魔術師ギルドに登録できるのだろうか?
錬金クエストは錬金ギルドの管轄なのだろうか?
今のところマジックバッグの性能は『倉庫レベル』で何の問題もないし、他のギルド登録はちょっと後回しにしようかな。
ということで、
「ルルさん、魔物ってどこにいます?」
「どこにでもいる。いっぱいいるのはダンジョンか、森の奥だな。」
訊き方が悪かったね。
いきなり魔物がいっぱいいる所には行きたくないし。
「え〜っと、Fランク冒険者が初めて魔物を討伐するならどこがいいですか?」
「初心者なら森の手前の草原とかだな。でもウィンは初心者じゃないだろう?」
「えっ? 初心者ですけど。」
そう答えるとルルさんは怪訝な顔をする。
今日初めて冒険者登録したのだから初心者で間違いないと思うんだけど、何がおかしいのかな?
「ウィン、それは無理がある。誰も信じない。」
無理がある?
誰も信じない?
どういうことだろう?
「すみません、どのあたりに無理があるんでしょう?」
「そうだな、その身のこなし、筋肉のつき方、何より数え切れないほどのスキル、綺麗で完璧な風魔法。どう考えても無理だろう?」
ちょっと待って。
確かにスキルの多さや風魔法(クエストだけど)はそうかもしれないけど・・・。
身のこなし?
筋肉のつき方?
島での身体能力の上がり方が異常だと感じてたけど、それが関係してるのか?
「ウィン、今まで魔物は何体倒した?」
考え込んでいるとルルさんから質問が来た。
計算するまでもないけど、頭の中で確認してみる。
(カニバラス・ミニマが100、ハニー・ミニマが100、ラクネ・ミニマが100、テディ・ミニマは倒してないな。合計300? あっ違う。単独訓練でも倒したから・・・そうだ短剣クエストの数でいいのか。)
「500くらい?」
「その時点で初心者ではない。」
ルルさんは完全に呆れた表情で断言した。
500体くらい倒すともう初心者じゃないのか。
まあ、考えてみればそうだよな。
「で、倒した魔物の種類は?」
種類を訊かれたので正直に答える。
「カニバラス・ミニマ、ハニー・ミニマ、ラクネ・ミニマの3種類です。」
「聞いたことのない魔物だな。ランクは?」
「ランク?」
「魔物は星の数でランク分けされている。」
「ああ、なるほど。3種類とも星3つでした。」
「星3つだと。ハハハ。」
ルルさん、真顔のまま笑ってます。
怖いです。
どうしたんでしょう?
「ウィン。」
「はい。」
「星3つは上級魔物だ。」
「上級!」
うちの子(従魔)たち全員星3つだったはず。
ということは当たり前だけど全員上級魔物ってこと?
でも上級ってどれくらいの強さなんだろう?
「上級魔物って、どれくらい強いんですか?」
ルルさんはちょっと考えてから説明してくれる。
「そうだな。魔物によって多少幅はあるが上級魔物1体を相手にするには、最低でもBランク冒険者じゃないと無理だ。複数ならAランクでも苦労する。」
星3つって、そんなに強いんですね。
これは強さの基準を考え直さないといけないな。
島には3つ星しかいなかったので、それが普通だと思ってた。
あっ2つ星もいたか。
飛び魚と太刀魚・・・じゃなくて、アゴー・フライとサーベル・ヘッド。
でもあれはタコさんが捕まえてきたので、強さとか分からなかったし、あとコーラル・ジュエルも2つ星だった。
その後もルルさんに魔物の強さについて質問したところ、普通に遭遇する魔物はほとんどが星1つらしい。
たまに星2つが現れるとちょっとした騒ぎになるとのこと。
星1つにはDランクとEランク冒険者が対応し、星2つが出るとCランク以上が召集される。
普通のFランクは見習い扱いなので単独で魔物討伐はさせないらしい。
星3つは、ダンジョンの深層か魔物の森の深奥部に行かないと出現しないらしく対応はBランク以上となる。
さらに星4つは極級、星5つは神級と呼ばれ、どちらもここ数百年は発見されていないらしい。
「極級は国を滅ぼし、神級は世界を滅ぼす」と言われていて、伝説ではなく事実として過去の記録に残されているとのことだった。
ルルさんの話を聞いて、見過ごせないことがひとつ。
星4つは極級で国を滅ぼすレベル?
うちの子たちの進化先、すべて星4つになってるんですが、どうすればいいのかな。
うん、まだ進化方法が示されてないので、考えないことにしよう。
先送り案件ということで・・・。
「ウィン。」
「はい。」
遠い目をして考え込んでいるとルルさんに声をかけられた。
「自分の異常性を理解してるか?」
「はい?」
ちょっと疑問形で返事を返してしまった。
まあ理解はしてますよ。
自分に関する記憶がなくて、他の世界の記憶があって、クエストという不思議な能力(?)があって。
どう考えても普通じゃないよね。
でも面と向かって異常と言われるとちょっとね。
「星3つの魔物を500体なんて、Aランクの私はもちろん勇者でも倒してないぞ。羨ましすぎる。」
そこですか。
ちょっと転びそうになりました。
ルルさん、やっぱりそっちの傾向の人なんですね。
戦闘に偏った感じの。
あと、勇者って実際にいるんですね。
「あっでも一人で倒した訳じゃないので。」
「仲間がいるのか? 私以外に?」
私以外にって部分が妙に強調されていたけど、ルルさん、今日初めて会ったばかりですよね。
どうしてそんな不服そうな表情なんですかね。
「いますよ。7人?」
従魔の数え方にちょっと迷って語尾が上がってしまった。
「7人も!」
ルルさんが少し驚いている。
ルルさんの驚き顔はかなりレアなんだろうな。
もっと驚かせて見ようかな。
「呼びましょうか?」
「呼べるのか?」
「呼べると思います。呼ぶのは初めてだけど。」
従魔召喚はまだ試したことがないけど、多分大丈夫だと思う。
失敗したらその時にまた考えよう。
案ずるより産むが易し。
何でもまずはやってみる。
「召喚。」
声に出す必要はなかったかもしれないけど、ルルさんに分かりやすいようにと発声してみた。
初め少しだけ誰を呼ぼうかと考えたけど、面倒なので従魔全員をイメージした。
目の前の空間に光の粒が溢れる。
溢れた光の粒が段々集まり始め、7つの光の塊になる。
次の瞬間、7人の従魔たちがそれぞれに妙なポーズをとって目の前に現れた。
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