第41話 この島を出ます(第一章最終話)

第一章 はじまりの島(41 )



41.この島を出ます(第一章最終話)



○クエスト(改) : テディ・ミニマの訓練を受けろ①

 報酬      : 転移陣(単独)

 達成目標    : テディ・ミニマの訓練を受ける(10/10日)



…転移陣(単独)を獲得。…


クエスト達成の表示とともにサラリとメッセージが流れた。

「転移陣(単独)」を獲得。

あれっ、クエスト内容が微妙に変化してる。


クエスト名の後ろに①が追加されている。

ということはまだ続きがあるんですね。

②とか③とか④とか。


報酬の「転移陣」の後ろにも(単独)が表示されてる。

この能力にも進化形があるということですね。


(それにしても、転移陣ってどう使うんだろう? 説明とかないのかな。)


…説明してやる。…


えっ、説明してくれるの?

心の底から驚いた。

ここにきてまさかのデレですか?


…説明やめるか(怒)…


(いえ、是非お願いします。)


…行きたい場所を指定して転移陣を念じればそこに行ける。

 場所指定は今まで行ったことがある場所ならどこでも。

 条件指定すれば行ったことがなくても、その条件に当てはまる場所  

 に行ける。…


ちょっと、感動してもいいですか?

転移陣の凄さはもちろんなんですが、「中のヒト」がこんなに親切にしてくれたことに・・。

まるで不良が捨て犬を拾うところを目撃した感じ?

それから「中のヒト」、長い文章も喋れたんですね。


でも行ったことがない場所に行けるってことは、島の外にも出られるってことだよね。

人がたくさんいる街とか。

海鮮料理が美味しい港町とか。

温泉がある保養地とか。


転移陣の可能性に興奮していると、誰かがチョンチョンと体に触れた。

それはもちろんディーくんだった。



○クエスト(改) : TAME

 報酬      : テディ・ミニマ

 達成目標    : テディ・ミニマの訓練を受ける(10/10日)



○「ディー君」 : テディ・ミニマ(☆☆☆)

  従魔 : 猛獣系熊型(召喚可能)

  特技 : 剛腕・敏捷・激怒・転移(短)

  進化先: ホリブルテディ・ミニマ(☆☆☆☆)

  素材 : 木材担当



ディーくんが無事に従魔になっていた。

従魔になる前から従魔みたいだったけど。

いや、どちらかというと師匠か。

茶色い毛並みの胸元に白い星型のマークが浮かんでいる。


「これからよろしくね〜。毎日訓練するよ〜。」


「こちらこそ、よろしく。」


あれっ、ディーくんがしゃべった。

しゃべったよね?

今の、念話じゃないよね?

声に出したよね?


「しゃべれるの?」

「しゃべれるよ〜。」

「他の従魔たちは?」

「まだ無理かな〜。」

「まだってことは、そのうち・・・」

「まだ分からないよ〜。」

「訓練はホントに・・・」

「毎日するよ〜。」


初めて会話できる相手ができたことに感激しつつ、スパルタ師匠降臨の予感にちょっとビビる。


「上に行くよ〜。」


ディーくんが岩山の上のほうを指差しながら言った。


「どうやって登ればいい?」

「転移陣、使えばいいよ〜。」


ディーくんはそう言い残すと姿を消した。   

短距離転移で先に行ったのだろう。

岩山の上には行ったことがないので、条件指定をしないといけない。

やり方がよく分からないけど、とにかくやってみる。


(目の前の岩山の上に転移。)


そう念じると足元に魔法陣のようなものが現れた。

これが転移陣だろう。

転移陣が光ると視界が暗転し、すぐに明るくなった。

気がつくと広大な草原の中に立っていた。


「簡単だったでしょ〜。」

「ここ、岩山の上?」

「そうだよ〜。ここならいつでも訓練できるよ〜。」


岩山の上は、台地のように平らになっていた。

外縁部は少し高い石の壁になっているので、盆地といったほうがいいかもしれない。

これは、空を飛ぶか転移じゃないと来れそうにないな。


何となくこの岩山の上がこの島のゴールだろうと思っていたけど、辿り着いた後に何をするかは考えてなかった。

さて、何をすればいいんだろう?


…小屋を出せ…

 

「中のヒト」から指示が来た。

またダッシュ10本か。



○クエスト : 家が欲しい(HOME)

 報酬   : 小屋

 達成目標 : NO NEED



続いてHOME系のクエストが表示された。

しかも「NO NEED」なので、ダッシュしなくても小屋を出せるようになっている。


(小屋)と念じると、浜辺にある小屋とまったく同じ外見の小屋が草原の真ん中に現れた。

そしてその小屋の扉を開けて、従魔たちがぞろぞろと外に出て来た。


「小屋が転移した!?」


従魔たちが出て来たので、浜辺の小屋がそのまま転移したのかと思った。

でもそうじゃなかった。           

「中のヒト」から説明が入る。


…この小屋はどこにでも建てられる。

 必要無くなれば消すこともできる。

 どこにある小屋から入っても内部は同じ空間。

 扉から出る時は、行きたい場所を念じればいい。

 その場所にある小屋の扉から出ることができる。…


中のヒトが優し過ぎる。

あんまり優しいと、勘繰ってしまう。

良くない報告とか、突然の別れとか・・・。


…もう島を出るだろ。管轄が変わる。…


まさかの、「これでお別れだ」的なイベントなのか。

でもよく考えてみると、転移もできるしこの島には小屋もある。

いつでも、ていうか毎日でも戻って来れるんじゃないのかな?    


…小さいこと言うな(怒)

 世界を見てこい。

 戻るのは、(小声で)たまにでいい…


「中のヒト」のメッセージは文字で流れるから(小声で)って書いても、はっきり読めちゃうけどね。

まあ、念じて扉開けるだけだからすぐ来れる。

あっ、ディーくんの訓練のこと忘れてた。

これって毎日島に来ること確定じゃないのかな?


「中のヒト」との別れを惜しんで(?)いると従魔たちが集まって来た。


従魔たちともここでお別れじゃないよね。

召喚でどこにでも喚べるはずだし小屋を利用して移動もできるはず。

この島限定なんてオチはやめて欲しいんだけど。


「どこにでも行けるよ〜。」

「リン(一緒)」

(もっと美味しいもの食べるの!)


ディーくんとスラちゃんとタコさんから言葉と念話が届き、コンちゃんとハニちゃんとラクちゃんは頷いている。

ウサくんは、なんかもぐもぐしてる。


この島を出てもどうやら従魔たちは一緒らしい。

島に戻ることも簡単そうなので心置きなく出発できる。

初めての島の外の世界。

どんなところに行こうかな。


「あるじ〜。訓練できるならどこでもいいよ〜。」

「リンリン(石がいっぱいあるところ。)」

(珍味もいろいろ試したいの。)

(フルーツさえあれば、わたしは大丈夫です。)

(大きい虫。強いお酒。)

(旅か。良いな。鎌を研いでおこう。)


コンちゃんとラクちゃんから初めての念話。

ちょっと感動。

コンちゃん、酒好きなのか?

ラクちゃん・・・鎌は研がなくてもいいから。


そしてまだもぐもぐしてるウサくんを見る。

しばらく黙ったまま見つめ合う。


「主、薬草くれるならどこでも行くよ。」


ウサくん、しゃべった!

ということで、旅立つことにします。




第一章 『はじまりの島』 終わり

第二章 『コロンバール(葡萄の国)と聖女』 に続く 

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