第38話 素材も集めるようです(素材庫)

第一章 はじまりの島(38)



38.素材も集めるようです(素材庫)


 

〜(独白)〜


ラクちゃんを連れて小屋に戻ります。

まだ昼過ぎですが、このまま新しい魔物と戦うのは避けたいと思います。

先を急いではいけない。

経験上の判断です。


ラクネ・ミニマの討伐報酬は糸巻きに巻かれた糸でした。

ラクちゃんが自分の糸で一括りにして背中に乗せて運んでいます。

ウサくんがちょっと寂しそうです。

自分の役割をとられた感じでしょうか。



   *   *   *   *   *



小屋に戻るとタコさんから提案があった。


(倉庫をひとつ増やして欲しいの。)


タコさんは念話のようなもので意思を伝えてきた。

それができるんなら、今までの身振り手振りはいったい何だったの?


(楽しいから。)


そうですか。


倉庫を増やすのはいいんだけど、今ある倉庫の拡大じゃダメなんだろうか?


(食材と素材、分けるの。)


他の従魔たちも同意して頷いている。


食材と素材か。

分からないでもないけど、どっちに入るのかグレイゾーンのものが多くないか?

まあ、仕分けは従魔たちに任せればいいか。


ということで、戦いから戻ったばかりですが砂浜を走り込みます。

既存の倉庫(食材庫)の拡大と新規の倉庫(素材庫)の新設に向けて。


それにしても君たち、主人使いが激しいよね。

ウサくん、そこで「ヒール」かけてくれるのはありがたいけど、もっと働けって言われてるみたいで、ちょっとね。



○クエスト : 食材庫を拡張したい(HOME)

 報酬   : 食材庫(基本×16)

 達成目標 : 5秒間ダッシュ(80本)


○クエスト : 素材庫が欲しい(HOME)

 報酬   : 素材庫(基本×16)

 達成目標 : 5秒間ダッシュ(160本)



食材庫(元倉庫)は既に基本の大きさの8倍になっている。

さらに倍(基本×16)にしようとしたところ「ダッシュ80本」と表示された。

もういろいろ面倒になってきたので、素材庫も初めから食材庫と同じ大きさ(基本×16)でと願うとさらに「ダッシュ160本」追加。

合計5秒間ダッシュ240本。


(いじめですか?)


…棚はサービスだ(怒)…


仕方がないので走るとしよう。

まあ改めて計算してみると、間違ってないんだよね。

倉庫の基本型が10本、拡張(基本×2)が10本、拡張(基本×4)が20本、拡張(基本×8)が40本、拡張(基本×16)が80本。

合計で160本。

棚の分は本当にサービスになってる。


今の僕の体力だとダッシュ240本も時間はかかるけどなんとかこなせてしまう。

暗くなる前にHOME系クエストを終わらせて小屋に戻ると、食材庫の隣に新しく素材庫の扉が出現していた。

中を確認すると素材庫には160棚、食材庫には80棚、それぞれ新しい棚が設置されていた。

それにしても倉庫が大きくなり過ぎてもう迷路みたいになっている。


あっ、「中のヒト」にお礼を言っておかないと。

塩対応だけど嘘はつかないし、時々優しさが感じられるんだよね。

時々だけどね。


「サービス(棚)、感謝します。」


声に出して言ってみたけど、「中のヒト」の反応はなかった。

照れてるのかな?


僕と入れ違いに従魔たちが楽しげに外に出かけて行く。

早速、食材&素材集めに行ったんだと思う。

100%間違いなく。


その時気付いたんだけど、ハニちゃんが呼び出したハニー1号って戦闘が終わっても消えないんだね。

ハニちゃんに確認してみると、


(倒されない限り消えません。)


とのこと。

じゃあ予めハニーを増やしておくことも可能なのか。

でも小屋の中にハニー・ミニマがいっぱいいるのもどうなんだろう。

そのうちハニー部屋とか作ろうかな。

想像してちょっと嫌な感じがしたので、とりあえずこの案はペンディングで。


そこまで考えて大事なことに気づいた。

あれっ?

ハニちゃんも念話できてない?


(実は・・・できます。)


え〜と、もしかして従魔たち、全員念話できる?


(従魔は・・・主と念話できます。筆頭従魔のタコさんが念話しないので、使っちゃいけないのかと・・・。)


ハニちゃんは申し訳なさそうにそう言った。

マジかあ〜。

っていうか、筆頭従魔って何?

従魔たちのリーダーみたいなもの?

タコさんで大丈夫なの?


(一番初めに従魔になった個体のことです。特に権限とかないので、大丈夫かと・・・)


ハニちゃんの言葉を聞いて少し安心する。

タコさんに問題がある訳じゃないよ。

ただタコさん行動が自由だからね。

リーダーにはちょっとね。



   *   *   *   *   *



外が暗くなってから従魔たちが順次小屋に戻って来た


ハニちゃんとハニー1号が果物をたくさん抱えて入ってくる。

あれっ、ハニーの数、増えてない?

森のハニー・ミニマたちに手伝ってもらってる?

仲間呼びで増やしたわけじゃないんだね。

ハニー・ミニマたちは果物を抱えて、ぞろぞろと食材庫に入っていった。


コンちゃんが帰ってきた。

いっぱい昆虫を抱えている。

倉庫の扉の前で考え込みながら昆虫の仕分けをしている。

しばらく見ていたけど、食材用と素材用の分類の基準が全く分かりません。


タコさんがズルズルと入ってきた。

いつもの魔魚たちを引きずっている。

他の足で何か丸いものも抱えている。


「タコさん、それ何?」


(大きいの倒すと、出るの。)


たぶん魔石ですかね。       

初めて見るけど。


そう言えば森の中の魔物を倒しても魔石は出ないよね。

海は別の領域なのかな。

でも魔魚をCOOKしても魔石は出ないよね。

魔物の大きさの問題なのか?

タコさんは首を傾げた後、何も答えずに魔魚たちを食材庫に、魔石を素材庫に入れた。


ウサくんは大量の野菜と共にソファの影から現れた。

葉っぱ類を選り分けて素材庫に運び入れている。

それは薬草系か何かかな?

それとも他の使い道があるのかな?

ウサくんからも詳しい説明はなく、残りの野菜は食材庫に収まったようだ。


ラクちゃんは糸でぐるぐる巻きにしたものを体の上に乗せて帰ってきた。

大きな袋を担いでいるように見える。

それ、何かの死体とかじゃないよね?

血塗れの魔物がゴロゴロとか、ちょっと怖いんですけど。


ラクちゃんはその物体を床に置くと、前足の鎌でシャキンと切り裂いた。

中から綿の塊や何かの毛皮や繭みたいなものが転がり出てきた。

僕の心配に気付いて、一応中身をこちらに見せてくれたようだ。

ラクちゃんは自分の糸で荷物をまとめ直して、すべて素材庫の中に持っていった。

ラクちゃん、食材はないんですね。


最後にスラちゃんが帰ってきた。     

見た目には何も持っていない。

でも床の上で体をプルプルさせると、たくさんの鉱石がコロコロと転がり出てきた。


小さな体のどこにそんなに入ってたの?

そう疑問に思っていると、スラちゃんは床に転がっている鉱石を再び体の中に取り込み食材庫に入って行った。


スラちゃんもとりあえず成果を見せてくれたんだね。

食材庫から出てソファでくつろいでるけど、素材庫には行かなくていいのかな?

なるほど、あれは全部食材なんですね。



   *   *   *   *   *



翌朝目を覚ますと小屋の中に従魔たちは誰もいなかった。

昨夜は夕食の後、みんなソファでまったりしてたけど、また食材集めに行ったのかもしれない。


浴室で顔を洗い、ダイニングテーブルの椅子に座り一人で朝食を食べる。

今日は森の先へ進む予定だ。

従魔たちにも伝えてある。

でも誰も小屋に帰って来ない。


しばらく待ってから小屋の外に出ると、砂浜と草原の境目あたりにタコさんとスラちゃんとウサくんが並んで座っていた。


「一緒に行く?」


森の方を指差しながらそう言うと、3人は首を揃えて横に振った。

そして足を上げて「いってらっしゃい」という仕草をする。

今日はついて来ないらしい。


仕方がないので一人で森まで歩いていくと、草原と森の境目あたりにコンちゃんとハニちゃんとラクちゃんがいた。

森の中を指差してみると、やはりこの3人も首を横に振った。


どうやら次の試練は一人で立ち向かわなければいけないらしい。

どうしよう。

急に心配になってきた。

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