第37話 銀色の光るやつ(従魔:ラクちゃん)

第一章 はじまりの島(37)



37. 銀色に光るやつ(従魔:ラクちゃん)



コンちゃんが棍棒を振り、ハニちゃんが毒針を飛ばし、僕が「炎」を発動する。

ラクネ・ミニマがギリギリで連携攻撃をかわしている。

銀色の蜘蛛が自分の糸を利用して上下左右に動き回る様は、まるで空中で舞を舞っているようだ。


何とか相手の動きを先読みして攻撃を当てようと考えていると、ラクネ・ミニマの背後に赤い影が走り込むのが見えた。


(タコさん、近過ぎる!)


僕は思わず心の中で叫んだ。

でも次の瞬間、タコさんの口から黒い霧の塊が吐き出され、ラクネ・ミニマの体を包み込んだ。

「墨吐き」が初めて命中した模様。

タコさんがガッツポーズをしながら離脱してくる。


ラクネ・ミニマはすぐに黒い霧から抜け出した。

霧の中にいたのは1秒にも満たなかったと思う。

しかし意外にも、効果は覿面(てきめん)だった。


黒い霧から逃れた直後、ラクネ・ミニマの挙動がおかしくなった。

攻撃を避けるというより、デタラメに鎌状の足を振り回している。

明らかに目が見えていない感じ。

「墨吐き」には視力を奪う効果があるようだ。

タコさん、ナイスファイト。


視力を失ったラクネ・ミニマを、コンちゃんの石の棒が的確に捉える。

打撃がまともに当たり、銀色の体が地面に叩きつけられた。

僕はそのタイミングを逃さず、「氷」と「溶岩」でとどめを刺す。

ラクネ・ミニマは光の粒となって消えていった。


その後、残りの1体も従魔たちとの連携で無難に対処できた。


しばらくは2体1組のラクネ・ミニマとの戦闘が続いた。

ハニちゃん(ハニー1号含む)、カニさん、時々タコさんという感じで、ラクネ・ミニマを上手く陽動できている。


隙さえあればクエストのコンボで対応できるし、2体が相手なら、接近戦になることもほとんどない。

離れていれば切断攻撃を受けることもない。        


10組ほど倒したところでラクネ・ミニマの出現が一旦止まった。

今までは50体討伐がひとつの目安だったけど、今回は違うらしい。


戦闘がいつ再開するか分からないので、手早く従魔たちを集めて状態を確認する。

念のためウサくんにお願いして、全員に「ヒール」をかけてもらった。


万全の状態で従魔たちが戦闘配置に戻ると、それを待っていたかのようにラクネたちが現れた。

ここからは3体で1組のようだ。         


今までの討伐戦でもそうだったけど、戦い方というのは繰り返せば繰り返すほど慣れていく。

相手の攻撃の仕方、回避の仕方、連携の取り方、そういったもののパターンや癖が見えてくる。


同時に自分の動きも洗練されていく。

速さや強さや精度だけではなく、間の取り方、先読み、緩急の付け方といったものが自然と身に付いてくる。


同時に3体のラクネ・ミニマが現れたので、戦い方を少し変更することにした。

それまでは相手を地面に落としてから仕留めていた。

ここからは空中戦に挑戦しようと思う。


基本型は今までと同じだ。

「炎」で糸を燃やしてラクネ・ミニマたちの空中移動を制限する。

従魔たちが特技を活かしてその注意を分散させる。

ここで、ラクネ・ミニマを地面に落とす作業を省略する。

つまり空中で直接「氷玉」で捕らえる。


体も意識もラクネ・ミニマとの戦いに馴染んでいたので、作戦変更に順応するのも早かった。


従魔たちの攻撃に気を取られている個体に向けて「氷玉」を発動する。             

空中で氷で包むことに成功すると、即座に「溶岩」をその上に載せる。

地面に落ちる前にその個体が光になって消える。

地面に落ちた溶岩を「氷」で包んで冷却する。


変更した作戦が上手く回り出すと討伐速度がどんどん上がっていった。

それほど時間をかけずに、3体セットのラクネたちを10組倒すと、

休憩もなく5体セットに移行した。


さすがに5体同時に戦うとなると、接近戦を完全に避けることは難しくなる。

こちらの従魔の数だと2〜3体のラクネの注意を逸らすのが限界だ。


しかしこちらにはまだスラちゃんがいる。

ここまであまり活躍の場がなかったので張り切っている。


「リン(後ろ)!」

「リン(右上)!」

「リン(左下)!」


接近するラクネの位置を的確に知らせてくれる。


途中で接近戦の方が楽に戦えることに気付いた。

切断攻撃を受けるリスクは高くなるけど、相手が近くまで来てくれるのでクエストを当てやすくなる。

スラちゃんがいるので死角もない。


近過ぎる相手は「石壁」を出して防ぎ、少し距離があれば「氷玉」で包む。

余裕があればそのまま「溶岩」で倒す。

戦いがスムーズに回るので少し欲が出た。

ちょっと試してみよう。


「全員、待機!」


攻撃役の従魔たちに攻撃を止めるよう指示を出した。    

コンちゃんとタコさんとハニちゃんとハニー1号は、攻撃を止めて姿を隠す。

ウサくんは影に潜ったままだ。


「スラちゃん、行くよ。」

「リン(了)!」


そこからはスラちゃんとの二人無双。

「石壁」「氷玉」「溶岩」で次々にラクネ・ミニマを光に変えていく。

もちろん忘れずに「氷」で冷却する。


(これって、氷玉もいらないかも。)


近距離ならほぼ100%で「溶岩」を当てられそう。

そう感じて「氷玉」も省略してみる。


「リン(右)!」


ベルちゃんの指示と同時に右を向く。

向かってくるラクネに「溶岩」を発動する。

ラクネ・ミニマが一瞬で光に変わり、溶岩が残る。

その溶岩を氷で包む。


結果的にラクネの出現が止まるまで、他の従魔たちの出番はなかった。    



○クエスト : TAME

 報酬   : ラクネ・ミニマ

 達成目標 : 100体倒せ(100/100)



○短剣

 クエスト : 短剣を成長させろ

 報酬   : 剣(黒)

 達成目標 : 魔物を倒す(561/1000)  



ラクネ・ミニマのTAMEに成功した。

短剣クエストも表示されている。

ラクネ・ミニマ戦では短剣を使ってないけど、短剣を持っている状態で魔物を倒すとカウントされるようだ。


目の前には銀色に光るやつがちょこんと座っている。

目の下に白い星のマークが付いている。

戦っている時は凶悪に見えた魔物もTAMEした後は可愛く見える。

不思議だ。


(名前は・・・ラクちゃんでお願いします。)



○「ラクちゃん」 : ラクネ・ミニマ(☆☆☆)

  従魔 : 節足系蜘蛛型(召喚可能)

  特技 : 切断・粘糸・擬死・物理耐性(中)

  進化先: キメララクネ・ミニマ(☆☆☆☆)

  素材 : 糸担当



名前、「クモさん」の方が良かったかな。

まあ、大差ないよね。

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