消えた雑草④
昼食が多すぎたのだ。
朔也は遅くなると言っていた。
おそらくデートだ。
夕食はどこかで済ませてくるだろう。
冷蔵庫の中の残り物を、無駄にしたくない一心で消費した。
胃の要領ぎりぎりの量を食べると、眠くなるものだ。
空調で整えられた室内で、心地の良いソファに体重を預けて、少しだけ寛ぐつもりだったのだ。
いつの間にか深く眠り込んでいたらしい。
「あ……もうこんな時間」
いけない。
結局あみぐるみには何も手をつけないまま、すっかり夕方になっていた。
日はまだ落ちていないが、大分低くなっている。
制服も着替えていない。
――とりあえず部屋に戻ろう
スマートフォンを手に取ると、ちょうど数分前に望美からメッセージが入っていた。
『そろそろ来る?』
という内容だった。
『今から着替えたら出ます』
そう返信して、スマートフォンはテーブルに置いたまま、二階の自室に向かった。
***
「着替えたら来るって」
返信を確認した望美は、従姉妹が来るのを今か今かと待つ娘を、可笑しそうに笑った。
「なんだ。制服から着替えてすらなかったのか。結構ずぼらだな」
俺ですら既に着替えてるのに! とどこか自慢げな遼を、蓮は不思議そうに見つめていた。
「ゆうちゃんは兄ちゃんみたいに無駄に動かないから、あんまり汗もかかないんだと思うよ」
「蓮おまえなー」
「あ! お父さんお帰り!」
賢一が帰ってきた。
望美が時計を確認すると、午後六時を回ったところだった。
「今日ゆうちゃん来るんだって? まだ来てないの?」
帰りがけに寄ったのだろう。
コンビニ袋からアイスを取り出している。
「さっきもう家を出るって連絡きてたから、そろそろだと思うんだけど」
「途中まで迎えに行ってやるか」
仕事着のまま、再び賢一は外に出た。
侑子たちの家まで徒歩で二十分程。後ろから「私も行く!」と愛佳が、「俺花火買いに行く」と遼が続いた。
湿気を含んだ夏の夕方の空気が、鼻孔をくすぐる。
今夜も熱帯夜だな、と賢一は思った。
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