第7話 見なかったことに……

 俺の小説、『学校で一番人気のあの子が路上ライブでベースを弾いているのを、俺は知っている』は昨日の投稿で記念すべき40話を迎えた。


 40話を投稿してからすでに12時間以上経っているが、最新話のPVはたったの2。


 閲覧状況に変化はない。


 色んな自主企画にも参加しているが、最新話まで読んでくれる人は少ない。


 応援コメントは未だに0だし。


 ため息をつきながら、俺は教室を出て最寄り駅へと向かう。


 今日は山下が休みなので、1人で帰る。


 休んだ理由は、今日発売されるゲームが出るからだそうだ。


 山下の奴、あれで進級出来るんのかな。


 あいつが留年すると、友達0人になるんだけど。


 ま、その時は新しい友達を作ればいいか。


 それにしても―――


「何がダメなのかなぁ……」


 ため息をつきながら、自分の書いてきた小説を頭の中で思い出した。


 地の文が弱いのか。


 キャラに魅力がないのか。


 単純にストーリーがつまらないのか。


 そもそもこのラブコメの内容自体がダメなのか。


 よくわからない。


 本日何度目かのため息をついたところで、画面上のベルマークに赤い点が付いていることに気付いた。


 それをタップすると、エピソードを応援してくれる人がいた。


 ミヲすけさんだ。


 相変わらず♡をつけてくれる。


 この人が最後まで読んで、『面白かった』と思ってくれるものを作りたい。


 そのためにはレベルアップしなければならない。


 それに本気で小説家を目指すなら、小説の勉強もしないといけないよな。


 —――決めた。


 改札手間で踵を返し、来た道とは別の道を歩む。


 本屋で小説に関する本でも買おう。


 俺は財布の中身を確認しつつ、駅直結の10階建てのファッションビルへと入っていった。


 エスカレーターを上る道すがら、俺は想像した。


 ミヲすけさんってどんな人なんだろうな。


 俺のラブコメを見てくれてるあたり、多分男だとは思うけど。


 年上か、それとも中学生か。同級生だったら、ちょっと嬉しいかもな。同い年の人が見てくれているってのは、


 一度会って、お礼を言いたいな。


 7階についた俺は、本屋へ向かう。


 初めてこの本屋に来たが、わりと広いな。


 本屋の中を散歩するのって、好きなんだよなぁ。


 興味のない分野の本とか、ついつい立ち読みしちゃうんだよなぁ。


 知らないことばかり書いてあるから、新鮮でページをめくる手がとまらないんだよねぇ。


 久しぶりに本屋に来たし、ちょっと中を回ってから、お目当ての本のコーナーへ行こう。


 そう決めて、店の右端から攻めることにした。


 ここは心理学のコーナーか、と思って適当に進んでいたが、不意に足を止めた。


「…………あれ?」


 心理学コーナーに、渚波がいた。

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