Chapter 4-5

「………………」

「まあ、いつもの事だからな」


 絶句する僕と、冷静な声で言う三峰。

 中庭に帰って来てみれば、そこにはいつも通りの光景が待っていた。

 歩と一之瀬君の周囲に、多数の男女が集まっていたのだ。最近は四人+笠原君で固まっていたからあまりなかったけど、目を離すとすぐこれか。

 少し離れたベンチに座っている宇佐美先輩が、呆然とその光景を眺めていた。


「……凄い」

「でしょう? あの二人の周りはいつもああなんです」


 感嘆する宇佐美先輩に、僕が声を掛ける。


「……おかえりなさい」

「ただいま戻りました、宇佐美先輩。ああなると我々にはもう手の付けようがない。あの二人を中心にした愛憎劇に巻き込まれたくないのでしたら移動しますが、どうされますか」


 しかも歩と一之瀬君にはそういう自覚が全くない。

 三峰の言葉に、宇佐美先輩はコクリと頷く。僕たちは移動を開始して中庭を離れた。さて、それではどこに行こうか。


「行く当てはあるんですか?」


 と、そんな僕たちに声を掛けて来る男子生徒がいた。


「……湯本君」

「こんにちは、部長。こんな事もあろうかと、調理実習室の鍵を借りて来ました」


 現れた湯本君は、スッと鍵を僕らに差し出して来る。

 だが、鍵を受け取る前に、僕は疑問に思った事を問うてみる。


「君は、あっちに行かなくてもいいのかい?」

「いいんですよ。僕個人の感情で動く前に、部員として部長が不快な思いをしないよう考えて行動したまでです。それに……」


 と、湯本君は三峰に視線を向ける。


「ん? なんだ?」

「い、いえ! そう言う訳ですから、早く行きましょう」


 湯本君は微かに頬を赤くして、速足で歩き出した。


 ……マジか。

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