第101話

 その二日後。由香里は再び本の館に足を踏み入れた。

 アイリスが一冊の本を差し出した。ハードカバーの黒い本。

「……ナルシィの本と一緒に落ちてきた、もう一冊の武術の本?」

「そうよ。ハニービーン」

「ハニー?」

 由香里は首を傾げた。全くわからない。ミスターなら聞いた事あるんだけどな。

「楽しみだな」

 アズキがなぜか興奮している。……ハニービーンは女だな、と由香里は思った。ハニートラップのハニーかな?

「由香里、君を本の中へかくすよ。本の中でゆっくり休んでおいで。無理したらダメだよ。一週間後にまた会おう」

 そう言ってチャシュが由香里とアズキに体をこすりつけた。

 アイリスは由香里をぎゅっと抱きしめて言った。

「由香里、目的を忘れないでね。私とチャシュはここで待ってるわ。だから必ず帰ってきて」

 由香里はうなずくと、腕にアズキをしっかり抱いて、本を開いた。

「行ってきます」

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