第73話

 由香里はしばらくの間、激痛の中でもがいていたが……やがてしおが引くように痛みが引いて……。

「自己管理がなっとらん」

 由香里が目を覚ますと、頭上からナルシィのかみなりが落ちてきた。

「うるせーぞ、ナルシィ。怒鳴どなるな。由香里の体にさわるだろ」

「アズキの言うとおりです。説教は由香里の体か回復してからにして下さい」

 ナルシィはウサギと犬を部屋の外に放り出すと、布団に横たわる由香里の枕もとに座ってガミガミと説教を再開した。長くてくどいナルシィの説教を聞きながら、由香里は途中で寝落ちした。

 数日後。

 由香里の体か回復するとナルシィは修業を再開した。

「由香里、発作を起こしそうになったらすぐに戻ってくるんだぞ。無理して頑張がんばったらダメだからな。無茶むちゃするなよ」

 由香里は心配するウサギの頭をなでなでした。

「うん。じゃあね、アズキ。行ってくるね」

 アズキは不安な面持おももちで、由香里の後姿を見送った。

「ホントに大丈夫なのかよ……」

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