第70話
その
アズキは由香里の腕の中、ぬくぬくとまどろんでいた。ほんのり甘い由香里の匂い。心地良い呼吸のリズム。由香里の足もとには大型犬ツッチーが寝そべっている。
ふと、アズキは気配を感じて布団の中から顔を出した。……
「ナルシィ、こえーぞ。闇の中から現れて枕元に立つんじゃねぇ……」
ツッチーの
ナルシィはドアの方へグイっと
「で、俺に何の用だ?」
ナルシィは
「うむ。女神、由香里の話だ。わしの時代は、こう言われたものだ。女神は何も知る必要はない。女神に
「それは今でも同じだぜ。でもな」
アズキは
「それを知っているのは、ごく限られた者だけだ。ナルシィ、おまえは……?」
「アズキ、おまえと同じでツガイモだ。うむ」
「……同業かよ。どうりで
ウサギは後ろ足で、けっけっと耳の後ろを
「俺は由香里を宮殿に閉じ込めておく気はねぇよ。武術も由香里がやりたいならいいんじゃね。由香里にはこの世界を楽しんでほしいんだ」
「うぬ。だが、由香里は女神だ」
「……心配いらねーよ。女神が
「ふむ。そうか。ならばよい」
「ナルシィ、同業として聞きたいんだか、教えてくれた。石化について、女神について、宮殿について。どんなことでもいい。情報がほしい」
「ふぅむ」
ナルシィは重い息を吐いた。
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