5
*
ルシウスの提案通り、私たちは旅に出た。
気持ちをリフレッシュさせるのには丁度良いだろうって。
だけど、私はその思惑についてを分かっていなかった。
まんまと、サプライズに引っ掛かったという訳だ。
私たちが最初に向かったのは、ガーランディア国内にある東の村だった。
アスラが進化したことで乗れなくなってしまったけど、今はスカイクリオネのアルトが代わりを果たしてくれている。元が人だし、騎乗用になるなんて嫌じゃないかと思っていたけど、逆だった。アルトは私とルシウスを乗せたくて仕方なかったみたい。
《どうだいノイン? 空を飛ぶって楽しいだろ?》
《ええ、そうね! とっても楽しい!》
アスラと違って、騎乗具が必要ないのも面白かった。アルトはスライムのように体を変形させて私とルシウスの体にベルトを作ってくれるのだ。そしてクリオネらしくないマンタのように広げた羽を使って様々な飛び方をする。
すごいのは、攻撃されない限りは墜落する怖れがないってこと。浮遊スキルは外部からの攻撃で大きな衝撃を受けない限りは常に発動されているのだとか。
《おいら、寝てるときも浮いてるからね。ハンモックって使ったことあるかい? あれよりよっぽど心地良いんだ》
私はハンモックで寝たことがなかったので、アルトの気持ちを分かってあげることはできなかったけど、一緒になって側を飛んでいるシクレアが口癖を言ったので同意した。確かに興味深かった。
でも、それ以上に興味深かったのは、アスラの速度。飛行スキルだけでなく、自分の体の形を変えて空気を取り込んで推進力を得ているのだという。空を飛ぶのが楽しくて、いろいろと試したらできるようになったらしい。
あと、もう一つ興味深かったことがある。それはルシウスが高所恐怖症だってこと。情けない声は出さないけど、ある程度の高さに来たところからずっと目を閉じている。顔が真っ青で、前に座る私にしがみついている。そして、ある時点から一言も発さなくなった。もっとも、声を掛ければちゃんと反応はするんだけどね。
「ルシウス、大丈夫?」
「大丈夫。気にしないで。それより見えた?」
「まだ。アルトにお願いして、もっと高く上がってもらうわね」
「ノイン⁉ それはいいよ!」
「目を閉じてるんだから、別に構わないでしょ」
私はアルトに頼んで、上昇してもらった。大体、三百メートルくらいだと思う。とはいっても、私の目算なんて、まったくあてにならないんだけどね。
東の草原に村が見えた。だけど、私の知ってる村とはまるで様子が違った。
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