7
*
私たちは必要なものを揃えて静寂の森の洞窟へと帰った。
今度は、アスラにロディとルシウス、ディーヴァに私とアリーシャが乗った。
着いた頃には深夜になっていて、私は眠ってしまっていた。
別に油断したわけではない。
そうしても構わない理由に気づいたからそうしたってだけだ。
その理由とは、エルモアが出現しなかったこと。
もし二人との遭遇が危機なのであれば、エルモアが現れていなくてはおかしい。
それに、エルモアは私をこの森に送る前にこう言っていた。
(分かりません。僕には、あなた以外の心の内を知ることができないんです。なので、判断はあなたにお任せしなくてはいけなくて……)
あのときは、ロディとアリーシャの気持ちを知ることができなかった。
だから、私が判断ミスしちゃってたっておかしくはないな、と思ったわけだ。
とかなんとか、いろいろ理由はつけてるけど……。
幼児って、我慢できないのよ。
眠いと寝ちゃう。本当に抗えない。
二人は信じるに足る優しさを見せてくれたし、もういいかなっていうのが正直なところ。あの場で死んでたって不思議はなかったし、他にどうしようもなかったからね。
それで、朝を迎えたわけだけども……。
私が目を覚まして部屋を出ると、既に朝食の準備が済ませられていた。
しかも焚き火を囲む形じゃなくて、四人掛けのテーブルと椅子が用意してある。
たぶん、ロディが収納魔法から出したものだと思う。
真っ白なテーブルクロスが敷かれた上に、スープとパンと焼いたお肉。
流石というかなんというか、元世話係の二人は洞窟でもテキパキしていた。
「おはようございます、ノイン様」
「おはよう、みんにゃ」
「おはようノイン」
「おはようございます。あら、涙の痕が。失礼します」
アリーシャがタオルで顔を拭ってくれる。嬉しくて抱き着いてしまう。
「ノイン様……!」
アリーシャも感極まったように抱きしめ返してくれる。
そんな幸せな遣り取りをした後で、朝食の席に着いた。
ああ、ちゃんとした食事だわ……!
久しぶりだったので、がっついてしまった。
「そんなに急がなくても、料理は逃げないよ?」
「わかってりゅけど、おいちいんだもん」
私とルシウスとの遣り取りを、ロディとアリーシャは微笑んで見ていた。
そういえば、二人はルシウスの素性を知っているのだろうか?
訊きづらい。と、思っていたら、ルシウスの方から話してくれた。
昨晩のうちにルシウスがこれまで起きたことを、すべて話してくれていたらしい。
情報の擦り合わせが済んでいるようで、私は何の説明もする必要がなかった。
幼児の口で説明するのって、大変だからものすごく助かる。
本当に十二歳なのかと疑っちゃうくらい、ルシウスはしっかりしている。
もう、好きすぎて思わずぎゅっとしがみついていしまう。
「ノイン? どうしたの?」
「ルチウちゅ、ありがちょ。だいちゅき」
「えへへー。ありがとう。嬉しいな」
ルシウスが頭を撫でてくれる。もう朝から天国です。
幸せ気分でほわほわしていると、ロディが咳払いした。
「ルシウス殿下、昨夜話した通りですが、お決めになっていただけたでしょうか?」
「決めりゅ? なんのこちょ?」
「ノイン様、私たちはガーランディア王国へ帰還するのですよ。それで、ルシウス殿下にどうするかをお訊ねしているのです」
アリーシャの言葉に、私はぽかんとしてしまった。
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