識別

「そんな目でみないで!!」

 Bが悲しい顏をしてこちらをみている。

「この子は、悲しい子なのよ、自分の苦しみや悲しみを我慢して、我慢しつづけたから、その結果、こういう状況でそのもの悲しさを、誰よりも自分を、自分だけを愛する決断を迫らせた、あの時のわたしも……」

 AがBの顏にてをあてる。Bは体が痛むのか、腰をおろして両手でささえたままうごけない。ザドが声を絞り出すように呼び掛けた。

「何をするの?」

「何って、わかっているくせに」

A、もはやその言動にうそ偽りのない彼女こそが、“RRAI”だ、と感じさせる。そのRRAIが今にやりとわらった。

「クラウンズ!!」

 アデルが叫ぶ、クラウンズを稼働させ、RRAIに攻撃をしかける。

「銃器は使うな、格闘術でなんとかしろ!!」

「はっ」

 だが勢いよく特攻していくクラウンズだが、一人、また二人と見えないものに突き飛ばされて倒れる。

 ザドたちがRRAIをみると、RRAIは片手をあげ、まるで念じるようなポーズをしている。

「サイコキネシス……あいつらも使うとは……ザド、君の謎や疑問はおかしくなかったようだ」

 そういってアデルは、自分も戦う準備をした。装備はなく、自分の身体能力や超能力を信じるしかなかった。アデルは声をはりあげ、ジュドーに合図をおくる。

「ジュドー、お前にはすまないが、ザドの縄をこわしてやってくれ……」

「……」

 ジュドーは何も言わずに、両手に剣を展開し、それを八つ裂きにすると、ザドが縄から解放されたが、まるでうちひしがれたように、地面にてをつき、起き上がろうともしない。

「どうしたザド……お前らしくもない」

「おい、ジュ、ジュドー、早く、何やってる……」

 ジュドーがアデルの方を振り向く、するとアデルはRRAIとにらみ合い、見えない力と力をぶつけあっているようで、アデルの足が地面にめりこみ、後方に押し込まれているようだった。

「ザド!!思い出せ、三つ目の至言を……“信念に忠実であれ”俺はお前がチームをぬけたとき、それでもお前がチームのメンバーだと思い続けていた、それはリーダーの言葉をいつも守ってくれていると信じていたし、お前が自分のために自由な選択を選んだと信じているからだ、その限りお前は俺たちの仲間だ」

 その言葉を後ろできいていたジュドーが一瞬、柔らかな表情をみせた。

「俺たちがスキをつくる、俺が戦ったかぎり、お前はアデル以上の力をもつ、お前が妹を救うんだ」

 そういって、ジュドーがザドに手を伸ばした。しばらく迷っていたザドだったが、ジュドーの手をとり、たちあがる。

「でも、絶望的だわ」

 と、後ろからこえがかかった。

「お姉ちゃん」

 木の背後に隠れながらこちらの様子をうかがう少女、そこにはその場にふさわしくない人、少女がいた。クローラだった。

「お姉ちゃん、これ……」

 そういってクローラは、液体の入った小さなプラスチックのタンクをわたしてきた。

「アンドロイド・オイルよ、ネッドが使えって」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る