悲鳴

 レアが悲鳴をあげると、彼女の腹部から血がしたらりおちていた。ザドは一瞬気が動転してパニックをおこし、あっけにとられてしまった。

「何が……どうして」

 気を取り直したザドが、追撃をさけるべく臨戦態勢をとると、RRAIはとびあがり、木の上にのぼり、姿をくらませた。その手には凶器らしき刃物が握られていたままだった。

 レアが腹部に手をあてその手を見て、同じ様に震えて身動きが取れずにいると、すぐさまピローが、応急手当キットをとりだし、処置をはじめた。特殊なスプレーをまき、包帯を腹部にまく。

「ありがとう、私たち、あなたを襲おうとしたのに」

「今は緊急事態です!!それに、あなたたちにも事情があるでしょうから……」

「やさしいのね」

 そういながらレアは、苦笑いを浮かべた。


 一方アデルはジュドーにつかまれながら、反撃の機会をうかがっている。ふと、RRAIを取り逃がしたらしき先ほどの騒動を目にし、ジュドーがそちらに一瞬きをとられると、その瞬間を見計らい、アデルは思い切り首を手刀でなぐりつけ、ジュドーは気を失って倒れこんだ。

「すまない……」

 その時アデルに、ザドから声がかかった。

「RRAIが暴走した、助けて、アデル!!」

「わかった、今行く」

 合流したアデルは何があったか、経緯を説明された。しかし誰も状況がいまいち理解できずにいた。するとザドがこうきりだす。

「私がレアを守っているから、大声で彼女とコンタクトをとってくれない?」

 アデルは了承すると、両手で口をかこい、声をはりあげる。

「RRAI、どういう目的なんだ、どうしたんだ?君たちは何か取引があったんじゃないのか?」

 すると、どこかから、本当に奇妙だが、場所が特定できない遠くから声が響いた。

「すでに、約束は守られなかった、私はこの後の未来をしっている、私はあなたたちととても近い世界からきたから……何もかわらなかった、けれど仕方がないことよ、私は最後の変化の可能性をまつわ」

「変化?何のことだ?」

「黒い泥の男」

 そういわれてザドとアデルははっとした。

「それなら俺たちもみたぞ」

「私も……」

「……嘘じゃないわよね?」

「ああ」

「ええ」

「それなら、まだ救いがあるかもしれない、けれど私は予想されることに対応して予想される通りに動くわ」

 そう彼女が言い放った次の瞬間、林の中を数人の人間が進行してくる音が聞こえた。つづいて3人がその姿を現す。その姿は、クラックスが雇っている武装した兵士たち“クラウンズ”だった。

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