機密2

 ザド=アリスは、部屋をでてレア=“白いうさぎ”に連絡をつける。レアは無線をうけとると、周囲に目を配った。警備員たちをドローンから射出された網で捕獲して、スタンガンで気を失わせていたが、いつまでもその状態が続くわけでもない、レアは焦ってアリスに呼びかける。

「今どうなってるの?救出は?」

「ああ、その件だが、もし私が“気を失ったら”5分後に連絡がなければ、一度ネッドのところに帰ってくれ」

「え?アリス!アリス!」

 そういうとアリス=ザドは無線をきった。

「いいわ、私が彼を助けましょう」

 そういうと額に汗をかきながら、その手を椅子にのばそうとする。

「まって」

ザドは一瞬てをとめた。

「お願いがあるの、というより取引よ、私がどうなろうと、RRAIにはもう手を出さないで、30日が過ぎた時には妹も私も組織に戻るつもり、私は、いろんなものを、この逃亡の間にみたけれど、結果的にRRAIの言葉を信じた、最後まで信じてみたいの、もしこの約束を破れば、私は自殺するわ」

「ふむ……よかろう……だが」

 やはりモニターの向こうの男は口を動かさず別の場所から声が響いた。

「私からも条件がある、君がこれから何を目にしても、何を体験しても、組織にもどったときには私のためにに君の素晴らしい能力をつかってもらう」

「でも、あなたたちは、何かを隠していることを認めるの?」

「ふふ、ふふふ、大人の世界には大人の世界には人に知らされない秘密や機密、お互いを守るための確約などが存在するのだよ」

「ふん、まあいいわ」

 そういうとザドは、うなだれて動かないアデルの座る黒い椅子に手を伸ばした。その瞬間、何か違和感の正体に気づきそうだったが、時すでに遅く、全身に電流がはしった。

「カハハハ、カハハ、カハハハハ!!!」

 次の瞬間、ケタケタと奇妙な笑い声とともに、椅子が液状にとけてきえていき、椅子やアデルはホログラム映像だったようで、映像がみだれて、アデルの姿も消失した。

「ウウウガアアア!!!」

 《バタリ》

 と倒れるザド。そのまま意識をうしなったように一分ほどうごかずにいた。

「ザド君?ザド君……」

「ディリア……あんた、だましたわね、クソ仮面野郎!!」

「ははは、ははは」

 その笑い声はやはり、モニターからではなく、スピーカーから洩れているようで、モニターの映像は黒くなり、プツリ、ときえた。

「だから何だね?約束は反故にするきか?」

「あんた次第よ、ディリア・リード」

 そういいながらひざをつきゆっくりと起き上がるザド。

「ふむ……立ち上がるか、よかろう、見逃してやる、だが30日後だぞ、お前は必ず戻ってくるのだ、必ず」

「カナラズ・カナラズ」

 先程まで椅子のおいていた場所に黒く液状化した“何か”が棒状に立ち上がり、ディリアの言葉を反復しながら、やがて人の形になった。そのあまりの不気味さに、ディリアは声をうしなった。

「っ……ディリア・リード、これはRRAIではないの?一体何を隠しているの?」

「……いっておくが、秘密は守れよ、でなければこちらはいつでも君を“処分”できるのだからな」

「もうすぐ、そちらに別の支部から応援がくるだろう、早くにげるがいい」

「ニゲロ、ニゲロ」

 ザドは、すぐにその部屋をでようといそいだが、RRAIのように液状化する物体、それが人型に化けたのも、まるでゾンビのように落ちくぼんだ目玉のない眼科も、不気味で寒気がしながら通りすぎるさいも恐れながらその部屋をでたのだった。部屋の出口で少しためらいつつ、ディリアに尋ねた。

「これは、あなたの“重大な秘密”よね、なぜ私にそんなものを見せるの」

「君はしりたがっていた、いや、しってしまったといえる、この世界の秘密を、だがそれでもいずれ私の考えに気づいて納得してくれるはずだからさ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る