日本支部にて。

 一方“アリス”は打ち合わせ通り、調べていた裏口へと向かう。表ではその様子を端末で確認しながら正門の前で“白いうさぎ”が次の行動にでる。スイッチをおすと、背後で爆音がひびいた。

 《バチバチバチバチッ!!!》

 《ダダダダダッ》

 それに合わせて“白いうさぎ”が叫ぶ。

「銃声!?すぐに警備員を集めて、私の荷物がそこに!」

「は、はい!!」

(クラックス保護規約代12条、いかなる立場のものであれ、この組織に所属するうえでは、何人もクラックスの保護を優先しなければならない)

「急いで!!」

 そういうと、中に応援をかけつけにいく警備員。急いで“白いうさぎ”自身も柱の影に隠れるフリをする。すると、端末で回線を開く。

「こちら白いうさぎ、アリスへ、予定通り進んで」

「こちらアリス、了解」

 アリスは裏口の警備員がカギをしめ、表の正門に向かうのをみるとすぐに裏口のドアに向かい、特製銃を“レーザー射出モード”にして、鍵を破壊して、中へと潜入するのだった。

「こちら“アリス”潜入に成功……」

 そのとき“アリス”は背中を誰かに取られたのを感じた。“白いうさぎ”は、警備員が集うまで周囲をみながら無線に聞き耳を立て“アリス”の様子をうがかっていた。

《ズサザッ》

「何か物音が!!大丈夫?“アリス!”」

「不測の事態……かま……ない……時間をかせいで」

「アリ……!!」

「どうかされましたか!?」

 背後から声をかけられ、びくっとする。すると先ほどの警備員が数人の同僚をひきつれ、丈夫そうな警備用シールドをもち、あわてたようにこちらにきていた。まだ感づかれてないようで“白いうさぎ”は作戦を続行した。


「ひさしぶりだね……ザド……いや?やはりその顔とホクロ、君は……レア君か、姉の言いなりの君が、こんなところで勇気を出すなんてね」

「クッ!!!」

 そこにいたのは、ジュドーだった。“アリス”はかっとしたようにすぐさまジュドーに奇襲を試みた。

「回復したのね!ジュドー」

「ハッ、君こそ、いつも姉のことばかりきにしていて判断を仰ぐばかり、そのくせ、実力はクラックスの“ナンバーⅢ”ともいわれた、“コンプレックス”を抱いている君が、今度は姉のためにこんなところにくるなんてね」

「くっ!!」

 手刀と手刀で打ち合いをしながら、器用にも二人は会話をかわす。

「汗をかいているぞ、一人で怖いかい“妹ちゃん”」

「くっ、この!!!」

 確かにアリスは汗をかいていた。目立たないために“携帯端末ドローン”は“白いうさぎ”に預けてある。それに向こうの作戦にも必要になるのだ。対して相手にはドローンがあった。

「この前のような失態は起こさない、なぜならこちらには、NO.2、僕専用のドローンがあるからね、ドローンは対戦記録を予想してくれるのだよ」

 アリスは勢いよく回し蹴りをする。しかしそれも、予想されたように相手の両手のひらで捕まえられる。

 《パシィ》

「確かに数々の戦闘記録で君は能力を発揮してきた、だがしかし、君は忘れてはいないかい……」

 ジュドーの目がきらりとひかり、ジュドーは眉間に手をあてた。

「誰がナンバー2かって事を!!」

 ジュドーは勢いよく、回し蹴りをする。

 《ブンッ》

 “アリス”が両手をそろえて身構える、が、その回し蹴りはすんでのところでとまり軌道をかえ、みぞおちに前蹴りを放った。

 《ドンッ》

「ウグッ!!」

 アリスは、力なく地面に倒れ、バタリ、と意識をうしなった。

「身体能力、バランス感覚、反射神経、どれをとっても“ナンバー2”の僕には勝てない、君はおとなしく本部につれもどす、そして今までの地位に甘んじることだ、それまで床にへばっていろ」

 

 一方“白いうさぎ”は焦っていた。通信がつながらず、警備の手をとめていく手段も残り限られていた。警備員が“白いうさぎ”のバッグに近づく。

「これは」

「あらら」

 4人の警備員にバッグが見つかり、あきれたような声をだしているので仕方なく彼女も近づいていく。

「どうしたの?」

「バクチクですよ、どうしたってこんなもの?ザドさん」

 階段の最上段の柱の影にバッグはあり、その中身をみてみながあきれている。

「い、いえ、ごめんなさい、まさか暴発するなんて?なぜかしら、襲われたとき、ドローンをひるませるように時限式に改造はしたのだけれど、タイマーが誤作動したのかも」

「……まあ、何ごともなくてなによりです」

 というと、皆が和やかなムードになったので、白いうさぎはもう一度あの作戦にでた。

「迷惑をかけたお礼に、皆にサインをあげるわ」

 そういってバッグから色紙をとりだす。

「けれど持ち場が……」

 4人はしぶったが、白いうさぎは、なんとかねばるのだった。

「大丈夫、何かあれば“私がいる”、“私の責任”だから」

「は、はあ、そうですか」

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