分かれ道

 その頃ジュドーは激高していた。普段冷静でクールな感じの彼がここまで感情的になるのは珍しい事だった。

「アデルウウウ!!!」

 アデルの肩をつかみ、超能力を使わせまいとがっつく。

「お前だけが特殊だと思うな!!!」

 そういうとアデルの両手のひらと己の手のひらを組み合わせ力比べをする、だがそれは単なる力比べとはちがった。

「俺たちだってみんな!!テレキネシスくらい!!」

 ジュドーが手を組んだポーズのまま、アデルを後方においやっていく、ジュドーも同じく後ろに後退していく。二人の間にまるで見えない力がはたらいているように、お互いが先ほどの格好のままお互いを念力でおしあっていた。

 「お前、だけが、お前たちだけが、本当の力を隠していると……思ったか!!」

 そういうとジュドーは右手に力をこめ、左手でそれをささえるようにして左手を手首にそえた。その手をゆっくりと握りつぶす。

 《ぐぐぐ……》

 するとアデルの体がみしみしと音をたてて、内側にねじれはじめた。耐えかねたアデルは右方面に足の力をいれ、見えない力、テレキネシスとやらを、上半身だけ振りほどく。

 そして勢いよく左をむき、両手の平をパチン、とくみあわせた。その瞬間、ジュドーも位置を変えた。

 《ズドーン!!!》

 ジュドーのすぐ後ろの壁に大穴があき、間一髪のところで、やっとの思いで、ジュドーは彼の体がつぶれるのをふせいだのだった。ところがアデルは、自分が優勢にもかかわらず、大穴のほうをじっとみつめている、その奥に何かいるのかとさっしたジュドーは“はっ”と声をあげながらサーモグラフィーセンサーを向ける。3人の人影、そのどれもが“同じような顔つき”をしていた。

 「ザド!!レア!!無事か!」

 先に声をあげたのはアデルだった。アデルはすぐにレアとザドの二人をみわけ、二人にちかづき、だきしめようとした。その瞬間

 《カチン》

 アデルはジュドーに後ろから後頭部に銃口を向けられた。

 「動くな、RRAI、そしてザドとレア……」

 ジュドーが冷徹に命令する。レアが説得をしようとする。

 「ジュドー、やめて、少し話をきいて……」

 「何を?君たちの話を?君たちは僕を信用していなかった、“僕”のチームを」

 「それは悪かった、だから話を……」

 「今更遅いんだよ!!」

 ザドはその話し合いの一方で、巨大な足音の群れが自分たちに近づいていることを感じていた。

 「……まずいわ」

 ジュドーがそのまま、アデルの後頭部を銃の底でなぐりつけようとして息を吸う。

 「フッ……」

 「ジュドー、待って!!」

 ザドがジュドーの後ろをみて、彼に警告を発したその時だった。

 「グオオオ!!」

 《ドサドサドサ……》

 その後ろから、サイボーグたちがジュドーに襲いかかるのだった。もみくちゃになるジュドー、サイボーグたちに絡みつかれながらも、意地をはり、大声をあげる。

 「逃げるな!!逃げるな!!!ウオオオオ!!邪魔をするな!!クソアンドロイドどもが!!これはチームの問題だ!!チームの!!」

 ポケットからツタを取り出すと、ツタは急速に成長し、円形にザドとレアとアデル、RRAIをかこった。道は二つあったが、どちらにも天上から地面まで太いツタが邪魔をしていけそうにもない。戸惑う三人。

 「テレキネシスを使って!!」

 そう叫んだのは、思ってもみない相手、RRAIだった。

 「あなたたちの能力は“炎”でしょ、もう見たわ、この地下で使うのは危ないし、何よりアンドロイドたちからにげられない、テレキネシスでこの円形のツタを細長く縦にするのよ」

 ザドが戸惑いながら口にする。

 「そうすれば、道は二つにわかれる」

 コクリ、とRRAIはうなづいた。

 「私はあと半月を大事にする、けれどあなたたちにも危険が及ぶわ、半月すぎた後に縁があれば会うでしょう、私の最後をみとどけて、ザド、あなたは“過去”を大事にするべきよ、私の未来は生い先短いのだから」

 そういうと、RRAIはツタの右側にうごいた。そのとき耳打ちで、アデルがザドに話す。

 「彼女からあの提案がでてよかった、僕の体力も限界近いし彼女と争う余力もない、ここはひとまず彼女もにがし、僕らも逃げるべきだ」

 そうして疲れはてたアデルと、ザドとレアは力をこめ、粘り、なんとかして円形の巨大なツタをねじまげ、縦の方向に引き伸ばし、通路を広げたのだった。

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