第1話
《ガッガッ、ドンッ》
ザドが海沿いの公園の傍にある直径一メートル程の台形型にもりあがったコンクリートの天辺、鉄でさびた鉄板の入口らしきものをけやぶった。ほかの部分は地下に埋もれているが、四角い土台があり人が二人ほどはいれそうなコンクリートの幅がある。
《ガラン、ガラン》
「ここも異常気象でやられたか」
下を見ると階段が広がっているが人のいそうな気配はなかった。下に降り、さらにさぐるとがらんどうのだだっぴろい地下空間が広がり、棚に椅子や机、多少の生活用具以外はもぬけの殻になっていた。
人類が環境汚染を行った結果の異常気象によって人類は一次地下で生活せざるを得なくなった。今は科学の発展と私たち“クラックス”の予知、予言による貢献もあって人々は地上へ暮らしをもどしたけれど、まだ地下に暮らす名残を持つ集落や地下コロニーがある。これはその入り口だ。地上で生きる人間は、地上の“新しい生命たち”との共存を余儀なくされている。
《ゴソッ》
「!!背後をとられた」
「キュミィー!!」
腰から電気銃を取り出し、敵に向けた。だがそれは公園の木陰に隠れ、攻撃をかわした。
「キュキュ!!」
「まて、チッ!!」
木の裏に回りこみ公園内部に立ち入った。敵は無様にも敗走しており、広い公園のわざわざ中央を横切っている。
「こっちのほうが早い、か!!」
そういって胸元のポケットからライターを取り出し火をつけると目を細めて集中する。
「フウウウ……ハアア!!」
ライターの火は勢いよくカーブを描き、公園の中央を通る“生物”を燃やした。断末魔が響く。
「キュウウッーー!!」
ザドが歩いてその傍にいくともうそれはこと切れて、ただのヘドロになっていた。
ヘドロによく似た生物。“コケダコ”である。ザドはすでに死んでいるその生物にむけて、ナイフをとりだし、頭部を突き刺した。さしたまま持ち上げてぽつり。
「おなかすいてるのよ、焼いて食うか」
公園で火をおこし、一人でバーベキューを始めた。地球人口は全盛期の約半分ともなり、うるさくいう人に出会うことあまりない。大半はまだ地下で暮らしているのだ。地上にいるのはよほどの戦う能力やサバイバル能力を持っている人間だけである。“クラックス”のような。
「地上で“丸いもの”と“アメーバ状のもの”をみたらすぐ臨戦態勢をとれ、RRAIなら捕獲、“コケダコ”なら殺せ、クラックスの掟第3条」
ザドは、固くて食べられない頭部を意味もなくナイフで突き刺してつぶやいた。
「まったく、“アレ”ににてるなんて迷惑な生物よね」
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