エロゲの世界にただのモブとして転生した僕はメインストーリーを無視して最強を目指す！……ってあれ？なんかいつの間にか主人公ポジ奪っていない？

第43話

「んんん？」

　私も貴方なのだから……？お姉ちゃんは、今、何て言った？

「転生者……？先ほどから何の話をしているのでしょうか？」

　僕が困惑している傍らで、イスカリオテも困惑している様子だった。

「イスカリオテ。お前の目的もわかっているわ。貴方の目的は自分が死することだけじゃない」

「ほう」

　お姉ちゃんは僕よりもまず、イスカリオテの方を対処するようだった。

「究極的な話をすれば、貴方はまだ勇者なのよね。どれだけ汚くなろうとも、どれだけ手を汚そうとも、それでも、貴方は勇者であることを捨てられない。人類全体を救う。それが勇者に求められていたこと」

「……」

「貴方は邪神の力を利用し、真なる勇者を作ろうとしていたわね？これから起きる世界の困難に立ち向かえるような」

　世界の困難……確かに、まだ、この世界はゲーム本編も始まっていない。

　まだまだこれから、と言えるような世界で、これからの世界はゲームの主人公のような個を欲する時代が来るはずだ。

「自分を殺した邪神の力を持つ人間。貴方が実験で作ろうとしていたもう一つの目的はそれでしょう？」

「……何故、貴方が知っているのですか？」

「貴方のことを手のひらで躍らせていたのは私だもの。私、視力もあるし、ＨＰだってちゃんとあるわよ？」

「はっ！？」

　あまりにも聞き逃せないお姉ちゃんの言葉に僕は驚愕で返す。

「だましていてごめんなさいね？それでも、貴方も私なんだから良いじゃない」

「それが、理解出来ないんだけどっ」

「私、貴方と同じようなことだってあったでしょう？それに、ちょっと不思議なところだって見せていたはずよ」

「……理解が」

「言っていたでしょ？女は秘密の数だけで美しくなるって」

「僕は男だぞ」

「だから今、秘密のベールをといたのよ」

「……ッ」

「上手い言い回しでしょ？」

「……ッ、どれだけ！言葉をこねくり回そうが理解出来ない。いきなりお姉ちゃんから貴方と同一人物なんだ、って言われても理解出来ない。大体、同じ人物が二人もいるわけないだろうッ！」

「転生しておいて、そんなことを言うの？別に、この時代に転生した貴方がいても、数万前に転生した貴方がいてもおかしくないでしょう？私はＴＳ転生したのよ。面白い話じゃないかしら？」

「……どんな、話だ」

　さっきから、少し前から、入ってくる情報量が多すぎるっ。

「そうかしらねぇ？……まぁ、でも、仕方ないか。俺とは違うしな。お前は」

　だけど、そんな僕の頭を、お姉ちゃんはゆっくりと掴んでくるのだった。