9話 カンファレンス(2/2)
「その作戦、100パーセント失敗するよ?」
サン・ラモンは、アリーシャの指摘を一笑に付して言う。
「アリーシャ君と言ったね。今は許すが言葉遣いには気をつけなさい。……それで、何か気になる点があるということかな?」
「ありまーす。おおありでーす」
「そこまで言うなら特別に聞いてあげよう。話してみなさい」
サン・ラモンが言うなり、アリーシャは座っているハンターたちの中をズンズン歩いて前に進んでいく。
演壇の目前まで来ると、狩り場の地図をまじまじと見つめて「やっぱりねぇ」と呟いた。
「今回の作戦、集落跡に罠おいて
「それがどうかしたのか」
「そんな場所で戦うのやめた方がいいよ? もっと自然の地形を活かせばいいじゃん」
アリーシャの発言にクスクスと笑いが起こった。
サン・ラモンはすっかり呆れているのか口をぽかんと開けている。
代わりに答えたのはそばで聞いていたギルドマスターだった。
「さっきも説明したがね、
「うん。例えば森の入り口近くのエリアとか」
どっと笑いが沸き起こった。
ギルドマスターも愉快そうにクツクツと笑いながら答える。
「地図を見ればわかると思うがね、そこはせまーい場所だ。今回のような多くのハンターを動員する作戦はそこではできないだろう?」
「だったら少数精鋭で攻めれば?」
「アリーシャ君。狩りの基本を知らないようだからもっと勉強した方がいい。ただ、今回は特別にひとつ教えてあげよう」
ギルドマスターはおもむろに腕を組み、アリーシャを睨みつけて脅すように言った。
「戦場は戦術で決まる。狩りの基本くらい覚えておきなさい」
「なにそれ冗談――」
「アリーシャ! もういいから座って!」
まだ食い下がろうとするアリーシャを見て、居ても立っても居られなくなったリベリカは前に飛び出した。
反論しようとわめいているアリーシャの口を押さえ、腕を掴んで引き下がらせようとするリベリカにサン・ラモンが声を掛ける。
「リベリカ、こいつはお前の知り合いだったのか」
「いえ! その、何というか……」
一緒に昼食を食べた仲とはいえ、アリーシャとはまだ昨日今日の付き合いだ。
リベリカが返事に困っていると、サン・ラモンは一瞬したり顔を浮かべてから、ギルドマスターに向かって口を開いた。
「ギルドマスター、私からひとつご提案があるのですが」
「ほう、なんだね言ってみなさい」
「明後日のクエストに彼女も同行させて見学させるのはいかがでしょう。新人の監視は手が空いているリベリカに任せれば良いかと」
「なるほど……それはいい。この機会を後輩の教育のため存分に活用しなさい」
「御意ッ!」
サン・ラモンは深々と頭を下げて敬意を示すと、顔を上げて再びリベリカに向かって口を開いた。
「ということだ。リベリカ、明後日は新人のアリーシャ君と一緒にいてあげなさい」
「わかり、ました……」
複雑な心境でリベリカは了解を口にした。
見学者のおもりをするということは、ひとりで自由に動けなくなるということだ。
そうなると自分の活躍を見せられるチャンスが減ってしまう。
そもそもアリーシャの実力なら、見学ではなく一介のハンターとして狩りに参加させた方がいい。
そうは分かっていても、この状況でアリーシャを推薦できるような発言力はリベリカには無かった。
一方で、置かれている状況をまるで分かっていないアリーシャは、なぜかウキウキした様子でいる。
「ていうことは、明後日のクエストにアタシも参加していいってこと? だよね?」
「そうだ。ただしあくまで見学、許可なく武器を使うことは禁止だ」
「なーんだつまんないのー」
いじわるー、けちーと小言を付け加えてから、アリーシャは「まあいいや」と開き直る。
そして今度は、タタンと振り向いてリベリカの手をガシッと握ってきた。
「な、なんですか?」
「明後日はよろしくね、相棒!」
両手を握られたまま、リベリカはかっくり肩を落として嘆息する。
こんな状況で楽しそうにしてる意味がまったく分からない。
「どーした相棒?」
呑気に顔を覗き込んでくるアリーシャ。
言いたいことはある。
いろいろ、たくさん、盛りだくさんある。
それはあとから話すとして、リベリカはため息混じりに答えた。
「勝手に相棒にしないでください……。とりあえず席に戻りますよ」
クルークウルフの捕獲よりも、この人のお
そんなことを思いつつ、リベリカはアリーシャをずるずる引っ張っていった。
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