捜索開始

原稿作業の関係で忙しく、明日から毎朝9時の1話投稿のみになります。

楽しみにされていた読者の皆様、申し訳ございません🙇💦

これからも更新頑張ります!


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 アカデミーに所属する騎士団には一つの免除が与えられている。

 それは任務の際に『授業は受けなくてもいい』というものだ。

 放課後や休日返上して行える依頼など少ない。かといって、アカデミーの騎士団は王国にとって痒い所に手が届くような存在であり、依頼を断らさせることもしたくない。

 そこで王家がアカデミーに交渉をし、任務の際には授業免除という制度を作ったのだ。


 そのため、翌日を迎えたアルヴィン達は授業を受けずに制服のまま王都へと繰り出していた―――


「王国騎士団第二部隊団長、ロックス・アーマンだ! 今回はアカデミーに所属する騎士見習いの諸君の助力、感謝する!」


 王都の検問所の一つ。

 そこで、班分けされたアルヴィン達に向かって大声で叫ぶ屈強な体躯をした男が叫ぶ。

 王国騎士団は、全部で五つの部隊に分けられる。

 単純明快で、それぞれ数字の若い部隊ほど出世していると言われており、その腕前も数字に比例するのだとか。

 余談であるが、アルヴィンの父親は第一部隊の団長の席に座っており、王国随一の騎士だとも言われていたりする。


『ば、馬鹿な……女がいない、だとッ!?』

『年上美人が密かに憧れだったのに……ッ!』

『俺、第二部隊だけは所属したくねぇぜ』


 今回上につく部隊の面々を見て、耳を傾けるどころか落ち込み始める騎士見習い達。

 将来しっかり騎士になれるか心配である。


「授業免除っていうのがいいよね。体動かすのは嫌だけどさ、そこだけ高評価ポイントのいいねを差し上げる」

「こら、アルヴィン」


 小言で口にするアルヴィンの脇腹を肘で小突くレイラ。

 アルヴィン関連以外ではまとも枠な彼女はどうやらちゃんとしていたいそうだ。


「依頼についてはリーゼロッテ様から話を受けただろうが、今回君達にしていただきたいのは聞き込み調査だ」


 その言葉に、アルヴィンは「妥当だよね」と頷いた。

 騎士見習いはそもそも王国騎士団に比べて戦力にならない。一般人に比べれば多少という面こそあるが、積極的に表に出させるなら目の前に立っている自分達が剣を握る。

 しかも、今回に至っては『神隠し』と呼ばれる誘拐事件だ。

 まだ素性、犯行方法、犯人すらも掴めていないのだから、範囲をと人員を広げて話を聞くところから始めなければならない。

 恐らく、第二部隊の面々も今日は聞き込みのみを行うだろう。


「それにしても、本当に第一部隊が担当じゃなくてよかった……」

「どうして?」

「父さんにバレちゃう可能性があるからね……ッ! 何も起こらないと思うけどさ! フラグじゃないよ!」


 もし戦闘になることでもあれば手を抜くわけにはいかない。

 そうなれば、自ずと自分の実力を見せてしまう恐れがある。

 まだアルヴィンはセシルに口止めをして両親に何も言っていない状態。実力が広がるのはアカデミーのごく一部だけでいいのだ。

 両親にバレてしまおうものなら、絶対に実力を活かして自堕落な生活をやめさせるだろう。


「ふふっ、そうだと思いまして第一部隊から外しました」


 レイラとは反対側の横にいるリーゼロッテが小さく笑う。

 加えて、その表情は大人びた彼女にしては珍しく子供のような可愛らしいものであった。


「流石です、リーゼロッテ様! 一生ついて行きます!」

「あら、それは遠回しのプロポーズでしょうか?」

「あ゛?」

「やめてよ、レイラ。今のは誤解だし、こんな公衆の面前で左肩を嵌め直すのってちょっと恥ずかしいんだから」


 恥ずかしいという問題ではないような気がするのだが。


「第二部隊の捜索範囲は南部及び西部の一部だ。聞き込みをする際、分かっているとは思うが市民の不安を煽らないよう注意しろ!」


 そんなヒソヒソとしたやり取りは届いていないのか、ロックスは言葉を続けた。

 新参者であり、夜な夜な一人で活動していたアルヴィンに「煽らない」という匙加減がイマイチピンとこない。

 そのため、アルヴィンは「レイラについて行こ」と人任せなことを考え始めた。


「にしても、結構大規模に動いてるんだね……あれでしょ? 今回は王国騎士団の部隊が四つも動いてるんでしょ?」

「そうですね、王城を警備する第三を除いて一と二、四の部隊が捜索に当たっております。ですので、もしかしたらアルヴィン様のお父様にもお会いしてしまうかもしれません」

「踵を返してしまいそうなこと言わないでくださいよ、リーゼロッテ様……本気で逃げますよ?」

「では、私も本気で捕まえましょう。その際、アルヴィン様の実力が周囲に露見してしまうかもしれませんが」

「……退路が塞がれてるって分かってますよやりますよもぉ」


 そもそもサボる気はなかったのだが、改めて退路を塞がれて拗ねるように唇を尖らせるアルヴィン。

 その表情が不覚にも可愛いなと、レイラとリーゼロッテは胸を高鳴らせてしまった。


「此度の犯行は王国の若き芽を潰す行為だ! 我々がいる以上、民には幸せな生活を送ってもらう必要がある! そのためには、必ずや誘拐された子供達を連れ戻し、然るべき裁きを受けさせなければならん!」


 ロックスは叫ぶ。

 それに合わせて、王国騎士や騎士見習いも「はいっ!」と大声で気合いを入れた。

 アルヴィン達も、締めの言葉が始まって気を引き締める。


「何かあればすぐに報告するように! では、諸君———王国の安寧のためにも、尽力するように! 以上!」


 そして、ロックスはそう言ってこの場を綺麗に纏めるのであった。

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