これぞ男のロマン

 カンカンカン! ガタガタガタガタ! ウィ~~~~~~~~ン!

「相変わらずうるさいな。白撫しろなの工場は」

「ブツブツ言わなーいの、レンタローが言い出したことじゃん?」

「ま、そうなんだが」

 工場の隅では白撫しろながいつも以上に気合を入れてものづくりに励んでいた。

「ここを、こうして、……おおぉ、こうじゃこうじゃ、それでこやつを……」

「文化祭の出し物、白にゃんが作ったものを出品、展示するんだよね~?」

 白にゃん? ああ、白撫しろなのことか。

「そう、うちのクラスの出し物は展示、その内容は全部白撫しろなが考えて作ってくれる。これなら僕は当日何もしなくてもよくなるんだ!」

「でも、店番みたいなのはあるんしょ?」

「いいや、そこも対策済みだ。白撫しろなの作った警備ロボを配置しておけば、クラスの生徒たちが店番をする必要がなくなるんだ!」

「それでよく委員長が許したよね~」

「当日、クラスの全員が、自由行動が出来る、これは恋愛イベントにとってはあまりにも大きい。それに、クラスの準備での親睦と言う面では、白撫しろなの発明品がメインではあるが、クラスの人たちも任意でチームを組み好きな発明品を開発して展示していいことになった。これなら仲良くなるイベントが減ることもない。完璧な作戦だ」

「その任意のチームにレンタローが入れられたらどーするん?」

「……あ」

「もしかして~、考えてなかったとか?」

「いやいや、だって、僕を誘ってくる人なんて……あ~~~~~」

 心当たりがあった。

「楽しみね~、あーしも何作ろっかな?」

「ま、ま、まあ今回はあれだから、もしかしたらそういう事態になるかもしれないから発明のプロに助言をと思ってね。ここに来たしだいだ」

「巨大ロボの進捗が知りたかったとか言ってなかったけ?」

「言ってない」

 そう言ってない。僕がそんなことを言うはずないじゃないか。

「ふ~ん、じゃあ、そう言うことにしておこ~」

 プリムラがなんかにやにやしてるけど、気のせいだろう。うん、気のせいだ。

白撫しろな。作業中悪いね。進捗はどんな感じ?」

「おー、憐太郎れんたろうか。見ての通りじゃ、文化祭に出せそうな新規アイテムは10個ほど出来たかのう」

「10個!?」

 白撫しろなに依頼してまだ3日くらいしか経ってないのに。仕事速すぎ。

「ちなみに、どんなのがあるの?」

「つい最近、燕時えんじの奴に頼まれて作ったのがあってなぁ」

「風真さん?」

「うむ、これじゃ」

「?」

 白撫しろなが取り出したのは普通の眼鏡だった。

「眼鏡ってもう流通してるよね? ここいつからファンタジー世界になった?」

「これはただの眼鏡じゃないぞ。この眼鏡のレンズ越しに見た人の服が透ける画期的なアイテムじゃ!」

「それ貰ってもいいですか!?」

「ちょっと、レンタローのえっち~」

「あ、いや、これは違くて。ほら、依頼したのが風真さんじゃないですか? だから、悪用されないように僕がちょっと実験台になってですね」

「早口で言い訳してる時点でもう弁明は無理だと思うなぁ~」

「と、と言うか、白撫しろなはなんでそんな依頼受けたの?」

 とりあえず、話を逸らしてやり過ごそう。

燕時えんじが言っておった。この眼鏡は男のロマンだと」

「このロマンチストロリっ子め!」

 ロマンなら何でもいいのか。

「しかし、男のロマンと言われたら? 僕も? ちょっと、興味があるというか? いやいや、やましい気持ちはないんだよ? ホントホント」

「別に使ってもよいぞ?」

「え!? いいの!?」

「うむ、ほれ、かけてみろ」

「あ、はい」

 僕は丁寧な手つきで白撫しろなから、神眼鏡を受け取る。

 そして、ゆっくりと眼鏡を耳にかけ、瞳を開……。



「いっでええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



 目を開けた瞬間、なんかが目ん玉の中に入ってきた。いってえええええ!!!!

 僕は咄嗟に眼鏡を外して、両目を抑える。

「あはははははははははは!!!! ざまあああああぁ!!!!!!!!!」

 プリムラの奴が腹を抱えて笑っているのが見える。

 目つぶしされてるのに。声だけで分かってしまう。

 抱腹絶倒許すまじ。

「なになになになに???? 今何されたの!?」

「簡単な話じゃ、その眼鏡は付けたら、服が透ける機能とかけた本人の目を潰す機能がついておる。どうじゃ、2つも機能があってお得じゃろ?」

「目が見えなくなるから、実質、目つぶし機能1個だけじゃん! 最後の機能絶対いらなかった!」

「じゃが、昨日、メイが来たときに、この眼鏡にその機能を付けた欲しいと言われたのじゃ」

「なんでよ!?」

「この機能つけないと壊すと言われたのじゃ……ぐすん」

 あ、白撫しろなが涙目になってる。

 よく見ると目元が赤いから、ガチ泣きしてたんだろう。

 これは相当怒られたか圧をかけられたな。もうトラウマになっちゃってるじゃん。

「とりあえず、これはいいや。何に使えるか分からないけど。でも、他のアイテムもこんな調子なの?」

「そんなことはないぞ。ちゃんと需要のあるものばかりだ」

「それならいいんだけど。ところでさ、僕たちも文化祭で何か作ったりさせられるかもしれないんだけど、なるべく簡単に出来そうなものとかない? 僕らは素人だから既存品とかの手作りとかでもいいみたいなんだけど」

「それなら、そこら辺にわしの作ったアイテムの簡単開発キットがあるから、適当に持っていくとよいぞ。小学生でも構築できる仕様になっておる」

「あざっす!」

 小学生でも出来るレベルなら僕にも出来る可能性があるし、きっと作業工程も少ないだろう。もし、梗夜きょうや君に声をかけられたら、これをやろう。

「他に用はないかのう?」

「他? うん、特には……」

 そこでスマホの着信音が鳴り響いた。

「あ、ごめん。僕のだ。……あれ? ゼラ? なんだろう」

 一旦、着信を切り、メッセアプリで折り返し連絡する旨を伝え、僕は自分の部屋に戻った。

「うん、よし」

 ゼラとはスマホの電話でのやり取りはあまりせず、パソコンに入れてある通話アプリでやり取りすることが多い。

 だから、さっき電話がかかってきたときは少し驚いた。

 とりあえず、いつものようにパソコンでの通話セッティングを終えて、僕は改めてゼラに電話をかけた。

「もしもし、ゼラ? 急にどうした? 何かあったのか?」

『………………』

「あれ? ゼラ? 音声入ってる?」

『ああ、聞こえている』

「そっか、よか……? なんか声がいつもと違うんだけど、ゼラ?」



『いや、我はゼラの父である』






「………………………………………………へ?」

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