会計君と書記ちゃんが付き合い始めたらしい

「あ、委員長じゃ~ん。どったの?」


「ん? ああ、プリムラか。少し教師に頼まれごとがあってな。ちょうど終わって、これから生徒会室に戻るところだ」


「じゃーちょっとお話いい?」


「どうした? 相談事か?」


「実はこの前、委員長に貸してもらった本なんだけど、レンタローには不評だったんだよね~」


「そうか。あれは憐太郎れんたろうの趣味ではなかったか……そうなると……そうだな。次に会った時に別の教材を渡そう」


「よろよろ~」



 そんな会話をしながら、2人は生徒会室の中に入ろうとした。



「大変です! 会長!!!!!」


「ど、どうした?」



 生徒会室に入ろうとしたタイミングで、副会長の少年が慌ただしく廊下を走ってきた。



「中庭で30人を超える生徒が何者かに襲われました!」


「なんだと?」



 その報告を聞いた瞬間、朱鳥あすかは目をスッと細めた。



「犯人は?」


「制服を着用していなかったところを見るに外部犯の可能性があります」


「特徴は?」


「赤い髪にピアスや指輪など様々な装飾品を身に着けていたそうです。年は恐らく10代後半から20代前半の男性かと思われます」


「襲われた生徒たちに何か共通点は? 些細なことでもいい」


「えっと……それが……」


「なんだ? 歯切れが悪いな」



 副会長は何故かプリムラの方をチラチラと見ていた。



「それがですね……その30人あまりの生徒たちは……その……唯野憐太郎ただのれんたろうを襲っていたようで」


「ほう、これはワタシの脳内関係図に多大な影響を与えそうだな。彼の矢印の向きによっては今後の展開が気になる。彼は果たしてプリムラが目当てなのか、それとも憐太郎れんたろうか……興味深い」


「ダメですよ、会長。生徒会の仕事が溜まってるんですから」


「ワタシちょっとやらしい雰囲気にして来ます!!」


「だから、ダメですって!」



 今にも飛び出していきそうな朱鳥あすかを副会長は押しとどめる。



「今、ここで行かなきゃ、ワタシは一生後悔する!」


「キメ顔で行ってもダメです! こんなことなら伝えなきゃよかった……」


「プリムラ、彼を引き離してくれ。君も憐太郎れんたろうの気になるだろう……ん? いない」


「あ、本当ですね。プリムラさん、いつの間にかいなくなってますね」


「よし! ワタシも続くぞ!」


「ああ! もう! 仕方ないですね」



 副会長はポケットからスマホを取り出し、朱鳥あすかの前につきだした。



「実は先日の日曜日、偶然会計君と書記ちゃんが一緒に出掛けているところを目撃しました」



「っ!」



 それを聞いた瞬間、朱鳥あすかの動きがピタリと止まった。



「そして、偶然たまたま俺のスマホがその一部始終を録画していたのですが……溜まっている分の仕事を片付けてくれたら、この録画データをお渡しします」



 朱鳥あすかはガラッと勢いよく生徒会室の扉を開けて、中に入る。



「何をしている、副会長。溜まっている仕事があるのだろう。5分で片付ける」





*************************************






「ありゃ~、こりゃすごい」



 プリムラは1人で例の事件が起きた中庭にやってきた。



「ねぇねぇ、誰か起きてる人いな~い?」


「「「「…………………」」」」


「ダメそ~」



 プリムラの声に反応する者は1人もいなかった。



「外傷はなしで1人残らず気を失ってるし、幻術系の魔法かな? いや~でもこの人数の意識を奪うなら相当の魔力を使うだろうから、魔法を使った瞬間、あーしが感知出来ないはずはないしな~。えっと~、どっかに…………あ、カメラ見っけ。あれ見れば何が起きたか分かるっしょ」

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