第17話:状態快復呪文
神暦3103年王国暦255年3月1日10時:ジャクスティン視点
俺様が人体実験を許可したからだろう。
ジェネシスが晴れ晴れとした表情で俺様の部屋から出て行った。
ジェネシスがオメガ落ちしてしまったから、アルファ区画にある俺様の部屋に呼ぶだけでも色々手続きが必要になってしまった。
一日でも早くジェネシスをオメガの立場から救い出さなければならない!
そのためならどれほど悪辣非道な方法も使って見せる!
「おい、総長、俺様との約束を守れ。
大陸連合魔道学院にある全ての治療系魔術を教えろ。
怪我や病気の回復呪文はもちろん、状態異常を元に戻す快復呪文も教えろ。
呪いなどの呪術を解呪する魔術もだぞ!
薬もだ、魔法薬も生薬も全部教えろ。
教えないと学院を破壊して、教授も生徒も皆殺しにしてやるぞ!」
俺様はこんな時のために捕虜から聞き出しておいた伝話魔術を使った。
必要なモノを手に入れるために、元捕虜全員と伝話を繋げてある。
使い魔や魔術を使って連絡がつくようにしてある。
「やめてくれ、教授や生徒に手を出さないでくれ。
もうこれ以上新しい魔術などないのだ。
学院にある魔術は全て伝えた」
こんな脅迫は前世の倫理観からは大きく外れている。
だがこの身体はそんな倫理観には縛られない。
知識とはしたが、この世界で生きていくには邪魔だと判断している。
「学院が正式に認め教えているモノだけを言っているのではない。
学院が認めていない少数派の魔術や薬の知識と技術も教えろ。
まだ研究中のモノも全てよこせ。
後で出し惜しみしていると分かったら、ウェルズリー王国最悪の拷問をしてやる」
「ひぃいいいい、分かりました、分かりましたから止めてください。
少数派のモノも、個人のモノも、研究中のモノも送らせてもらいます!」
「分かっているだろうが、禁書もだぞ。
前回命じたにもかかわらず、禁書を送っていたかったとしたら、これが最後だ。
もう二度と同じ事は言わず、俺様が直々に確認に行く。
もし隠している禁書があったら、学院関係者全員を生きたまま喰らってやる!」
「ひぃいいいい、ご容赦を、どうかご容赦ください。
代々の総長によって厳重な封印がされている禁書庫は、私一人がどれだけ頑張っても開ける事ができないのです。
禁書を入れる事はできても、取り出せないようになっているのです!」
「馬鹿な事を言うな!
どうしても必要になる時があるかもしれないから、焚書せずに保管しているのだ。
必ず取り出す方法がある。
泣き言を言っている暇があったら取り出す方法を探せ!
俺が直接行く前に見つけないと……」
「やります、やります、やらせていただきます!
どのような手段を使ってでも、禁書庫から禁書を取り出してみせます。
だから学院に来ないでください!」
「時間稼ぎして他の大陸に逃げても、俺様はどこまでも追いかけるからな!
お前ひとりだけでなく、幼い子供も年老いた者も、一族一門皆殺しにする。
だから逃げようなんて思うなよ!」
「ひぃいいいい、はい、はい、はい、逃げません、絶対に逃げません。
全身全霊をもって禁書を取り出してみせます。
だから今暫らくご容赦してください!」
これだけ脅かしておけば大丈夫だろう。
逃げ隠れすることなく、精一杯頑張るだろう。
俺様も本気で一族一門皆殺しにしたいわけではない。
そう言っておけば必死で探してくれると思っただけだ。
……本当に思っただけなのだろうか?
この身体はかなり感情的で、怒ると見境がなくなってしまう……
もうちょっと知的で感情のコントロールができる身体ならよかった。
この身体と性格は前世の俺とはかけ離れている。
抑えようとしても抑えきれない激情に襲われる事が多々ある。
どうでもいい王女が相手なら、少々腹が立っても抑えられた。
だが大切なジェネシスが絡むと、カッとなって暴言が飛び出しまう。
総長が目の前にいたら、殴り殺してしまっていたかも……
「父上、よろしいでしょうか?
領内の食糧について話したいのですが?」
「ああ、いいぞ、入ってくれ」
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