復讐に理由はいらぬよ

「私が士郎の隣だから!」

「はあ……?? あたしが……って別にこいつが好きってことじゃ」

「ならいいじゃん!」と俺の右隣に座り出す絵梨花。

「そういうことじゃなあああい!!」と喧嘩をしだす絵梨花と美香。


 ……あれデジャブかな。


 もう片方では。


「シーくんは私と隣がいいもんねぇ〜」

「違います、士郎さんは私とですよね?」


 睨み合う玲奈と裕子。


「じゃ、じゃあ……私が春山さんと!」と隣に座り、俺の肩に頭を置く月美。

「「あああ──っ!!」」と二人は月美を睨む。


 前もこの展開を見た気がするのは気のせいだろうか。

 いや気のせいなんかじゃないよなこれ。


 現在は俺の家へとやってきてちょうど六人テーブルの場所決めをしているところだ。


 結局場所決めは俺、月美、玲奈、裕子、美香、絵梨花の順番で座ることになった。


「いいか、五時には妹が帰ってくるから……あと一時間ぐらいになったら帰る感じな」

「妹ちゃんがいるんですかー!!」と食いつくように言う裕子。


 小学校から同じだというのに知らなかったらしい。


「ああ。でも、さすがに紹介は勘弁してほしい」


 本当のところは紗倉以外の人と浮気していると思わせて詩織を悲しませたくないからだ。

 まだ詩織には紗倉と別れたことも言うべきではないだろう。


「それで復讐の計画ってなんだよ?」


 復讐なんてどうやらのだろうか。

 一つのやり方として思いついたのは紗倉の両親に言うことだ。

 紗倉が浮気していると言えば全てが解決するのかもしれない。

 けれどそんなので神本に復讐できるのか?

 軽すぎるのではないのか?

 かといって、現時点で他に思いつくことがない。


「はい、それについては私が説明したいと思います」と玲奈がピシッと手を挙げる。


 うんうん、と周りの四人も頷く。

  

 玲奈は入試テストから今までのテストで全て学年一位ととんでもない学力を持っている。

 多分だから彼女が説明するのだろう。


「確か浮気相手は神……なんちゃらさんでしたよね?」

「麗奈しっかりしなさいよ! 神本亮介よ!! あたしたちの大切な人の大切な人を奪ったやつは!」

「そ、そうですよ、復讐相手なんですから……そ、そのぅ、忘れちゃダメです!」

「す、すみません……」


 しょぼんとする玲奈。


「いいのいいの、ほら玲奈説明してあげて、ね?」と絵梨花。

「はい、そうですね。士郎さんは紗倉さんより亮介さんに復讐したい……そうですよね?」


 心の声でも読めるのだろうか。

 

「そっ、そうだけど」

「ですと、どうせなら亮介さんをコテンパンにしちゃいましょう」


 ニコリと微笑む玲奈が怖い。


 本当に俺のことを知ってるんだな。

 と感心してしまう。


「自分のことなのなのに人任せでごめん、でも、どうやって?」

「いえいえ、私たちに任せてください。そうですね……すみません、男の子の気持ちは私たちにはよくわからないんですが思いついたのは亮介さんの居場所を無くすことですが……そこで止まってしまって」


 申し訳なさそうに頭を下げる玲奈。

 それに合わせて四人も申し訳なさそうに頭を下げる。


 むしろ俺が頭を下げたい。

 

「やっぱり、俺があいつへの復讐を考えるべきだよな。ありがとう、それがしれただけでも嬉しいよ」


 どうすれば神本は死にたいほどに精神を傷壊すことができる?

 紗倉を失えばか?

 いいやあいつは俺じゃない、そもそも紗倉に抱いている思いなんて小さいに決まっている。

 紗倉を殺すだけではダメだ。

 となれば……。


「多分、俺たちはまだ神本亮介という事物をイケメンぐらいでしか知らないと思う」

「い、イケメン……?」

「士郎さんの方がイケメンじゃ……?」

「あっ、あんたの方がイケメン」

「わわわ、私も春山さんの方が!」

「はいは〜い、私も〜」


 ダメだ、そうか忘れていた。

 は、恥ずいな。


「わっ、わかった。とりあえず、今のままじゃ俺たちは神本亮介を知らなすぎる、彼について色々知るところから始めよう!」


 復讐するなら相手を壊す、潰すほどのことをしなくては。

 嫌いに理由などいらない。

 嫌いな食べ物が存在するのだって理由がないだろ。

 そういうことだ。



 

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