第8話 思考
『ありがとう』
「どうして……!」
怒鳴り散らしたかったが、あとは嗚咽に飲み込まれる。
最初は本当に無意識だった。何かのはずみでタイムマシンのスイッチが入ったらしかった。目を開けるとそこは自室で。博士の部屋に駆けつけてみれば彼は生きていた。
夢かと思って安堵した。しかし、彼はまた死んだ。
俺はもう一度戻った。失敗した。もう一度。失敗。もう一度……。
助けようとしても必ず失敗した。自分が盾になっても死ぬのは必ず彼。やけになって無駄に死のうとしてもそれすら失敗した。
この「時間」の中では俺は絶対に死なず、博士は絶対に死ぬ。そんなルールがあるようだった。
そして何回博士が死んだころだろうか。すぐにタイムマシンを使わなかった俺は緑色のランプに気づいた。そして、あの音声を聞いてしまった。
頭の中は疑問でいっぱいだった。俺は何回あの時間を繰り返した?俺が生き、博士が死ぬ時間を。まさか、博士もそうなのか?博士も時間を繰り返している?
俺が死に、博士が生きる時間を。
その考えに行きついたのはもう何度も目にした自室でだった。
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