第49話

 キングサイズの天蓋付きの豪華なベッドの上で、裸のムゲンとリリィが横になっていた。

 リリィは長時間の情事をしたせいか、全身汗まみれであり呼吸も荒い状態で深い眠りについている。

 一方のムゲンはドラゴン、吸血鬼、淫魔の異種族の血が混ざっていることと、淫魔の特性からか平然としており未だ元気であった。

 ムゲンは横で眠っているリリィの顔を見ると、彼女の頬に手を当て優しく撫でる。

 すると僅かながらに覚醒したのか、リリィはゆっくりと目を開かせる。だが意識がはっきりとしていないようで、反射的にムゲンの手を取るのだった。

 

「んん……ムゲン行っちゃ嫌です……」


 寝言を呟くリリィに、ムゲンは思わず苦笑してしまう。そのままムゲンはリリィの頭を優しく撫でると、額に軽くキスをする。そしてムゲンはベッドから起き上がるのだった。

 床に置かれている服を拾って着たムゲンは、音もなく部屋を出ていく。ふと窓の外を見ると、心を奪われそうな程に美しい月が昇っていた。

 オリュンポスコーポレーションの社屋を出たムゲンは、隣の建物であるムゲンたちの拠点へ気まずそうに扉を開けて入っていく。


「おかえりなさーい!」


「おかえり、ムゲン」


「ただいま」


 部屋に入ったムゲンを出迎えたのは、眠そうな表情をしたサクラであった。部屋の奥には同じく眠そうなアイシアが立っていた。

 眠そうなアイシアとサクラの様子を見たムゲンは、申し訳なさそうな表情をするのだった。


「クンクン、あの女のニオイがとてもしますね……ムゲン君お風呂に入ってませんね?」


「いやぁ、家主に無断で入るのは……」


「ふふ、ムゲンくんらしい」


 ムゲンの身体に顔を近づけたサクラは、そのままムゲンのニオイを嗅いでいく。どうも他の女のニオイがすることに気付いたらしく、ジト目でムゲンを見つめるのだった。

 タジタジな様子のムゲンを見たアイシアは、僅かに笑みを浮かべてしまう。


「じゃあムゲン、早くお風呂に入ってきなさい」


「そうですよ。そんなに汗まみれだと、下ろしたてのベッドが気持ちよくないですよー」


 アイシアたち二人に急かされたムゲンは、サクラに促されるまま風呂場へ向かうのだった。

 部屋に残ったアイシアとサクラ。二人はムゲンが風呂場に向かったことを確認すると、緊張が解れたようにため息をつく。

 そしてアイシアとサクラは互いに顔を合わせると、自然と笑みがこぼれるのだった。


「どうしたのよサクラ笑っちゃって」


「アイシアこそ嬉しそうに笑ってますよ。ムゲン君が帰ってきてくれたこと、そんなに嬉しかったんですねー」


 二人はムゲンがリリィの所から戻ってきてくれたことが嬉しくて、だらしのない笑みを浮かべるのだった。

 互いの笑顔を見てしまったアイシアとサクラは、お互いに見合って笑い合うのであった。

 上機嫌な表情の二人は風呂に入ったムゲンが戻るまでの間、部屋着から自分のパジャマに着替え始めた。

 シュルリと衣擦れの音を立てながら、二人が身に付けていた衣服を脱いでいく。そうして下着姿になったサクラは、一旦着替えを止めるとアイシアに抱きつくのだった。


「ヘーイ、アイシア。どうしたんですか?」


「な、なんでもないわよ」


 そう言うアイシアであったが、今のアイシアは寂し気な表情を見せていた。

 それは自分アイシアの身体と地位ではムゲンを引き止めておけないかも、という不安感が原因である。

 アイシアの不安をすぐに理解したサクラは、アイシアの身体を抱き寄せた。

 下着姿のアイシアと桜がお互いの肌を重ね合わせると、互いのぬくもりと心拍音を感じ合いながら、同時に安堵のため息を漏らす。


「ふふ……なんだか元気づけられたわ」


「それは良かったです。っとそろそろムゲン君が上がってきそうですよ」


 離れた離れになった二人の耳には、シャワーの止まる音が聞こえる。それと同時に浴室の扉の開く音が響くのだった。

 それを聞いたアイシアとサクラは急いでパジャマを着始める。既にムゲンとは裸を見合った仲ではあるが、それはそれで気恥ずかしさもあるのだ。

 二人がパジャマ姿に着替え終わると同時に、風呂場からパジャマ姿のムゲンが出てくる。


「上がりましたよ」


「はーい❤それじゃあ一緒に寝ちゃいましょう」


 ムゲンの下ろされた髪は濡れており、普段よりも色っぽさが増しているようにサクラは見えた。

 だがドキッとした感情を素早く隠したサクラは、何事もないように平静を装う。

 そしてアイシアとサクラはムゲンの両手を掴むと、ムゲンをベッドへと連れて行く。

 二人に両手を掴まれたムゲンは、そのままベッドのある寝室に連れていかれる。寝室にあったベッドは、三人が寝ても余裕なほどに大きなキングサイズのベッドであった。


「おやすみムゲン」


「おやすみなさいムゲン君」


 そう言ってアイシアとサクラは、ムゲンを真ん中を挟むようにして横になる。そして二人はムゲンの腕を抱きしめるのだった。

 ――あれ? なんで俺、二人の間に寝ているんだ?

 問答無用で川の字の真ん中で眠ることになったムゲンであったが、文句を言う前に二人は眠ってしまう。

 こうしてムゲンはアイシアとサクラの二人に挟まれて眠ることになるのだが、すぐに眠ることはできなかった。


「眠れない……」


 なぜなら左右から感じる柔らかさと温かさによって、一人興奮してしまうからだ。すでにムゲンの股間はテントを張っており、今にも暴発してしまいそうなほどである。

 悶々としながらも、ムゲンは眠りにつくのだった。

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