第33話

 悪戯っ子のような笑みを浮かべたサクラの囁きを聞いたムゲンは、まるでフリーズしたかのように固まってしまう。そんなムゲンの様子を見たサクラは、満足そうな表情を見せると自分の席へと戻っていく。


「それじゃあメンテナンス行ってくるわね」


 着替え終わったアイシアはそう言うと、ムゲンの様子に気づくことなく部屋を出ていった。

 アイシアの後ろ姿を見送ったサクラは、足を伸ばしてそのまま大きく背伸びをする。そして足先をムゲンの股に潜り込ませると、優しく撫で始めた。

 突然の刺激に驚いたムゲンは、思わず身体をこわばらせてしまう。

 ムゲンの反応を見たサクラは、嗜虐的な笑みを浮かべる。そのまま続けて足の親指で、執拗にムゲンの敏感な部分を擦ったりし始める。


「あ……サクラ作戦会議は……」


「ふっふっふー、さっきアイシアと盛っていたお返しですよー。少しは私の受けた精神ダメージを受けるのだー」


 そう言いながらサクラはムゲンへの責めを続けていく。時には激しく足を擦りつけ、時には足で優しく寸止めをするサクラ。

 責められて見せるムゲンのリアクションは、サクラの嗜虐心を煽り立てるのだった。

 そして嗜虐心が昂ぶったサクラは、遂にムゲンが履いているズボンのジッパーを下げると、迷うことなく足を侵入させ軽く踏みつけた。

 いきなり与えられた強烈な刺激に、ムゲンは思わず声を上げてしまいそうになるが必死に耐えようとする。

 しかしムゲンが快楽に耐えている様子も、サクラにとっては興奮材料にしかならないようで、サクラはさらに動きを強める。


「どうしたんですかムゲン君~顔がトロトロに蕩けてますよぉ? 気持ちいいんですかぁ?」


「そ、そんなことは」


「スリスリ、スリスリ。ふぅん、まだ強情を張るんですかならこっちはどうですか?」


 サクラはムゲンの否定の言葉を聞くと、もう片方の足を動かしてムゲンの淫魔としての尻尾を強く擦るように動かす。

 先程とは違う快感を受けたムゲンは、無意識のうちに腰を浮かせてしまう。


「あはぁ」


 腰を浮かしたムゲンを見て、サクラはサディスティックな笑みを浮かべると、躊躇なく胸をはだけるのだった。


「な!?」


 サクラが胸元を見せたことに驚きを隠せないムゲンは、一瞬その身に走る享楽を遮断する。

 そんなムゲンの反応を無視してサクラはムゲンの手の平を、自身の豊満な胸に押し当てた。

 手のひらに感じる柔らかい感触に、ムゲンは手を引っ込めようとするが、サクラそれを許さないと言わんばかりに強く押しつける。


「どうですか〜私の胸の感触は? アイシアの物と比べても見劣りしないでしょう?」


 そんなサクラの表情は妖艶で、さながら男を誘惑する妖婦のようであった。

 サクラはムゲンの手のひらを器用に動かし、自身の胸を揉ませるように刺激を与え続ける。その都度にムゲンの頭には、サクラの胸の感触と柔らかさが伝わり、徐々に思考力を奪っていく。

 ムゲンがさらに興奮していることを、ズボン越しのムゲンの分身を感触で察知したサクラは、更に責めを加速させる。

 足を巧みに使いムゲンの股間をぐりぐりと弄び、ムゲンの手のひらを巧みに扱って胸を揉ませるのだった。

 そのままムゲンは二十分以上に渡って、サクラに責められ続けられていく。

 サクラの執拗な責めを受けたムゲンは、ぐったりと椅子に背中を預けていた。


「あちゃー、やりすぎましたか。でも仕方がないですよねムゲン君の反応が可愛かったんですもの」


 反省の色を見せない表情をするサクラであったが、流石に罪悪感が湧いたのか、すぐにムゲンの顔の前で手を合わせて謝罪する。

 そして数分間ムゲンを休ませたサクラは、二人で作戦会議に始めるのだった。


「はぁ……サクラさんもうあんな事しないでくださいよ」


「あんな事ってなんですか~?」


 とぼけた表情をするサクラを見て、ムゲンは肩をすくませる。

 この調子だと、またサクラに同じような事をされるのではないかと不安になるムゲンであったが、今は作戦会議に集中することにした。

 

 **********


 AR上に表示されたリザルトのいる拠点の周囲には、サクラがハッキングする予定の地点が表示されている。さらには拠点の周囲を警備している人員を、狙撃できる地点の情報まで揃っていた。


「すごい詳細な情報ですね。で、狙撃は誰がするんですか?」


「それはアイシアが狙撃します。昨日の仕事では、外に敵兵が少なかったためにアサルトライフルで潜入しましたが、本来アイシアはスナイパーライフルによる狙撃がメインですからね」


 サクラは指で銃を作るとバーンと撃つポーズをとる。

 ムゲンは知らなかったが、アイシアはスマートシステムの補助無しに、約二キロ先の目標に向かってスナイパーライフルで狙撃を行えるのだ。


「さて、今回の作戦について簡単に説明します。まずは私がリザルトの拠点に対して、ハッキングを行います。これで私が電子機器の制御を乗っ取りますので、順次アイシアが警備兵を始末して、最後にムゲン君を含めた二人がリザルトの暗殺、これが今回の作戦です」


 サクラの立てた作戦に、ムゲンは納得して首を縦に振る。しかしムゲンの脳裏に、一つの疑問が浮かび上がった。


「ところで、俺がいなかった以前はどうやって仕事をしていたんですか? 前衛がいないじゃないですか」


「以前はアサルトライフルを持ったアイシアと、私のナイトデュエリストが前衛を務めてましたよ。もっともアイシアはスナイパーライフルの方が良いと文句を言っていましたが」

 

 そう言いながらサクラは自身のポケットトロンを操作して、アイシアに作戦の概要を伝えていた。

 サクラが通信している間、水を取りに行ったムゲンは、ふと先程のサクラの身体を思い出してしまう。

 サクラの胸を押し付けられた時の感触、そしてあの匂いを思い出すたびにムゲンの頭に煩悩が湧き上がっていく。


(落ち着けムゲン、今はそんな事を考えている場合じゃない!)


 頭の中の煩悩を晴らすように、ムゲンは手に持った水を一気に飲み干す。

 冷たい水がムゲンの火照った頭を冷やしてくれる。しかし先程の行為についての記憶は、ムゲンの頭から消えることはなかった。

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